第014話 【二階層での集団戦闘!】
本日はトオルたちと『短期契約』みたいな形でダンジョンに潜っている俺。
住み慣れた一階層を離れ、俺にとっては未知の世界とも言える二階層に初お目見えなんだけど……。
てか、このご時世にスロープではなく階段しか無いとか、面倒くさい団体に絡まれそうな、気の利かないダンジョンである。
一階から二階に――正確には『一階』から『地下一階』か?――に進んだからと言って、洞窟の雰囲気がこれと言って変化したわけでもなく。
狭い場所でも二人が横に並んで楽に武器を振り回せるような、広々としたトンネルの様な洞窟の中を、前衛に『トオル、静たん、秋吉』、後衛に『スイ……安倍さん、ティアラちゃん、俺』の並びでゆっくりと進む。
二階層にはまだ、これといった罠などは仕掛けられていないらしいから、もう少し先を急いでも良いんだけど……視界はそれなりに通ってるはずなのに、魔物が現れる時はおおよそ十メートルくらい先にいきなりポップするから、走ってたりとかすると不意打ち食らっちゃうことがあるんだよね。
ここみたいな『洞窟タイプじゃないダンジョン』とか、もっと『サイズの大きな魔物』とか、俺みたいに『警戒スキル』を持っていれば(そしてスキル発動中なら)もっと遠いところからでも発見出来るんだけどさ。
「この、いきなり『フッ……』って感じで魔物が現れるの、相変わらず意味がわかんねぇよな。
とりあえず、いつもはどんな感じで戦闘してるのか見せてもらってもいいかな?
当然試験とかじゃないんだから、あくまでも『いつも通り』でヨロシク!」
「了解!みんな、行くよっ!」
エンカウントしたのは四匹の『洞窟狼(ケイブウルフ)』。
こちらを警戒するように体を低くして唸り声をあげる狼が動き出す前に、先程パーティメンバーに声を掛けたトオルを先頭にして全員が一度に駆けだす。
まさかの全員突撃なんだ!?
いや、確かにみんな近接武器しか持ってないもんね?仕方ないんだろうけど……それはどうなんだろうか?
戦い方も『スタイリッシュに敵を切り裂く!』みたいな感じではなく、全員で魔物を盾で囲んでワチャワチャ殴り倒してるしさ。
まぁそれでも、俺を抜いても数はこちらの方が多いし、そもそもの能力値がトオル達の方が高いことも有り四匹の狼に苦戦をするようなこともなく、思ったよりも時間がかかったけど……戦闘は無事に終了した。
うん、装備品は初心者レベルだけど、そのルックスだけなら『勇者パーティ』って呼ばれても納得出来そうな美男美女が戦ってるとは思えない、異世界でなら田舎から出てきたばかりの新兵(十二歳)も呆れるような泥臭さい殴り合いであった。
「ふぅ……こんな感じなんだけど、後ろから見ていた感想はどうかだったかな?」
「どう……と聞かれても……ねぇ?」
『一生懸命全員でバタバタしてたね?』って正直に言うのは感じ悪すぎるし……ねぇ?
もしもこれが他人だったら『お前らはボコス○ウォーズか!』くらいのツッコミ入れてるもん。またはファー○トクイーン。
てかさ、静たんとスイカの人しか見てないから何とも言えないけど、武道場で稽古してた時の動きはもっと良かったように思ったんだけど……。
「んー、俺も特に、何処かの道場に通ってたとか、通信教育で何かを習ってたってわけでもないから、説明とか指導が出来るような能力は無いんだよなぁ。
とりあえず、次に魔物が出てきたら俺が一人で相手するから、ソレを見て自分たちで判断してもらってもいいかな?」
「ユウギリくん、二階層では少なくとも三体以上、多い時は七、八体の魔物がまとめて出てくるのよ?それを一人で相手にするなんて……」
「それを言うなら一階層でも多い時は十匹近くのスライムが出てくるぞ?」
「スライムとウルフでは相手の動きがまったく違うわよ!」
そりゃそうだけどさ。
ふっ、まぁいいさ。行動で示せばいいだけだからな!
異世界仕込み(早期離脱者)の勇者(しょうにん)の戦い方、存分にご覧あれ!
……
……
……
「いや、二階層、思ったより魔物とエンカウントしねぇな!?」
「スライムほど魔物が湧くのが早くない上に他の人の倒して回っているからね」
最初の戦闘から十五分、もちろん警戒スキルも使って少し早足になって進んでるんだけど、まったく魔物が出てこね……お、やっと見つけた!
「距離は三十(メートル先)、数は七。コボルト三、狼四。じゃあ行ってくる!」
「えっ?どうしたのいきなり……ちょっ、いつの間にあんなところに魔物が!?
ユウ、さすがに七匹を一人じゃ!……ええええ……」
索敵に魔物が引っかかったので、腰からレイピアを抜き放ち、体を少し低くして(ペル○ナ3のア○ギスの様な体勢で)そちらに向かって駆けだす俺。
いち早く反応した狼たちもこちらに向かって駆け出そうとするも、スピードが乗るよりも早く、先頭の狼Aの首を右手に持った細剣で斬りつけ……首を落とす。
何だこれ、大して切れ味のいい武器でもないのにえらく軽く骨まで斬れたな!?
残りは三匹の狼と三匹のコボルト。
まぁコボルトに関しては目を見開いて驚いた顔をしたまま体が固まってるんだけどな。
グッと体を落とした体勢の狼Bを左手のパタで思い切り横殴りに殴りつけた(もちろん狼の顔面が、遊○からの物体Xの様にパックリと開いた)あと、飛びかかってきた狼Cの喉に右手のレイピアを突き刺し、正面から走り込んでくる狼Dを勢いのまま蹴り飛ばしたそのままの勢いで思い切り頭を踏みつけてとどめを刺す。
コボルト?奴らはほら、狼より弱いから……。
一分とかからず七匹の魔物の処理を終えたあと、後ろで見学しているはずのトオルたちを振り返り、
「って感じなんだけど、どうだった?」
と、声を掛ける……も、誰からも返事はなく。いや、寂しいから無視するのヤメよ?
倒した後はすぐに消えちゃったけど、頭と顎がパックリ開いたヤツとか、踏みつけて色々なモノを飛び散らせたヤツを筆頭に、結構なグロ画像だったから仕方ないか。
ドロップアイテムは……スライムと同じ極小魔石が七つと毛皮が一枚だけ。
稼ぎたいなら一階でスライムを倒すのがベストな選択肢みたいだな。
ドロップアイテムを拾い、袋に入れていると、一番最初に再起動したのは予想外にも隣の人。
いや、予想外でもないか。静たんとか案外突発的な案件には弱いみたいだし。
まぁ、そんな秋吉が口元を震わせながら、
「あ、あんた、一体何者なのよ……じゃなくてさ!
あんたのレベルとかどうなってんの?
どうすればあんな人間離れした動き方が出来んの?
そもそも盾も無しに牙を剥く魔物に突っ込んでいくとか頭オカシイんじゃないの!?怖いとは思わないわけ!?」
「お、おう、何を興奮してるのかわからないけど少し落ち着け。
何者って言われても……お前も知っての通り、隣の席の男子以外の何者でもないな。
レベルはスライムしか倒してないんだからお前らとそんなに変わらないと思うぞ?
動きに関してはむしろ、俺よりランクの高いトオルや静たん、スイカの人の方が間違いなく動けるだろうし?二階層で出てくる魔物が分かってる現状では特に怖いなんて感じなくね?」
「えー……少なくとも僕は君みたいな動き方は絶対に無理だと思うんだけど……。
何?あの……何?ユウの前世は幕末の志士か何かだったの?」
むしろ今世の異世界で商人(ゆうしゃ)やってたんだよなぁ。
「ユウギリくん、出てくる魔物が分かっていたとしても……例えばウイリアムテルが弓の名手だと分かっていたとしても、普通は頭の上にリンゴを乗せることなんて出来ないのよ?」
「俺もそんなこと出来ないし、したくもねぇよ……てか、数が多いだけの魔物に怯えないってそこまで大げさなことじゃないだろ?」
「凄い……ユウくん……凄い……とりあえずマッサージして?」
「この空気の中マイペースが過ぎる!?
てかティアラちゃん、別にどこも怪我してないよね?」
「マッサージなら私もしてもらいたいです!
歩くだけでも、とても肩がこるので!
あと、私はスイカの人ではないです!」
俺もス……安倍さんに、とてもマッサージがしたいです!
でも静たんが鬼の形相で安倍さんのスイカを睨みつけてるので、ちょっとここでは触れられないのが悔しいです!
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