第18話秘密のうちあけ

俺たちは、神楽さんの赤い車目指して進んだ。


途中ゾンビに会うかなと思っていたが、杞憂だった。

神楽さんがもちろん運転。

ふぅと皆が一息ついた。

望ちゃんが助手席に乗り、俺と朱莉ちゃんは、後部座席に乗った。


エンジン音が鳴る。すると、遠くの数名のゾンビが、やはりこちらを振り向いた。


だがあいつらは問題じゃない。問題はマンション出口だ。たむろしているはず。


ここで車で強行突破するのは…あまりに無謀過ぎる。ゾンビの群れに閉じ込められたり、そうでなくても血痕が付着し過ぎると、感染する恐れもある。


まぁそれは、空気感染しないことから見ても、少し経てば大丈夫だろうが。


「ねぇ、どうする? 都丸さん。ごめんね頼りにしてばかりで。」


神楽さんが後ろを振り返り、俺を見つめ質問した。救いを求めるその熱い眼差しに、俺は頷いて、返答した。


もちろん、そこもしっかりと考えている。と…言うより答えは簡単だ。

俺のスキル、アイテムBOXを使えば簡単に出口をどんな場所でも作れるからだ。


コンクリートの壁であろうと、アイテムBOXに入れてしまえば、BOXの中に消えるからだ。 


そうすると新しい問題が出てくる。神楽さんと、望ちゃんが俺が消す場面を見る。そうしたら、スキルの事もバレるだろう。


やはりここは、2人に内緒のままは無理だろう。それにスキルを俺だけが使える訳じゃないことが分かった。

なら伝えておいたほうが後々2人の安全の為には、有利になるはず。


ただセーブ&ロードのことは、まだ伝えない。あまり過度に頼られても、困る。


2人にスキルの事を説明をした。その力を使えば、楽にここを脱出が出来ると、真夏の車の中で汗を拭いながら伝えた。


蒸し風呂みたいだ。一応神楽さんがエアコンを入れてくれたが、それでもすぐには、涼しくならない。


「神楽さん、望ちゃん…これから話す事は、全て真実なんだ。俺の言う事を疑問に思わず、信じてくれる?」


そう俺が伝えると、2人は、首を傾げた。朱莉ちゃんは、目をつむっている。


「それは、もちろん。」 

神楽さんが親指を立てて、返事をした。


「そーだよ。都丸さん。私たち大事な仲間だよ?

疑う訳ないじゃん。ちゃんと信じるから、安心して。」

望ちゃんがウインクして言う。


「ありがとう、2人とも…俺には、特別な力があるんだ。今まで黙っててごめん。」


驚きの表情を浮かべて、2人が真剣な表情で、俺の話しに聞き入ってる。


「ゾンビを倒していくと使えるスキルが増える。

けど、俺は今時点では、一個しか使えない。そのスキルで、安全に脱出出来るんだ。」


俺が説明すると、神楽さんが質問をしてきた。


「どうして今になって? 望も知らなかったのよね?」


「うん、初めて聞くよ。」


「それは、スキルが使える人が他にもいることが分かったからなんだ。他にも理由はあるんだけどね…とにかく…その能力アイテムBOXで、コンクリートの壁をBOXに入れることが可能なんだ。だから、車で安全なところで停めて貰えれば、簡単に脱出出来る」


俺は朱莉ちゃんを一瞬見た。何か文句を言われるかもと案じたからだ。でも彼女は、ずっと目をつぶっている。そんなことは気にしないふうに見えた。


「もう、隠し事はなしだからね?」

望ちゃんが釘をさす。


それを聞いて気まずさを感じた。頷いたけれど実はまだ、隠してます。ごめんなさいと心で、何度も謝った。


「そう…分かったわ。その能力ってやつ、見せてもらおうじゃない。」

神楽さんが前を見据え、車を発進させた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る