第9話ゾンビ疑惑

俺はあの痛みを味わうと思うと躊躇した。

けど、このまま死んでゾンビになったら、あの親子は? そう考えると、ロードする以外の選択肢はなかった。


はいを押して戻ってきた。


しかし…何故ゾンビに襲われた? もちろん俺が男だから、最初に襲われたのだろうが、ゾンビは、この部屋の何処にもいないはずなのに。



安全なはずの場所にゾンビが現れた。どうやって侵入したのか? ゾンビがまだ、何処かに潜んでいる…俺は、神楽さん親子にまだゾンビが隠れているかもしれないと伝え、隈なく探した。



何処にもいない…待てよ。寝室のドアは閉まっていた。つまり寝室に潜んで…そこで寝室を徹底的に調べた。


いない…俺はある考えが浮かび、スマホを手にした。


検索ゾンビに噛まれた発症時間



ゾンビが現れて、まだそんな経ってないから、ゾンビに噛まれてた、発症時間気になる。いつゾンビになるのかな?




ゾンビに噛まれた時の発症時間不明。


まだ分かってないか。


検索潜伏期間



潜伏期間どのくらいなもんか? そのうち分かるだろうね。


その時、スマホのチャットが来た。晴香からだ。前回と同じ様なやり取りをした。


…まだゾンビに噛まれていつなるかは、不明か。




部屋にゾンビがいた…考えられるのは…俺を除く4人の中で、誰かが、ゾンビに噛まれている。


それしか考えられない。もちろん新種のドアを開けれるゾンビでも現れたのなら…4人のうち誰もゾンビにならないのは良いが、新たな危機になる。



仲間の中にゾンビがいる! いや正しくは、噛まれた人がいる…か。仲間? 俺に仲間か。神楽さん以外は、仲間になった覚えはないが。



その神楽さんがゾンビに噛まれていた可能性…嫌だな…そう思うと涙が目に浮かんだ。



だけど、その可能性はかなり低いと、思った。


良く考えたら、彼女は、薄着だ。半袖のTシャツにショートパンツ。よく見てないけど、噛まれた痕は、なかった気がする。


女の子も、同じ格好だ。夏だから当然と言えば当然。


と言う事は…神楽さんのお母さんか、男の子の方どちらかが、噛まれている。



2人とも、夏なのに、長袖だ。オシャレで着ることもあるが…どっちだろうか? まさか両方だったりして…駄目だ悪い方に考える癖がある。


引き篭もり経験が長いからな。いや、イジメられたせいだ。


神楽さんのお母さんは、スカートだったな。長袖…妙だ。


男の子は、デリケートな部分があるから、後回しだ。まずは、神楽さんのお母さんのゾンビ疑惑を…晴らす。


自分で疑っておいて、疑惑を晴らすなんて、悲しくて、つらくて、申し訳なさが、負担になる。


俺は、神楽さんのお母さんに事情を説明して、腕を見せてもらう事にした。


「申し訳ないです。自分の親がゾンビにやられたので、一応確認したくて。」

俺は目を伏せて言う。


「気にしないで、長袖着てるからね。夫がゾンビになって逃げたのが朝方だったから、長袖なんだけど、夏でこれじゃ、不自然よね。」


お母さんが、そう言ってフォローしてくれた。


お母さんが長袖を脱いだ。何も脱がなくても、と俺は思ったが…まず目についたのは、彼女のブラジャーだった。大きい。こんな時に不謹慎だけど…つい目がいってしまった。


引き込まれる様に胸を見てしまったが、俺は、はっとして、彼女の両手を見た。

良かった…噛まれた痕はない。


神楽さんのお母さんの疑いは、晴れた。

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