第4話 ジョブ

そして成人の儀式の朝になったわ。


「俺達はどんなジョブになるのかな?」


「楽しみだね、だけど…シャルロット、まぁ裕子は間違いなくパッとしないジョブに間違いないわ」


「嘘でしょう…まさか、知っていたの?」


「馬鹿な奴、前の世界であれだけ関わっていたんだから癖位わかる」


「話し方で解ったわ」


「そう…それならなんで黙っていたの?」


「いや、黙ってこき使った方が面白いから」


「それに、名乗ったら、意地でもあんたの性格じゃ、食事作りや世話なんてしてくれないでしょう?」


嫌な奴だった…


前の世界は前の世界。


ここでは別人…そう割り切るつもりだったけど…出来そうもないわ。


だけど…私には何も出来ないわ…多分。




「どうしたの?ゼル、流石に緊張している?」


「流石に、これで一生が決まると思うとね」


「お互い良いジョブが欲しいね」


私の事を無視して、2人で話し始めた。


その方が良いわ…


本当に腹がたつわ…この二人があの私の好きな物語の主人公たち。


もう、あの物語を見ても私は感動しないわ。


寧ろ嫌いな物語になったわよ。


どうせ…勇者と聖女のジョブだよ…


私の順番が来た。


期待も何もして無かったけど、思ったよりは良く『学者』だった。


学者のジョブは個人的には良いジョブだけど、村としては特になるジョブじゃないから、まぁ嫌な目で見られているわ。


まぁこのジョブなら他で生きていけるから、速攻で村を捨てようかしら。



「なんで、そんな良いジョブ貰っているんだよ」


「村から出ていくつもり?」


「そうね、もう親もいないし出ていこうかしらね、此処でお別れだわ」


「ちっ、そうかよ」


「そう?それじゃお別れかな!良いジョブで良かったわね」


2人は面白く無さそうだ。


まぁ『学者』は当たりのジョブだからね。


いよいよ、2人の番だ。


私の時と同じように近隣からきた5人と一緒に2人が並ぶ。


神官様から紙を貰い神官の杖に合わせて祈りを捧げる。


すると、紙に自分のジョブが出てくる。


普通、それだけだが、私が読んだ本では2人の時は天使が降りて来た。


間違いであってほしい…そう思っていたわ。


やっぱり!この二人があの物語の主人公だった。


周りの人は嬉しさで興奮しているけど…私にとっては悪夢だ。


天使が降りてきて…真っすぐに二人の方に向かった。



天使は2人の前に手をだすと優しく二人を抱きしめた。


そして、暫くすると帰っていった。



「これは凄い、何とゼル、いやゼル様のジョブは勇者だ! そしてマリア様のジョブは聖女だ!」


「俺が勇者!」


「えっ聖女って」


2人は笑顔のなか、司祭や他の皆んなに囲まれていた。


嫌な顔でこちらを見つめていた気がするのは多分私の気のせいじゃないだろう。


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