第012話 【★お隣さんと放課後の屋上で……その4】

※今回、ちょこっと『聖水(比喩)』的なお話となっております。

 それほどアレでソレな表現ではないですが苦手な方はご注意くださいm(_ _)m


―・―・―・―・―


 フニフニ……


 ムニムニ……


 ムギュッ……


「……」


「ふっ……ふふっ……あははははっ!……ハァ……ハァ」


 悟りを開ける程度には無の境地に至っている俺と、人の顔を好き放題に踏みつけながら息を荒くする秋吉。

 なんだろうコレ……俺の心が荒野。例えるならウエスタンな感じ。丸くてコロコロころがる枯れ草が三十個くらい転がりまわってるもん。そのうち壺の大好きな人のモビル○ーツとか出てきそう。

 このまま彼女のパンツをいつまでも見つめていたいという欲求はあるが、さすがに長時間コンクリートの上に寝転んでいるのも背中が痛くなってきたので『そろそろ終わりで良いんじゃないかな?』と言う意志を込めて秋吉の顔を(踏まれて歪んだ顔をしながら片目で)睨みつける。


「なんなのその顔は?……ああっ!……反抗的な目がゾクゾクするっ……」


 駄目だったわー。おれの気持ちなんて何も伝わらなかったわー。むしろS級ドSなこいつを喜ばせただけだわー。


「ふふっ……その歪んだ顔と腐った目……いい表情じゃない?」


「……」


「んっ……んふふふっ……あんたの内面の醜さが表面に出てきてるんじゃない?」


「……」


 そろそろぶち転がすぞコイツ……。


 言葉責めと言う名の『ただの悪口』に我慢の限界が来た俺。

 人の顔を楽しそうに踏みつける秋吉の右足を乱暴に払い除け……たりしたら痛かったりするかもしれないよな。

 うん、顔を踏みつけられていることを除けば、パンツ見放題、それも全体的に湿って白からグレーに変わっているそれを楽しめる今の状況はまさにヘブンだからな!


 でも、このまま踏まれ続けたいとは思わないし、さんざん人の顔を踏みまくってくれてるこいつにもお礼はしておかないと……。

 そうだな、このまま足を掴んでそのまま『手当』スキルを発動……いや、それと同時に『治療』スキルも使ってみたらどうなるんだろうか?

 思い立ったら即行動!と、秋吉のふくらはぎをそっと持って顔から足を持ち上げ、足の裏に治療スキル、ふくらはぎに手当スキルを発動する。


「ふっ!?ふあっ!?あ、あん、いっ、いっく、いっ……ああああああああああんんんんっ!?」


 大きく声をあげた彼女が体をビクッと大きく痙攣させたかと思えば、青空に浮かんでいた白、いや、雨雲のようになっていたその布切れから降り注ぐ……


「……雨かな?雨だよな?雨だと言ってくれバー○ィ!」


 慌てて避けようと……したけど、もしもここで俺が避けちゃうと体をガクガクとさせながら倒れ込んできた秋吉がコンクリートにぶち当たっちゃうし……これ、どうすればいいんだよ!

 まぁ、倒れてきた体を支える以外の選択肢は、


「へぶっ!?」 


 いや、確かに尻を顔に乗せてくれって言ったのは俺だけどさ!?

 でもほら、それ、今!?だってこいつのパンツ……何でかは言わないけどびったびたなんだよ!?

 慌てて尻の下から抜け出そうと、おもいきりその形のいい尻たぶを両手で掴んだ、掴んでしまった俺。


「あっ!?あっ、あっ、あああぁぁぁぁっっ!!!」


 先程よりも大きな悲鳴?をあげたかと思うと、飛び跳ねる様に痙攣した秋吉。そして完全に力なく顔の上に押し付けられてくるのは大きく、柔らかいお尻。

 そして、


「わっぷ!?ちょ、マジでタイム!出てる、かかってる、モガガガガ!?」


 ……危なく屋上で溺死するところだったぜ……。

 いや、そうじゃなくてっ!俺、全身べっちょべちょなんだけど!?

 今さら急いでも仕方がないのでノロノロと秋吉のしたから這い出し大きなため息を付く俺。


「ゲホッ……うう……えらい目にあった……。

 鼻とか口に……思ったほどアンモニア臭がしないのだけが救いか……」


 そんな、俺に大迷惑を掛けた秋吉はと言えば、だらしない顔で口を半開きにして転がっている。

 ……てかコレ大丈夫か?さっきからこいつ、まったく動かないんだが?

 幸せそうな顔でヨダレ垂らしてるし、特に頭をぶつけたとかじゃないから平気だとは思うんだけど。

 一応は女の子なので、パンツ丸出しで転がってるのはさすがに可哀相だろうと、少しだけ名残惜しいがスカートだけは整えてやる。


「きれいな顔してるだろ?これって死んでるんだぜ?」


「えっ?秋吉さん死んだの!?」


 ……

 ……

 ……


「えっ!?」「えっ!?」



 雲ひとつ無い青空の下。

 学校の屋上で寝転ぶ一人の少女と二人の少年。

 うん、俺と秋吉以外にもう一人……居るんだ。


「ああ、大丈夫だよ?真紅璃くんと秋吉さんがそういう特殊なプレイをする関係であっても僕は気にしないから」


「むっちゃ気にしてるじゃん!呼び方が名字になってるじゃん!

 待って!汚いものを見るような目で俺を見ながら屋上から出ていこうすするの止めて!

 誤解だから!汚れてるのはこいつだけで俺は綺麗な体だから!」


 どこから現れたのか、いつから居たのか。

 俺の友人、久堂透がこちらを引きつった顔で見下ろしていた。


「えー……。どこからどう見ても同類だったんだけど……。

 だってユウ、彼女に踏まれながらも満更じゃない顔してたよね?」


「踏まれてた事は確かだけどさ!

 満更じゃないの部分は断固否定する!

 俺が喜んでいたのはパンツが見えてたことだけだから!

 踏まれてたからじゃないから!

 てかお前……どこから見てたの?」


「『……よう』『……ふん』のところから?」


「最初からじゃねぇか!」


 秋吉、俺のアドレスをトオルに聞いたらしいからなぁ。

 その後二人で連れ立って屋上に向かったものだから、何事かと気になって跡を付けてきたらしい。


「いや、それならそれで一声掛けてくれよ……」


「まぁそうなんだけどさ。

 ま、まさか学校で、いきなり特殊なプレイを始めるとか思わないじゃないか……」


「いや、最初から聞いてたんだよね?だったら俺が脅迫されて」


「それ、半ば自主的に寝転んでた人の言うことじゃないよね?」


「……黙秘権を行使します」


 まぁ確かに?クラスメイトが放課後の屋上で、いきなりソフトSMを開始するとか……そんなのエロゲ以外では、少年誌と、少女漫画と、レディコミくらいだもんね?

 あれ?結構一般的な行為かもしれない気がしてきた!


「でも……ユウがまさか秋吉さんとそういう関係……付き合ってるとか思わなかったよ」


「いや、繰り返すけど最初から聞いてたんだよね?

 それなのにどうして俺とこいつが『付き合ってる』って結論にいたったんだよ……」


「き、君は付き合ってもいない女性の股間に顔を埋めるのかい!?

 あと、ちょっとアンモニア臭がするからあんまり近づかないで欲しいんだけど」


「どうみてもラッキー……いや、アンラッキースケベ的な事故だったろうが!

 てかこの距離で臭いしちゃうんだ?あれか、服が乾いてきたからか……」


 大至急シャワーしてぇ……。


「とりあえずトオルの体操服とか貸してもらえない?」


「絶対にイヤだけど?ていうか自分のジャージ着ればいいんじゃないかな?」


「その発想はなかった」


 だって自分の体操服を使いたくなかったんだもん……。


「何にしても裏庭の花壇の近くに散水用の蛇口とシャワーホースがあるからそこで流した方が良いと思うよ?そこそこ……臭うし」


「五月の半ばに校舎の影で水浴びしてる奴とかを見かけたら、俺だったらドン引きするけどな!」


 背に腹は変えられないから仕方ないんだけどさ!


「ところでさ、君……どうして秋吉さんの事を膝枕してるのさ?」


 少し声の低くなったトオル。なんだよ?もしかしてヤキモチ……無いな。


「だってコンクリに直に頭置いたら痛そうじゃん?一応女の子だし可哀相じゃん?」


「じゃあ……どうして手ぐしで秋吉さんの髪の毛を梳いてるのさ?」


 さらに無表情になるトオル。……ああ、トオル、もしかしてこいつのこと好き……無いな。


「だってこいつの髪って猫っ毛で触ってて気持ちいいじゃん?

 こうして寝てれば秋吉も悪くないんだよ。

 むしろこうして髪を触ってると穏やかな気持になれるんだけどな。

 これってあれか?『良い秋吉はナントカな秋吉だけ』って感じのやつか」


「むぅぅぅ……。ていうかさ、そもそもこうなった原因って何なの?」


「いや、それこそ聞いたままだろ。ほら、この前保健室にティアラちゃんを運んだヤツ。

 それをネタに脅迫されてたと言うか、ちょっと楽しそうだったからこいつに乗ってみたと言うか」


「君、一体、稗子(ひえす)さんに何をしたのさ……」


 もちろん医療行為である。

 まぁ細かい所は伏せて……おくつもりが、トオルの小姑のような細かいツッコミにより詳細な説明をさせられ、粗方説明が終わった所で、


「……んっ……んふぅ」


 秋吉が覚醒。


「ん……んんっ?んんんんん!?」

「だから『ん』だけでは会話にならないって言ってるだろうが」


 まぁ倒れて起きたら知らない(知ってる)男の膝の上で寝てるとか混乱しても仕方ないが。

 その後、混乱状態が冷めたのか、気絶する前のことを思い出したようで真っ赤な顔でプルプルと震えだす秋吉。

 何この既視感……俺の回りの女子、プルプルしすぎじゃね?


―・―・―・―・―


エリスちゃんドン引き可愛い!と、思ったそこの読者様!

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