第014話 【どうやらちゃんと学校に通わないといけないらしい】

 初めてのダンジョン探索も無事終了。

 ダンジョン・カードも入手出来たのでこれでもう学校に通う必要も無くなった俺。

 週明けの月曜日、朝のホームルームの後に女教師二十四歳を捕まえて、


「担任!ちょっと質問があるんですけど!」


「どうしてあなたはいつまでも先生じゃなく担任と呼ぶんですかね……もしかして特別感を出したいとか……?まぁいいですけど。真紅璃くん、どうかしましたか?」


「えっと、ちょっとこの学校と性格の不一致が露見いたしましたので、そろそろ距離を置きたいなと思ってるんですけど」


「色々と先生のトラウマを呼び起こしますので距離を置くとか、他に気になる人ができたとか、一緒に居すぎて女として見れないとか言うの止めてもらってもいいかな?

 あー……毎年何人かいるんですよねぇ、カードを手に入れたらそのまま探索者になろうとする子が。

 ちなみにですけど、もしも学校、迷宮科を長期間の休学及び退学した際にはカードを持っていてもダンジョンに入れなくなりますからね?

 それも『十年間の探索者活動停止』っていうペナルティ付きで」


 なん……だと?


「……それは担任が俺と一緒に居たい、あわよくば(性的に)食ってやろうと思って口からでまかせを言っているのではなく?」


「少なくとも私の名前も覚えていないであろう生徒を襲うほどの好意を今はまだ寄せては居ないのでそれは少ししか無いですね」


「少しはあったのかよ……。

 もう少しこのまま学園生活を満喫してみようと思います」


「はい、頑張ってください。

 もしも先生と夫婦生活をしたくなった場合は卒業後に告白してくださいね?」


 マジかー、退学するとペナルティまであるのかー……。

 ま、まぁ物は考えようだし?右を向いても女子高生、左を向いても女子高生、制服姿の女子高生。

 それがなんと……今ならただで!それもお巡りさんに注意されることもなく眺め放題なんだしね?

 つまり、『学校に通ってる』じゃなく『制服の女の子がいるんだからここはコンカフェ、それも無料で隣に女の子が座ってくれる大盤振る舞いのお店!』だと思えば……。


「いや、無いな。だってムラムラさせるだけさせておいてお触りは厳禁だし……ルールの厳しいセクキャバかよ!」


 うん?どうして隣で鞄から机に教科書を移してる……名も知らぬ女子は俺の事をそんな蔑んだ瞳で見つめてるのかな?

 まさか、俺の心を覗き見してたとか!?


「この女子……さては思考を読み取ることが出来る能力者だな!?」


「違うわよっ!普通にあんたの声が聞こえてきただけよっ!」


 なるほど。……なんかこう、隣がこんな気持ち悪いおっさんでごめんね?

 あと結構心にくるからギギギっと机を離すのは勘弁してもらえないかな?

 チッ、担任のせいで隣の女子に物理的に距離を置かれちゃったじゃねぇか!


 もうこれは責任を取ってもらって、コミュ障の美少女が一人で活動してる怪しい部活、おそらく『ご奉○部』とか、そんな名前の部活を紹介してもらうしか!

 ……コミュ障っぽい美少女……つまり静たんか?駄目だ、奴には既に蛇蝎の如く嫌われている。

 ちょっと匂いを嗅いで小さなお乳について語っただけなのにっ!うん、そりゃ嫌われて当然だわ。


 そもそも俺、異世界でも商売以外ではほとんど他人と接触してなかったんだよなぁ。

 そんな生活が十年。他人との、それも若い女の子との距離感の取り方とか分かるはずが無いんだよ。

 あまつさえとっとと辞めちゃう予定だったからね?つまり俺は何も悪くないのだっ!


「はぁ……隣の席がネコ耳とかイヌ耳の美少女だったらよかったのに」


「何なのこいつ……ため息をつきたいのはコッチなんだけど!?」


 どうやらまた俺のほとばしる熱い情熱(パトス)が口から出てしまったようだ。


「うるさくしてごめんよ、知らない隣の人」


「先週末三日間も同じグループで行動してたよね!?

 あんたはほとんど自由行動してたけど!!」


「えっ!?マジでっ!?

 ……まぁ冗談はこれくらいにして、そろそろ一時間目だし静にしよ?」


「冗談だって言うなら私の名前を言ってみなさいよ!」


 何なのこの子?世紀末の弟より優れていない兄なの?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る