禁断の赤い果実 2/3

 慣れた手つきで部屋を決めると、リンゴさんはさっさと部屋に入ってしまい、僕は早足でリンゴさんの後を追った。


 部屋に入ると「S社長から預かってる資料と前金ちょうだい」と言われた。


 リンゴさんにS社長から渡すように頼まれていた。封筒とお金を渡す。


 お金の金額は確か5万円だったと記憶している。


 それを財布にしまうとリンゴさんは何も言わず。封筒の中の書類を読み始めた。


 しばらくすると「ん~大体分かった。私ちょっとシャワー浴びてくるから、アカバネ君も資料に目を通しておいて」と言い残し。リンゴさんは浴室に入っていった。


 シャアアアアアアアアアアア……


 シャワーの水音が聞こえ始め。淫らな妄想が頭を過ぎる。


 いかんいかんこれは仕事だ。雑念をかき消すよう資料に目を通す。


 資料は履歴書のようなフォーマットに男性の顔写真が貼り付けてあり。名前(鈴木 一郎)。年齢(42歳)。家族構成(同じ年の奥さんと15歳の娘さんとの3人暮らし)。住所。勤務先。出身校。所属していた部活。趣味。好きな女性のタイプ(黒髪ショートで真面目そうな女性)等が書いてあった。


 とりわけ高校時代に野球をしていた事。3年生のとき県大会準決勝まですすんだ事。その試合で2打席連続ヒットを打った事。その事が自慢で酒に酔うと必ずその話をする事と詳細な内容が書いてあり。赤ペンで二重丸が付けてあった。


 「何だこれ?」と思いながら資料を読んでいると、後ろから「読み終わった?」と声がかかり、バスタオルを巻きつけただけの姿で、リンゴさんが浴室から出てきた。


 僕は必死に目をそらしながら「えーと、これなんでしょうか?」とたずねる。


 「あ~S社長から何も聞いてないんだ……これからそのおじさんを逆ナンして最終的にホテルまで行くから、アカバネ君にはおじさんの顔が分かるように写真を撮って欲しいの」

 

 「はぁ」かなりキナ臭い仕事だ。


 「まぁ詳しくは知らない方がいいよ。そのおじさんの弱みを握りたいヤバイ人が今回の依頼人」


 「わ、分かりました」触らぬ神に祟りなし……詳しく聞くのはやめておこう。


 「フフッまだ時間あるし、SEXしていく?」


 「せっSEXですか?」


 「フフフッ冗談冗談。じゃあ行こうか」


 ………………冗談かよ。


 …………冗談かよ。


 ホテルを出てすぐ。りんごさんは美容室に行き。髪を切り。髪を黒く染め。近くのデパートで、手頃なリクルートスーツを買って服を着替えた。


 ……ホテルを出てから3時間後。


 派手派手なお姉さんは、真面目で綺麗なお姉さんに変身した。


 髪の色。メイク。服装を変えただけで、まるで別人のように変ったリンゴさん「凄い綺麗です」とつい本音が出てしまった。


 「フフッありがと。それじゃ仕事にしましょう」


 そう言ったあと。パチリと僕にウインクするリンゴさん。


 僕のハートは……完全に撃ち抜かれてしまった。


 …………


 僕達は、資料の中に書いてあった。


 ターゲットが仕事帰りによく立ち寄る居酒屋の近くに車を停め。ターゲットが来るのを待った。


 監視を始めてから一時間が経過。


 時計の針が22時を回った。


 もう今日は来ないかもなぁと思っていると「アカバネ君。来た」リンゴさんの鋭い声。


 店の入り口を見ると、資料にあった顔写真の男が立っていた。

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