第一章:快適な拠点作り〜新たな問題〜

「まこちゃん本当にごめん。ね?」


 あれから何とか女性を撒き、俺達は夕食にありついていた。姉が配信中に俺の名前を出し、あまつさえコラボをするなんて法螺を吹いたことに対して謝ってくるが無視だ無視。この程度の謝罪で許したら調子に乗るのは分かりきっている。


「麗華、流石に今回は擁護出来ないよ。無関係の誠を巻き込むことは無かっただろ? 大体誠はライバーですらないんだから」


 兄の言葉に姉が「うっ」と呻く。そうだもっと言ってやれ。


 大体俺は探索者ですらないからな。ただのニートだ。ニート。


 それをDANLIVE公式のトップページに出てくるくらい大手のチャンネルとコラボとか、普通にないだろう。


 これが配信外の諍いの中で出たのならまだしも、絶賛配信中の出来事と来た。なんで配信していたのかは謎だが、いい迷惑である。


「ごめん……考えなしだった」


 しゅんと落ち込む姉は本当に反省しているように見える。だが相当きつく言わないと激情家な姉はまた同じ過ちを繰り返す。悪気はないのが質が悪い。


 そんな姉でも実力はトップクラスらしい。自信家でもあるが弱きを助け強きを挫くその姿に憧れる人は多いと聞く。どうやらあのファンチの女性もそんな姉に助けられ、憧れた口らしい。困った話だ。


 それはともかく。問題は俺の名前を配信で出したことだ。きっと今頃SNSでは誠は誰だ!? と大騒ぎになっていることだろう。鬱過ぎる。正体はただのニートなので放っておいてくれ。頼む。


 俺の爽やかニートライフを再開させるにはこの問題をとっとと解決しなければならない。これが赤の他人であれば無視一択だが相手は家族。やり方は問題しかないが助けるしかないだろう。困った姉だが何度も助けられてきたのも事実。持ちつ持たれつって奴だ。


 幸い、今進めているベッド制作も後はスライムゼリーを木枠に流し込み、その上から皮を貼り付ければ完成だ。仕事は辞めたし時間はたっぷりある。


「それで? コラボの内容とか決めてるのか?」


 残った白米を口に放りながら二人を見る。しょげている姉はその言葉に顔色を明るくさせた。言っておくが許した訳じゃないぞ。


「今までコラボなんてしたことないから、思いつかないなぁ」


 兄は困ったように眉を下げ、姉は難しそうな顔をしている。が、姉のことだ。何も考えてはいないだろう。


「普段は何してんの?」


「うーん、普段は各階層のお役立ち情報とか、緊急時の対処法とか、あとたまにダンジョンで取れた肉の料理とか……?」


 どうやら行き当たりばったりらしい。よくそんなんでトップライバーなんてやってこれたな。


 そう言うと「なんかやってたら何時の間にか?」と兄の声。緩すぎやしませんか? これが天才ってやつか……。


 だがしかし。なにかに特化した配信ではないのであれば一つだけ良いものがある。


「ピクニックでもするか」


 そう、ピクニックである。ここを見つけるまでずーっっっとダンジョンに潜り続けていた俺は数か所、人気のない景色の綺麗な場所を発見していたのだ。


 辛くて辛くてどうしようもなかった時はその景色を眺めて心を癒やしたものだ。


 ここからなら中層のあそこかな、と当たりを付けた俺はハテナマークを飛ばしている二人を見て口を開いた。

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