第9話 ゼルSIDE:勇者、聖女の死

マモンが出て来た。


嘘だろう…全然消耗してない。


倒す為に、城塞都市は見捨てた…少しでもマモンを消耗させる為に。


マモンは情報通り、ギルメドを襲った。


城塞都市から戦闘音が、この森まで聞こえてきた。


勘弁してくれ…俺が必ず、必ずマモンは倒す。


だから、許してくれ。


この犠牲は無駄にはしない。


マモンは俺が倒す…そして何時か魔王を倒すから、それで許してくれ。


破壊音が聞こえてくる度に申し訳ない気持ちがこみ上げてくる。


恨まないでくれ!


どの位、時間が経ったのだろうか…破壊音がとまり大勢の人間が逃げ出してきた。


恐らく、マモンによってゴーレムが壊され、都市を捨てて逃げ出したのだろう。


都市が空っぽになる位の人数が慌てるように逃げ出したあと…ついにマモンが現れた。


嘘だろう…殆ど、無傷だ!


「これは無理だ、マリア逃げた方が良さそうだ!どう見ても勝ち目は無い」


「そうねゼト、これは私達の手に負えるような相手じゃないわ」


「「逃げよう(ましょう)」」


「馬鹿な奴め…そこに居るのは解っておる!正々堂々のかけらもない薄汚い者、出てくるが良い!」


駄目だもう逃げる事は出来ない。


行くしかない!



「魔王四天王のマモンだな!俺の名はゼト!」


「私の名はマリア!」


 「お前に決闘を申し込む!」


どう見ても逃げられそうもない。


もう戦うしかない。


「ほう、人間の分際で我に決闘とは、面白い受けてやる…」


その瞬間、俺は猟銃をぶっ放した…この世界にも銃はあった。


ただ、マイナーな物であまり知られて無い。


これなら不意がつける…そう思った。


狙うのは目だ!


俺の猟銃から出た弾がマモンの右目に直撃した。


勇者のスキル「必中」を使い打ち出した、これなら絶対に外さない。


卑怯だと思うがこの位しないとマモンには通じない、強者に挑むんだ…これ位は卑怯とは思わない。


「俺は目も固い、そんなの効かぬ、だが貴様…まだ、名乗りも済ます前に攻撃してくるとは卑怯者め…残酷に殺してやる!」


マモンが襲い掛かってきた。


俺は咄嗟に猟銃を前に構えて受けたが、その猟銃ごとマモンは俺の右手を掴み引き千切った


「もう、卑怯なその武器は無い!ただ、我に殺されるだけだな、俺は卑怯な奴が一番嫌いだ…いたぶって殺してやる楽に死ねると思うなよ!」


「マリア行くぞ! ぼさっとするな」


「了解、ホーリーサークル」


「ライトソード」


ガツッガキッ!


嘘だろう、両方とも弾かれた。


マモンは俺の頭を潰そうとしてきた。


俺は左手で腰の魔剣を抜いてマモンの角に振り落とした。


角は魔族の象徴であり、力の源だ。


これさえ奪えれば…


「わはははは、魔族の角がそんな簡単に折れると思ったか? お前如きの力で折れる訳など無いわ」


ガキィィィ――ン。


逆に手が痺れた。


「これでも折れないのか?」


確かにマモンの言う通りだ、魔族の角など聖剣でも使わなければ折れないのかも知れない。


こんな序盤じゃ!聖剣等手に入らないし使えない、折角の魔剣もマモンには効かない。


この剣はドワーフの村の長が鍛えた魔剣。


それが全く効かないなんて…



「俺の角は例えミスリルの剣でも通じない、俺の力の象徴を良くも、ねらってくれたもんだ」


「いい加減にしてくれるか….さっさとかかって来い」


もう、俺にはなすすべも無い、突っ込んできたマモンはいとも簡単に俺の左手を千切った。


俺の左手は魔剣ごと宙を舞っていた。


「両手が無いんじゃ何も出来ないな」


「いやぁぁぁぁ――ゼル」


「駄目だ、マリア逃げろ」


駄目だマリアが捕まった。


そして俺も逃げられない。


終わりだ。


◆◆◆



勇者ゼルの死と聖女マリアの死の噂が伝わってきた。


魔王四天王の一人「剛腕のマモン」相手に戦い殺された。


その死はすさまじく、ゼルは手足と頭を潰された状態で、マリアは顔半分が焼かれて、手足が引きちぎられた状態で、城壁に鎖で吊るされていたそうだ。











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