第016話 【サヨナラとスイカ】

 そんな、一人だけど友達と呼べ……ない事もない知り合いも出来、ちょっとだけ学園生活にも潤いが出て来た今日この頃。

 べっ別に『どうせなら女子が良かった』とか思ってないんだからねっ!

 俺が通ってる迷宮科、どうやら月曜~水曜は通常授業、木曜から土曜はダンジョンアタックと別けられているようで。


 学校に通学しながらでも、ある程度コンスタントにダンジョンに潜れるようで一安心である。

 もちろん今でも毎日ダンジョンに通いたいと思ってるんだけどね?贅沢を言い出せばきりがないのだ。

 まぁそんなダンジョンアタック(課外授業、魔物にとっては加害授業か?)なんだけど、前回はトオルと愉快な美少女たちのグループに潜り込んでいたんだけど、


「いや、お前ら全員ランク★2以上じゃん?俺、★1だったからさ。

 さすがに図々しくもそこに混ざるのはちょっと抵抗があると言うか、遠慮させてもらいたいんだけど」


「どうしてさ?別にランクなんて★1でも★5でも在学中にレベル『20』を超える人なんてほとんど居ないんだから気にする必要ないじゃないか?」


「確かにレベルについてはそうなんだろうけどさ。

 ダンジョン内での『能力値変化』がデカいから下層に行くほどついて行けないじゃん?」


 今後は遠慮したいんだよね……。

 てかさ、そもそも『ランクって何だよ?』って話から始めないと意味がわからないと思うんだけどね?

 てことで『ランク』とは?


 ダンジョンで入手出来るダンジョン・カードで知ることが出来る『能力限界』。

 『★1・コモン』から始まり、『★2・アンコモン』、『★3・レア』、『★4ハイレア』、『★5スペシャルレア』と続く。

 もちろん★6とか、それ以上もあるかもしれないけど……今、世界的に発表されてるのは★5までらしい。まぁ世界の過半数は★1だから関係のない話だな。

 もちろん★の数が増えるほど強いと言われており、最大レベルが★1から『20、40、60、80、99』となっている……らしい。


 まぁ確かに、レベル限界が違うだけなら、透が言うようにランクが違う人間と組んでもそれほどの問題はなかったんだけどね?

 ダンジョンの中での、『★の数が一つ変わるとおおよそ三割程度全能力が上がる』っていう能力差があるからねぇ……。

 例えば★1が『100』のちからだとすれば、★2なら『130』、★3なら『169』……レベルが上がるとこの差はさらに広がるばかりという。


「特にトオルと明石なんて、今年の新入生に三人しか居なかった★3じゃん?

 クラスは違うけどもう一人の★3の生徒も一緒の班に入るって話だしさ。

 さすがにその中に★1の俺が入ったら寄生してるようにしか見えないじゃん」


「そんなのはただの他人の嫉妬だろう?

 友人同士で一緒にグループを組んで何が悪いのさ?」


 あれだぞ?他人の妬み嫉み、むっちゃ怖いんだぞ?

 形のない呪とか怨とかいう想いになって、最悪殺されることもあるんだからな?ソースは異世界。

 そもそもトオルがどう言ってくれようと、グループには他にも三人、新しく増えるメンバーも含めれば四人の人間がいるわけで。


「まぁアレだ、他にも色々と理由もあるからさ。

 トオルの気持ちはものすごく嬉しいけど……今回は……おい、何だあれ!?

 メロン?いや、そんな生易しいもんじゃねぇぞ!?スイカ、スイカが!?

 いや、スイカは動いても形は変わんないよな?てことは……あの中身はスライムなのか!?」


「ユウ、さすがに初対面の女性に対してその反応はあんまりすぎるよ……。

 彼女は『安倍(あべ)夕顔(ゆうがお)』さん。もう一人の★3の子だよ」


「何がとは言わないけど、歩くだけでそこそこ揺れるとかどうなってんだよあれ!?

 見てるだけで熱くなった鼻息で地球の温暖化を招くぞ!?」


「とりあえず少し落ち着こうか?」


 べ、別に?興奮とかしてないから落ち着く必要なんて無いし?

 しかし、それに比べて……


「何なのかしら?貴方のその捨て猫を見るような優しい目は?」


「いや、静たんは地球に優しいなと思って」


「その静たんという胡乱な呼び方を止めてもらえるかしら?

 あと、いつまでもその、とても不愉快な視線を投げかけていると目をくり抜くわよ?」


「ごめんて。

 新しいメンバーも来たようだし?あとは若い子にまかせて俺はこのへんで。

 あれだ、またどうしてもグループで行動しなければクリア出来ない課題とか出たら、その時は荷物持ちか何かでよろしく!」


 あまり納得は出来ていないらしく、ため息をつきながらも見送ってくれるトオル。むっちゃジト目だけど。

 何なの?お前は俺の彼女なの?

 静たんもジト目だけど……あっちは(おっぱいを)持たない者の恨みのこもった目だろうなぁ。



 そんなこんなで、普通なら追い出される対象であろう俺の方が引き止められるという一幕もあったが、トオル達から離れた俺。

 これから、また一からどこかのグループに参加する……なんていう面倒くさいことはもちろんしない。


「てことで担任、しばらくはソロ活動がしたいんですけどいいですかね?」


「担任じゃなく先生ね?あなたはまたですか……。

 はぁ、先週の真紅璃くんの動きを見る限り、一人での行動に問題は無いとは分かってるんだけど、一年生で覚えてほしいのは魔物の倒し方だけじゃなく集団での連携とかもあるんだよ?

 でも、ことスライムに関しては他の人とあなたの倒し方じゃぜんぜん違うからなぁ……少なくとも入学すぐの学生がすぐに真似できそうな方法でもないし。

 やたらと効率よく倒すから他の人に合わせろと言うのも何だし。

 あなた、先週だけでレベルも上がってるんでしょう?」


「そうですね、『3』まで上がりました。

 でも、スライムだとそろそろ頭打ちって感じですし、最高でも5くらいまでしか上がらないと思いますよ?」


「えっ?『2』じゃなくて『3』だったんだ!?

 それ、普通の生徒なら一年生の夏休みまで掛けて上がるかどうかのレベルだからね?

 それに最高で5とか……久堂くんと明石さん達の★3メンバーも活躍してくれれば夏のボーナスアップもあるかも……。

 わかりました、今回は先生の『と・く・べ・つ』……ですよ?」


「『ボーナス』の一言が無ければキュンとしたかもしれないのになぁ……。

 たぶん、そういうとこが担任の結婚出来ない理由なんだろうなぁ」


「それ、セクハラだよセクハラ!

 あと、わたしは結婚出来ないんじゃなくてしないだけですっ!」


「そうなんですか?残念だなぁ、このままゆっくり仲良くなって卒業式にプロポーズなんて」


「今日からは真紅璃くんじゃなく夕霧くんって呼ぶね?」


 この担任、生徒に対して必死である。

 まぁ物凄く可愛いタイプの人だし?これでモテないとか、ただの冗談なんだろうけどさ。

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