第010話 【初めての戦闘はスライム】
それから昼休憩まで体調不良のメンバー全員で地上とダンジョンの中を行ったり来たり。
昼飯――今日の俺はレトルトカレー――を済ませてからも、地上とダンジョンを行ったり来たり。
時間はすでに午後三時を回り、もうすぐ学校まで帰る時間である。
「いやこれ、今日中に終わらなくね?
最初から比べればかなり動けるようになってきた静たんですら十分で生まれたての子馬みたいになってるし」
「な、何なのよその呼び方は……。
そもそも今週中に終わらせられれば、という感じの時間割になっていたでしょう……?」
「えっ、そうなの?」
全然知らんかったんだけど?
「まったく、きみみたいに初日からケロッとしてる子が異常なだけなんだからね?
でも、確かにこのまま他の人に付き合ってダンジョンを出たり入ったりしてるだけもカワイソウよね」
「お姉さんのダンジョン(意味深)を出たり入ったり(どストレート)なら何時間でもお付き合いするんですけどね?」
「何よその飲み屋のオッサンでも言わなさそうなど下ネタ……。
どうする?たぶん後は休憩だけで終わりになると思うけど、きみだけ先に済ませておく?」
「他の嬢にチェンジとか可能ですかね?」
「担当女性探索者の事を『嬢』って呼ぶの止めてもらっていいかな?
いえ、そうじゃなくて!
言うに事欠いてチェンジってどういうことなのよっ!?」
「いや、ロリ系……ロリ体型はちょっと趣味では無いので……。
まぁここでボーッとしてても仕方ないですしお願いできますかね?」
「誰がロリ体型よっ!?
そもそもそっちの子達が成長しすぎ……明石さんとは仲良くなれるかも?」
「いや、静たんは胸が残念なだけで他の部分はちゃんと成長してますし」
「貴方達、私が元気になったら覚えておくことね……」
こっちを睨みつけてくる、普段よりも眼力の無い静たんの事は放って置くとして、スリム系探索者の……某氏とともに再度ダンジョンに入っていく俺。
「いえ、入ってきたのは良いものの、その元気さばかりに目が行っててきみの装備のこと完全に忘れてたよ。
まぁ今月いっぱい余裕はあるみたいだしね?
今日は少し痛い目を見て、わたしに対する暴言を心から反省すればいいよ?」
「いや、さすがに何日もダンジョンの入り口を往復するだけの日々を送りたくはないので、とっととカードを手に入れるつもりなんですけどね?」
迷宮の中とは言え、ジェリー・スライムしか居ないらしい最上層の浅い場所。
二人でダラダラと、むしろ二人しか居ないからダラダラと奥へと進む俺と……某氏。
「何故だかわからないんだけど、きみが私の名前を覚えてないような気がする……」
「まさかそんなことあるわけ無いじゃないですか。
それで、某氏は探索者になってもう長いんですか?」
「完全に覚えてないよね!?千代田お姉さんだよっ!千歳さんだよっ!
これでも学生さんには大人気の案内人なんだけどなぁ……」
「まぁ話しやすいですし、一部紳士の人には人気の嬢なのもうなずけます」
「それ、紳士って書いてロ○コンって読む人たちのことだよね!?
あと嬢って呼ぶの止めてってば!」
探索すること十数分、特に迷いそうな、ややこしい分岐もなく道なりに進んだ先に……プルプルと震える生き物が数匹。
「やっと見つかったわね。さて、ここからは少し真面目に行くわよ?
ちゃんと勉強してると思う……本当に勉強してるのよね?」
「大丈夫ですよ?とりあえずヤッちゃっていいですかね?」
「不安しか感じないんだけど……まぁいいわ。
わたしが先に見本を見せるから、ちゃんと見ててよ?」
出て来た魔物はもちろん『ジェリー・スライム』。
それが五匹ほどいるけど……固まっているわけじゃないから特に問題はないだろう。
手に持った透明の盾を構えてゆっくりとスライムに近づいてゆく某氏。
残り数メートル――おおよそ三メートルの距離――まで近づいた所で薄水色のゲル状の体が宙を舞い、彼女の構えていた盾に『ボスン!』という音とともにぶつかり、そして跳ね返えり、
「うっ、っと、はっ!」
地上に落ちた所をメイスで叩き潰された。
「ふふん、どうかな?」
「んー、『うっ』って言う声がエロかった?」
「助走付けて殴るよ?」
いや、メイスで殴られたら助走とか関係なくオーバーキルだわ!
「ま、まぁ冗談はそれくらいにして、50点くらいですね」
「物凄い上から目線いただいちゃったんだけど……」
「フッ、いいでしょう。
俺が本当のスライム退治ってモノを見せてさし上げますよ」
「某グルメマンガの黒いスーツを着た人か!
いっそ合体したキング・ジェリー・スライムに押しつぶされてしまえばいいのに」
えっ?地球のスライムって合体とかするの!?
さて、彼女は受け止めてから倒していたジェリー・スライムであるが……。
簡単に盾で受け止められることからも分かる通り、その攻撃は直線的なモノなんだよね。
ということで、
「よっ! ほっ! ほっ! ほっ!」
「えっ?待って!?ちょっと意味が分からないんだけど何してるのそれ!?」
刺突武器であればこうして、投げたりんごをサーベルで突き刺すが如く簡単に退治出来るのである。
……まぁコアがデカい上に、多少コアを外しても、突き刺せば死んじゃうような生命力しかないジェリー・スライムだから可能な攻撃方法なんだけどね?
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