第一章:快適な拠点作り~モンスターハウス~
上層のモンスターハウスに近づくにつれ人が少なくなって行く。モンスターハウスの目の前まで来ると俺一人になった。
そこはぽっかりと空間ができている。目算で言うと野球場くらいか。結構大きい。その中に数えるのも馬鹿らしくなりそうな水色の物体が自由気ままに跳ねたり転がったりしていた。
スライムは見た目は可愛らしい。動きも平時はのったりとしていてどんくさい猫を彷彿とさせる。が、モンスターはモンスター。人間を見るやいなや襲いかかってくる。
因みにダンジョンに生息しているモンスターは人間にしか反応しない。昔馬鹿な奴が「俺の愛犬を強くするんだ!」みたいなことを行って犬と一緒にダンジョンに入ったがその犬に見向きもせず人間の方に襲いかかったそうだ。人間は呆気なく死に、残った犬は行方知れずだ。
それが分かったのはそいつが配信をしていて、一部始終がネットに上がっているからだ。その動画は「動物をなんだと思ってるの!?」と酷く批判されていた。俺も見たけど犬の扱いが酷すぎて胸糞悪かったのを覚えている。
そんなことを思い出しつつ、もう一度中を見る。すると高校時代の思い出が蘇ってきた。
「懐かしいなぁ」
探索者になってすぐ、友人と3人で意気込んでいた時に先輩探索者の忠告を無視してこの中に入ったことがある。
その時は本当に大変だった。上層のスライムだから死ぬことはなかったが体中アザだらけになり、泣きながら帰ったのだ。
道中の探索者には笑われるし、指導してくれた先輩には呆れられるしでいい思い出はない。まぁ、今となっては笑い話だが。
「ま、もうあの頃の俺じゃないし一人でも大丈夫だけど」
半場自分に言い聞かせるように呟く。あれ以来このモンスターハウスに入るのは初めてだ。下層のモンスターハウスにだって一人で入って余裕だったんだから大丈夫ダイジョブ。
変に緊張した体をほぐし中に入る。すると中で自由に跳ね回っていたスライムが一斉にこちらを見た。
モンスターハウスのモンスターはここから出ることはない。しかし人間が一歩でも入ると一斉に襲いかかってくるのだ。最弱スライムとはいえ初見は肝を冷やした。
「あの頃の俺と同じだと思うなよ!」
即座にブレスレッドを起動させ糸を動かす。襲いかかってくるスライムのちょうど真ん中あたりに糸を貫通させればスライムのコアを貫く感覚が。
下層になるにつれスライムは核を移動させ特定させないようになるが、ここは上層。そんなことするスライムは居ない。
そんな様子を見て体の力が抜ける。なんだかんだ言いつつあの時の出来事がトラウマになっていたらしい。ま、これでもう大丈夫だろう。
糸を一本、二本と増やしていき文字通り蹂躙していく。たまに自ら糸に刺さりに行くやつも居て実に楽だ。
「うん、やっぱりブレスレッド強すぎな」
ブレスレッドが強くなるまで愛用していたショートソードも一応持って入るが出番はなさそうだ。減ってきたスライムを見ながらスライムゼリーの回収を始める。
これが終わったら次はフロッギーの皮集めだ。午前は時間が掛かったがあともう少し。持ってるよ俺のベッド!!
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