第一章~快適な拠点作り~
ギルド受付へ
ダンジョンの中に入るとオフィスビルと錯覚するような内装が姿を現す。奥には賞金首になっているモンスターや人の情報、品薄で高価買取中のモンスターの素材まで多種多様な情報が載っている。そこに剣を腰に下げた少年と盾を担いでいる少年が何やら相談をしていた。
「なぁ、これとかどうよ? 普段の倍の値段するらしいぜ?」
「やめとけやめとけ。この前ミーティアが怪我して今いないだろ? 俺たち2人じゃやられて戻ってくるか、そのまま食われちまうのが落ちだ。大体見てみろ、出現エリアが深層じゃねぇか。深層なんてミーティアが居たって無理だ」
話している内容から察するに、彼らは複数での討伐推奨対象か、自分より上のランクのモンスターを討伐するか相談しており、リーダー役が止めているようだ。
彼が先ほど言っていた深層、と言うのはダンジョンの深さの目安だ。
上層・中層・下層の順で深く、深層、深淵ともなると上級探索者以外潜れば死ぬ。
同じモンスターでも上層と深淵では固さもスピードも、攻撃力すら違うのだ。調子に乗った探索者が己が死んだ事すら気づかずに殺される、というのは笑い話ではない。
深層が無理って事は普段は下層か中層をうろうろしてるレベルか。そうなるとランクはD~Cくらいだろうか。装備もそんなに使い込まれた感じもしないし、ビギナーさんかな? だったらもっとランクも低い可能性があるか。
ビギナーでも少し慣れてきた頃が一番危ない。出来れば身の丈に合った場所で狩りをして欲しいものだ。
一応ギルドで規制はして居るものの、行くやつは行く。そして止める術もない。止める義務があるのはギルド職員だけだ。たまに善意で止める奴もいるが……その忠告をどれほどの人間が聞いているのか。焼け石に水だと思てしまうのは俺だけだろうか。
「ギルドへようこそ」
どうするのだろう、と2人を横目で見ながら俺は手前のカウンターの女性にドッグタグを見せる。
「はい、お預かり致します」
そう言って受付は丸い水晶にドッグタグを当てると、水晶は青白い光を帯びた。
「秋原誠さん。あら、A級なんですね。今回はソロでの探索になりますか?」
「はい、泊りがけで探索しようかと思っています」
俺の言葉に笑って頷いた受付の女性は「畏まりました」と言ったのち再び口を開く。
「ただ、ソロですと深淵に近くの下層へは行かないことをお勧めします。現在深淵では大規模な変革が行われており、下層にも深淵で出現するモンスターが報告されてますので」
心配そうな女性に思わず「大変革ですか?」と聞き返してしまった。
大変革とはその層の構造が大きく変わる事だ。構造だけではない。出現する魔物の種類や強さまで変わってしまうことだってある。
大変革後に平原が沼地に変わり魔物の種類が一新された、なんてこともある。
「はい。つい先日、A級探索者のパーティの方々が大変革の兆候をを発見し、急いでギルドまで報告に来てくださったんです。
すぐに編成された調査隊からも同じことが報告されてますので……」
まぁ、俺が行く場所は深層どころか中層ですらない。暫くはのんびりするつもりだし特に問題ない。
にこりと微笑んで「近づかないようにしますね」と人当たり良く言うとドッグタグを返して貰い、歩きだした。
受付を済ませている間に2人の意見が纏まったらしく、上層のスワンプ・フロッギーにしたらしい。フロッギーは遠距離攻撃役がいないと結構面倒くさいが大丈夫だろうか? ま、見かけたら助けてやるくらいに心に留めておけばいいだろう。
俺はそうして2人を意識外にし、目的地へと急いだ。
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