第015話 【昼休みと初めての友人】
せっかくダンジョンカードを入手したのに、学校を辞めるとソレを没収……はされないけど、長期の活動停止に追い込まれるという、まるで俺の行動を読んでいたような政府の対策により、制服リフレならぬ『制服学園』に通うことになった俺。
いや、学生が制服を来てるのは何らやましいことではないんだけどね?
てかさ、入学以来いつも一人ぼっちで昼飯を食ってるからか、クラスメイトから毎日奇異の目で見られてるような気がして……少々落ち着かない。
「隣の人、少し良いか?」
「まったく良くないんだけど?」
「ほら、キラ……久堂?って毎日昼になると弁当持って居なくなるよな?
あれって一人で飯食ってるのかな?
それとも他のクラスの知り合い、もしかしたら彼女とかとイチャコラしながら飯食ってるのかな?」
「私、良くないって言ったよね?
久堂くんは告白されても全部断ってるみたいだし、親しい男友達も居ないみたいだから普通に一人で食べてるんだと思うわよ?」
「何だよ、キラキラしてるくせにあいつも俺と同じでボッチ飯なのかよ」
「あんたと久堂くんではその中身がまったく違うんだけどね?
久堂くんは誘われたのを断って一人でいる、つまり孤高。
一方あんたは誰にも誘われなくて一人、つまり孤独」
「真実を伝える、それは殆どの場合相手を傷つける行為なんだぞ?
まぁいいや、こっそり後ろからつけて一人で食う場所を暴いてやろう」
「そこで普通に話しかけて聞かないからあんたはボッチなんだと思うわよ?」
だって、良く知らない人間に話し掛けるとか、緊張するんだもの。
てことで、昼休み。教室を出てゆくキラキラの後をつける俺。
ふむ、階段を昇っていくと言うことは……まさか屋上に出るのか!?いや、そんな珍しいことでもねぇな。
キラキラが屋上に出たのを確認、少し時間をあけ、同じ様に屋上に出てゆくと、
「誰か後ろからついてくると思ったら君か」
「おおおう!?」
先に屋上に出ていたキラキラが、ワンテンポ遅らせて扉をくぐった俺を正面から待ち受けていた。
何なのこいつ、凄腕の忍者か何かなの?
「なんだよ、びっくりした……いや、キラ……久堂?って毎日弁当持って教室を出ていくからさ。
どっか、一人で食うのにいい場所とか知ってるのかと思って尾行してきたんだよ。
ほら、入学早々ひとり飯とか珍しいらしくて、やたらとクラスの人間に見つめられるから、飯食ってても落ち着かなくてさ」
「君っていつも僕の名前を呼ぶときに疑問形になってるのは何故なのかな?
もしかして未だにうろ覚えなのかな?まぁいいけど。
それならそれで最初から声をかけてくれればいいんじゃないかな?せっかくダンジョン探索で一緒のグループになったんだしさ。
まぁ確かに、他の人が騒いでる中で一人で食べてるとちょっとだけ目立つもんね?」
「一緒のグループって言ってもダンジョンまで移動する時、バスの乗り降りの際に集まるくらいで行動は別々なんだけどな」
学校の屋上って結構な確率で出入り禁止になってる気がするけど、ここの学園ではそうでもないらしく。
結構広いスペースにベンチのような椅子が結構な数備え付けられてるし、俺たち以外の他の生徒もちらほらと集まって飯を食ってるみたいだ。
空いたベンチに腰掛け、持ってきた袋から昼食を取り出す俺。
「いや、どうしてそんな近くに座るんだよ、あっちいけよ」
「えー……君、人のことストーキングしておいてその突き放し方はどうなのさ……。
ていうか、何、その、それは一体……何?」
いや、だってお前、静たんが言うにはホ○疑惑があるからさ……。
もちろん他人の趣味嗜好に文句を言うつもりはないんだよ?俺に害が無い限りはって但し書きが付くけれども。
「何って聞かれても……弁当?」
俺が袋から出した今日の昼飯を困惑顔で見つめるキラキラ。
そしてそんな奴を無視して用意――袋をモミモミしたあと、G○ng chaで使うような(タピオカを飲む用の)太いストローを差し込む。
「えっと、たぶんなんだけど……クラスのみんなが食事中の君を見るのって、一人だからとかじゃなくそのお弁当のせいじゃないかな?」
「いやいや、スーパーで普通に売ってるモノを食ってるだけなのに、そんな目立つようなことってあるか?」
「逆に聞くけどさ、例えば僕が冷凍うどんを解凍することもなく食べだしたら……どう思う?」
「えっ?キラ……久堂って冷凍うどんをレンチンもしないで丸齧りするタイプの人だったの!?ちょっと……引く」
「例えばって言ったよね!?ちゃんとレンジする、むしろおうどんは柔らかいのが好きだから鍋で炊くけどね!?
その常識があるのに、どうして君はレトルトカレーにストロー差して吸ってるのさ!!
ていうか、女の子が言ってた『王子』って君のことだったのか……」
「えっ?俺って女子から王子なんて呼ばれてるの!?
キラ……久堂を差し置いて?」
「ずっと気になってたんだけど、君はどうして僕の名前を呼ぶ時に毎回『キラ』って先に言うのかな?
僕、名前を書く黒いノートとか持ち歩いてないからね?
いや、君以外に『カレーの王子』なんてアダ名付けられる人はたぶんこの学校には居ないと思うよ?」
「ああ、なるほど、そっちの意味での王子だったか……。
まぁアレだな!入学早々女の子からアダ名で呼ばれてるなんてさ、俺、クラス溶け込みすぎじゃね?
運動場に迷い込んできた犬並みの大人気じゃね?」
「びっくりするくらいポジティブなモノの考え方だなぁ……」
「ちなみにレトルトカレーを昼飯にする時は袋のままよく揉んで具材を小さくしないとストローに詰まるから、これ、マメ(知識)な?」
「僕はレトルトカレーを昼ごはんにすることは無い……もしもあったとしてもご飯にかけて食べるからその心配はご無用だよ!」
女子受けしそうな爽やかな笑顔で『あははははっ』と笑うキラキラ。
まぁこの後、俺がこいつを呼ぶときの『キラ』とは一体何なのかの説明させられたので『キラキラしてて後ろにバラの花が舞ってそうだから』だと教えてやったら、これからはちゃんと名前で呼ぶようにと少し拗ねられた。プクーちゃんかお前は。
カッコいいじゃんキラ。もし俺がそう呼ばれたら一週間くらい続けて陰湿な嫌がらせしてやるけど。
「てかさ、俺はお願いされたからキラ……久堂のことを『透(トオル)』って呼ぶのはいいとして……どうしてトオルは俺のことをユウって呼ぶんだよ?」
「逆に名前で呼ばれてる僕が君の事を『名字に君付け』してる方がおかしいと思うんだけど!?
はぁ、ユウってそれなりにフレンドリーな態度なのに一定以上に近づこうとする人との距離を突き放しにかかってくるよね?」
もちろんそんなことはあるんだけどさ。
てかキラキラ改めトオル、そのいけ好かない第一印象とは違い、性格にも嫌味のない普通に良い奴なんだな。
「お前さ、男前で性格がいいとかちょっと控えてくれる?
そんなんだから男友達が出来ないんだぞ?」
「友達が居ないのは君も同じだよね!?」
なんだかんだでそれから普通に授業間にも二人で話すようになり、弁当も教室で一緒に食ったりするようになった俺とトオル。
おかげさまで女子から、
『私達が久堂君と食事したいのになんでカレーが一緒に飯食ってんだよ?頭にチーズトッピングしてチーズカレーにすんぞコラ』
みたいな目で睨まれてる気もするけどたぶん気のせい。
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