第013話 【異世界商人:日本版】

 木曜日から始まったダンジョン活動。『活動』というワードにあまりいいイメージが無いのは某パ○活とかいいながら売(ry

 最下級の魔物、『ジェリー・スライム』だけ!という縛りはあるが、迷宮内ソロ行動の許可が出た俺。

 移動時間があるので、そこまでの数は狩れなかったが、それでも三日間……実質二日間で『538匹』のスライムを倒せた。


「入学したばかりの学生さんが、週末だけで50本超えのスライム・ローションを納品するなんて……」


 ドロップアイテム、スライム・ローションの売値は一本八百円ナリ。

 つまりお小遣い四萬円ゲットってことだな!……まぁここから『ダンジョン税』として三割引かれるんだけどさ。

 中身のローションだけでなく、瓶にもそれなりの価値があったりするのでそこそこいいお値段になった。


 ……さて、ここまでの俺の話に『何かしらの違和感』を感じたとしたなら、あなたはなかなか鋭い洞察力の持ち主である。


 そう、俺が納品したのはレアドロップ(まぁ十分の一くらいのドロップ率だったからレアってほどでもないけど)の『スライム・ローション』だけ。

 他にもあったよね?ドロップアイテムが。

 特に引っ張るほどの物でもないからとっととネタばらしするんだけどさ。

 そう、一緒に入手したサイコロサイズの小さな『魔石』、まったく売ってないんだよね。


 もちろん売れないから捨ててるとかじゃないからね?小さくても一つ二百円くらいで売れるし。

 スライムの魔石は今のところ100%ドロップなので、500匹分売れば十万円!……なのにどうして売らないのか?

 それは木曜日、ダンジョン・カードを入手した日の帰宅後まで戻る。


 ほら、カードに表示されていた能力値(ってほどの詳細はなかったけど)。

 表面には通常『星(ランク)、レベル、名前、年齢』の四種類、裏面には『所有スキル』が書いてあるらしいんだよ。

 俺は何もスキルを持ってなかったから裏側はツルッツルだったけどな!


 でもほら、表面。

 他の人には見えない(他人がカードを持つと表示が消える?)けど祝福『異世界商人』があったじゃん?

 そもそもこの異世界商人だけど、向こうの世界では日本の品物を現地価格で購入できるだけの微妙な能力だったんだよね……。


 まぁそれでもあまり異世界で出回っていない品物が手に入るとあって、使い道はあったんだよ。

 購入できるのは某大手通販サイトで売っているモノ、それも日本国内で買える物だけで、銃器なんかは置いてなかったんだけどね?

 でもほら、ここ、日本じゃん?普通にアマ○ンで注文すれば翌日届くじゃん?プラ○ム会員なら動画も見れてお得じゃん?


 だから特に使うことなんてねぇだろうなと、思ったんだけど……夜にアイスが食いたくなったんだよ。


「今からコンビニまで歩いて買いに行くの面倒くせぇな……」


 てことで、ギフトを使用するためのワードである「異世界商店、開店!」と、開いてみたらなんと……


『開店準備中:開店資金・魔石 000/500』


 って出たんだよ!

 いや、何だよ開店準備って!異世界ではすぐに使えたじゃん!何なの?シークレットバージョンアップとかされてんの?

 そして開店資金が『魔石』ってところがとっても気になってさ。だって、向こうでは普通に金銀パー……金銀銅貨使えてたからね?


 地球で魔物初討伐記念というか、普通に家で使えるからその日に入手したちっさい魔石、七個とも持って帰ってきてたから試しに入金(入魔石?)してみたら、


『開店準備中!:開店資金・魔石 007/500』


 って変化するじゃん?

 何が買えるようになるか分からないけど、これもう、とりあえず開店させるしかない!って思うじゃん?

 だから頑張った。『売ればお高い焼肉とか食えるのに……』と、心が挫けそうになりながらも、なんとか500個貯めきった!


 『他のドロップアイテム(スライム・ローション)だけ納品して、魔石の納品はゼロだと受付で怪しまれるだろ?』


 と、思われるかもしれないけど……そもそも弱い魔物から出るような小さな魔石だと、売値が二百円で買値が四百円だからさ。結構そのまま持って帰る探索者が多いんだよ。

 それも最初に入手できる二センチ四方の『極小魔石』は、電池みたいにはめ込むだけで、家電だけでなく車の燃料としても使われてるしさ。

 だから持ち帰っても(もちろん限度はあるだろうけど)特に疑問を持たれることはないのだ。


 いや、今はそんな、この地球のインフラの変化のことなんてどうでもいいんだよ。

 『開店準備中!』が『プレ・オープン!:露店1・魔石 0000/1000』になってて、俺からさらに魔石を毟り取る気満々なのも気にしちゃいけないんだ。


 さすがにダンジョンの中で異世界商人の機能を確認するわけにもいかないので、帰宅後のお楽しみにしてスライム狩りを続行した俺。

 超過分の魔石は手元に残し、受付のお姉さんに驚かれながらスライム・ポーションだけ納品してきたってわけである。

 一体どんな物が売っているのか!早く確認したい気持ちをぐっと我慢して夕食の用意、そしてお風呂に入りベッドに寝転ぶ。


「異世界商店、開店!」


 ドキドキ・ワクワクしながらも開いた商店のラインナップであるが、


「雑貨って言うか、ほぼポーション屋って感じだな。品揃えも下級ばっかだし。

 てか支払い、日本円じゃなく魔石払いなのかよ」


 今回のラインナップだと、一番安い『下級治療薬(いわゆる傷を治療するポーション)』で魔石五十個、一番高い『下級回復薬(病気を治す、症状を緩和させるポーション)』で魔石二百個ナリ。


「まぁポーションなんて、スライムの相手しかしていない俺には今のところ必要のない品物なんだよなぁ」


 てことで残りの魔石38個もランクアップのために商店に放り込んでおくことに。

 強そうな装備品とか買えるようになればいいんだけど……少なくとも『異世界産の食材』とかはいらないしね?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る