第012話 【期待の大型新人!……からの~五分で転落】

 さて、迷宮から出て来たところ劇画顔の同級生に絡まれ……いや、担任の説明によれば心配されてただけみたいなんだけどさ。

 迷宮科の一年生全クラス、魔力酔い?で全員まともに動くことも出来ないまま、入り口と外の往復をする中でケロッとした顔でダンジョン・カードを手に入れてきた俺。


「真紅璃くん、初日から迷宮内で動ける、これって物凄いことなんですよ?」


「そうだぞ!全国的に見ても数十万人に一人、うちの学校初の快挙だな!」


「もしや★4ハイレア……それとも我が校初の★5スーパーレア……」


 なんかもう、期待してもらってるところ非常に申し訳ないんだけど……。

 スッと担任にカードを差し出す俺。


「……えっ?★1?コモン?」


「あっ、はい」


 担任のその声に集まっていた教師が笑顔のまま離れてゆく。

 いや、せめて何か言えや!!


「ま、まぁランクは上がることもある……らしいからね?ファイト!」


「全世界でも三件しか報告例は無いがな」


 もうそれ上がらないと同意語なんじゃね?まぁ俺の目的はカードを手に入れること、そして浅い所で無理せず日銭を稼ぐことだし問題ないんだけどさ。

 そう、ランクが高かろうが低かろうが――もちろん高いに越したことはなかったけど――特に気にするほどのことじゃないのだ。

 そんな教師に期待されて勝手にがっかりされるという初めてのダンジョン体験も終わり、グロッキー状態のクラスメイトと一緒にバスに乗り込み学園に戻る俺。


「いや、君さ、ダンジョンではピンピンしてたのに学校に戻った瞬間にトイレに駆け込むって何なのさ?」


「だって、バスが、嫌な感じに揺れるん、だもの」


 もちろん帰りも乗り物酔いになった俺だった。



 それから翌日の金曜、そして土曜と続けてダンジョンに向かう迷宮科の面々。

 もちろん俺も一緒なんだけどね?

 特にグループ活動しても何も得るものはないので、


「えっと、一人でスライム狩りしててもいいですかね?」


「相変わらず自由な子だなぁ……。

 スライムだけならきみが怪我をするようなことはなさそうだけど、わたしの判断だけでは許可できないのよね」


「そこを何とか!あ、サービスでおっぱい揉み……俺の力を持ってしても無いものは揉めねぇ……」


「どちらかと言えば胸を揉ませるのはわたしからのサービスでしょうがっ!

 あと、鎧で押し付けられてるだけで普通に有るわよっ!」


「ハハッ!ご冗談を。ちょっと担任に聞いてきますねー」


 てことで独身二十四歳担任教師の元に向かう俺。


「担任……俺、もう我慢出来ないんです……良いですよね?」


「い、良いはずないでしょ!?私とあなたは教師と生徒なのよ!?」


「いや、だから聞きに来たんですけど?

 もうカードも入手しましたし、適当にダンジョンに潜って一人でスライム退治しててもいいですよね?」


「何よこの子、紛らわしいわね……。

 いえ、そんな遠足の自由行動じゃないんですから、いきなり一人で行動なんてさせられるはずがないでしょう?」


「つまり、『もしもここを通りたければ私を押し倒してから行け!』ということでしょうか?」


「他の学校からもいっぱい人が集まってるから倒すのも押し倒すのも禁止だからね?そんなことしたら大問題になるからね?

 そうね、あなたのグループ担当の千代田さんから報告は受けてるけど……一度先生と一緒に潜ってみて、大丈夫だと判断できれば許可してもいいわよ?

 その装備で本当に、それほど簡単にスライムを倒せるとは信じられないんだけどなぁ……」


「女教師とリビドーが爆発寸前の生徒が一緒に暗い穴ぐらの中、そんな二人に何も起こらないはずもなく」


「何か起こったらちゃんと責任を取ってもらうけどね?」


「指一本触れませんマム!」


 担任の前で三度ほどスライムを倒したところで、


「林檎を投げてサーベルで受ける見世物みたいね……。

 多少心配は残るけど、あまり奥まで進まない、危険だと感じたらすぐに戻ってくる、約束できる?」


「もちろん、無理、無茶、無謀とか大嫌いな言葉ですので」


 ソロ活動の許可が出た。


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