禁断の赤い果実
アカバネ
禁断の赤い果実 1/3
今から十年以上前の話。
その当時僕は『何でも屋』で働いていた。
『何でも屋』って何?と思われた方も多いと思うが、その名の通りお金さえ貰えれば、なんでもやりますといったグレーな会社だった。
毎日いろいろな仕事が入って来た。
・庭の草むしりをしてほしい。
・犬の散歩をしてほしい。
・1人で淋しいので、話し相手になって欲しい。
・1週間前に放送されたドラマを見損ねたので、録画したテープを探してほしい。
と様々だ。
他に面白い依頼だと、万引きで捕まった女子高生からの依頼で『親のふりをして一緒にお店で謝ってほしい』というものがあった。
そのとき手が空いているのが、僕しかいなかったため。
女子高生の兄という設定で、お店に謝りに行った。
…………
とにかく『何でも屋』は、怪しい会社だった。
事務所は世田谷にある普通のマンションの一室で、ドアにもポストにも社名は貼っておらず。
事務所に呼ばれるときは、他の社員と時間をずらして呼ばれるため。どんな人がいるのか。何人くらい働いているのか。何も分からないまま僕は働いていた。
その時は、何故そんな事をする必要があるのか分からなかったが、今考えてみればおそらく。顔を合わせた社員同士が徒党を組んで、待遇改善や給料UPを訴えて来るのを防ぐための処置だったのではないかと思う。
そして、あの仕事が入って来た……。
…………
『ピピピ ピピピ』
留守電を知らせる通知アラームが鳴った。
「アカバネ君。今日の13時に事務所に来て」S社長から留守番が入っていた。
13時ちょうどに事務所に到着。
「重要な仕事をアカバネ君にお願いしたいんだけど」と神妙な面持ちのS社長。
「はい、何でしょう」
「詳しくは言えないんだけど、アカバネ君にはある人の運転手件、カメラマンをお願いしたいんだ」
『胡散臭なぁ』と思ったが、日々の寝不足で頭が回っておらず。
よく考えないまま「分かりました」と返事をしてしまった。
それから1時間ほど。一眼レフカメラの使い方。ボールペン型の隠しカメラの使い方。相手にばれにくい尾行の仕方。をS社長からレクチャーされた。
一通りの説明が終わった後「この仕事の事は、絶対に他言無用だからね」とS社長から念押しされる。
「……分かりました」
会社にハイエースを置き、社長のベンツに乗り換え指定の場所に向かう。
これから仕事を共にする。ある人の注文で『ベンツと若い男の運転手』の指定があったらしく。
その時『何でも屋』で一番若かった僕が『若い男の運転手』に選ばれたようだった。
会社を出る時「くれぐれもあの人の機嫌を損ねないようにね。成功報酬50万円の仕事だからね。丁寧に丁寧にね」とS社長が言っていた。
成功報酬50万円といっても、それは会社に入るお金であって、僕の懐に入るお金ではない……。
…………
ある人の指定場所。新宿アルタ近くにある雑居ビルに到着。
ある人の注文には『ベンツと若い男の運転手』の他にも続きがあり『運転手の服装は黒いスーツ。黒いネクタイ。黒いサングラスで来る事』の追加注文があり、僕はカイジに出てくる黒服のような格好をして、ある人の事を待っていた。
現場に到着してから30分ほどたった頃「あなたがアカバネ君」と突然背後から声をかけらた。
驚いて振り返ると、金髪に真っ赤なルージュ。身体の線がハッキリと分かるタイトな赤い服を着た。派手派手なお姉さんが立ってた。
「S社長からきいてるよ〜私リンゴよろしくね」
「よろしくお願いします。アカバネです」
「とりあえず、聞かれたくない話もあるから。ラブホ……行こうか」
「ラ、ラブホですか?」
…………
僕達は出会って1分で、ラブホテルへ行く事になった……。
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