第011話 【★お隣さんと放課後の屋上で……その3】

 ……と言うわけで。

 屋上で 仰向けに 寝転がってる 俺が居る。

 いや、こいつマジで写真撮ってやがったのよ……。


「ふ……ふふっ……うふふふふふふふ」


 まぁティアラちゃんの足を腿の上に乗せて靴下脱がしてるのしか写って無かったから、他の人に見られても『えっ?湿布貼ってただけなんだけど……何か言いたいことでも?』で通るっちゃ通るはずなんだけどね?

 ……そう、写真だけなら。

 こいつ一緒に動画まで撮ってやがったんだよなぁ。


「ふへへへへへへへっ」


 てかさ、エロマンガじゃないんだから、そんな動画見せられても普通なら『法廷で会いましょう』としかならないんだけどね? 

 うん、ならないんだけど……なんとなく隣の人の熱意と殺意に押し切られ、屋上で地べたに寝転んでるんだよなぁ……。

 いや、マジで○○○○の顔してたからね?もしも拒否しようものなら間違いなく刃物持ち出されてたからね?


「てかさっきから気持ちわりぃよ!変な笑い方すんなよ!」


 そんな屋上で肌触りの悪いコンクリートの上に寝転がってる俺を見下ろしながら妙な笑い声を上げる秋吉英里子。

 てか寝転んでる顔の近くで仁王立ちとか……ねぇ?普通に空を見上げるだけで……見えるんですよ?

 例えるならば青空に浮かぶ白い雲。青い空と雲、それは貴女が見た光景、そして僕が見つけた希望……みたいな?幸せの青いパンツ?いや、白いんだけどさ。


 しかしあれだな。

 顔の横からすらっと伸びる健康的な足。

 引き締まったふくらはぎ、メラニンの沈着や乾燥なども無く若さを感じさせる膝、太すぎず細すぎず柔らかそうにムッチリと育ったふともも、そして、そこに影を落とすのは頼りなげにヒラヒラと風に揺れるチェックの制服の短いスカート。


 肉付きの良い太ももをさらに昇っていくと……夢と希望とパラダイスを包み込んだ真っ白な布っきれが一枚だけ。

 なんかこう……股間部分がぷっくりと……。てか、どうして昔の人はその部分を『観音様』に例えたのだろうか?観音開き的な意味?違うか。

 とりあえず手を合わせて拝んどこう。

 ありがとうございます、ありがとうございます。


「ん」


 てかさ、もうここまで来たならいっそのこと顔の上に座ったりしてくんねぇかな!?

 なんかもうね、エロい。隣の人、超エロい。等身大と言うか身近な生活感のあるリアルなエロさなんだよな。

 これが静たんだと、エロさよりも芸術的な意味での美しさが勝る。その点こいつ、秋吉は下品にエロい。

 例えるなら『年齢的に無理があるのにセーラー服を着せられたちょっとエッチな女優さん』的な?両者に対してそこそこ失礼だな俺。


「ん!!」


「ん!?」


 などと頭の中が真っピンクな想像で埋め尽くされている俺。

 いつの間にか顔の横に差し出されている秋吉の……右足。


「ん?」


「んん!」


「いや『ん』だけで意思の疎通出来るほど通じ合ってないからね?」


「チッ……足先を突き出したら靴を脱がせろって事に決まってるでしょ!!

 それともあんた、靴のまま踏まれたいの!?」


「決まってるんだ……いや、そうじゃなくて!

 まずは俺を寝転ばせた理由から説明しろよ!」


「あんた、そんなことも分からないの?

 そんなもの、あんたが私のティアラをそそのかした罰に決まってるでしょうが!」


 いや、美少女のパンツをタダで見られるこの状況、現状では罰じゃなくただのご褒美だと思うんだけど。


「フフッ、たぶんティアラはこの写真と動画だけでは私の事を愛してくれない……何故ならあんたがいるから」


「むしろ盗撮映像を見せて脅迫してくる相手を好きになるような酔狂な人間は居ねぇよ!

 そして何度も言ってるけど俺とティアラちゃんはお医者さんと患者さん以外のナニモノでもないからね?」


「あんた、それは二人はお医者さんごっこをするような関係だと言いたいの!?

 ……ふんっ、でも、その思い上がりも今日で最後。

 だってあんたは……これから私に踏まれて盛の付いた雄犬のようにそこで嬉し泣き、私の命令に何でも従う犬になるんだから」


「いや、洗脳魔法じゃないんだからそんな事には絶対にならないと思うけどね?」


 ダメだ、説明を聞いてもまったく理解できねぇ……。

 もしかして、秋吉の中の俺ってとんでもないドMでド変態なのだろうか?

 チッ、ちょっとだけこいつのことを、嫌な顔、いや、嬉しそうな顔しながらタダでパンツ見せてくれる仏様の様な奴だと思ったのにっ!信じた俺が馬鹿だったよっ!


 てか踏む時はちゃんと靴脱いでくれるんだね?ちょっとキュンとした!

 ……いやいやいや、おかしいおかしい。なんでキュンってしてんだよ……。

 あれ?俺って今まで気付かなかっただけでやっぱりドM属性だったのか!?


「ほら、優しい私は、最初だけは靴を脱いでから踏んであげようって言ってるんだから、あんたは素直に私の靴を脱がせればいいのよ!」


 そう言うと俺の顔の上まで足を突き出してくる秋吉。


「まぁ……脱がせろと言われれば脱がせるのもやぶさかではないが」


「言われてるんだから早くしなさいよ!

 何なの?罵られないと行動出来ないの?

 これだから特殊性癖の男は……」


「えー……屈折した性癖を持ってるのはお前だけで俺はいたってノーマルだと……思うんだけど、たぶん」


「地面に這いつくばって嬉しそうな顔で私のパンツ凝視しながらそんな事言われても、ねぇ?」


「ぎ、凝視とかしてねぇし?

 ちょっとお前のパンツと見つめ合っておしゃべりしてたただけだし?

 そもそもお前、性格真っ黒でドS、むしろドSSな癖に純白のパンツはいてるとかどうなってんだよ?そこはもう黒くてスケてるのとかはけよっ!」


 自分でもちょっと意味のわからない言い掛かりである。

 仕方なく、本当に仕方なくだからね?

 両手で秋吉の上履きを支える様に包み込み、踵の方からそっと脱がせる俺。


「……なんか、この距離でもちょっとだけ湿った雑巾みたいな臭いガフッ!?」


 上履きから漂うスメルの感想を述べようとしたら結構な力で顔を踏まれたよ……。


「……」「……ふっ」


「……」「……んふっ……んふふふっ」


 女子高生に顔を踏まれながら無の境地の俺と華が咲いたようような、満面の笑顔の秋吉。その笑い声は某歴史漫画の唇の分厚い武将のそれである。


 うん、まぁ、あれだ。

 もしかしたらと思って……踏まれてみたんだけどさ、ぜんぜんムラムラっとしない俺はやはりドMでは無い様である。

 いくら相手がそれなりに(見た目だけは)可愛い女子高生だとしても踏みつけられるとイラッとしかしないもん。


 見上げた先にあるパンツにはムラムラっとしてるんだけどなぁ。

 だってさ、真っ白だったその布の中心部分、少しずつ、どこからか水分が滴ってきて色が変わってるんだぜ?

 さっきも(心の中で)言ったけど、どうせ顔に乗せるなら足じゃなくてその少し大きめのお尻にしてもらえませんかね!?

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