第5話 我慢の日々
次の日にはゼルの両親から私に村にいる間二人のお世話をする様に頼まれた。
あくまで頼みだが、実際は村長からの命令だ。
仕方ないか…私に家族が居ないから、誰も味方はいない。
大丈夫、もう気持ちは決まった。
2人が旅立つまで暫くの我慢だ。
直ぐに旅立つと思ったが、2人は直ぐに旅立たなかった。
数日後、2人の逢瀬も見てしまった。
もう、私にとってはどうでも良い事だけど…過去の記憶があるせいか、心が少し削られた気がした。
まぁ、これから先、2人は過酷な旅に出るんだから、暫くは我慢してあげるわ。
「しかし、勇者ゼル様はかっこ良いわね」
「勇者ゼル、僕も大きくなったらあんな風になるんだ」
勇者ゼルかぁ、勇者って人気があるのね。
「聖女マリア様、憧れるわね」
「本当、可愛くて更に聖女様なんて羨ましいわ」
本当の性格も知らないから、まぁ騙されるわね。
◆◆◆
「今日の朝は味噌汁とご飯と煮魚が良いわ」
「俺はサンドイッチが良い」
本当に思う存分こき使ってくれるわね。
「あのね…前世でも夫婦、この世界でもどうせ結婚するんだから、2人で暮せば呼んじゃない…マリアが家事をすればいいじゃない?」
「この世界じゃマリアと結婚なんてしないよ?」
「そうね、私もしないわ」
「どうして…」
「「それは勇者(聖女)だから!」」
話しを聞けば、魔王を討伐すれば良い縁談があるから、今度は違うパートナーを選ぶそうだ。
「そう…それは良いけど、どっちにしても私はいい加減解放してくれないかな?」
「え~こんな良い召使、こき使わなくちゃ損だよ」
「そうそう、前の時に取られた慰謝料分働いて貰うわ」
いや、慰謝料は殆ど払ってないわよね! 雀の涙以下。
それに原因は、あんた達が不倫したからでしょう…
此処は異世界、言えないのが辛いわね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます