第7話都丸政樹の苦悩

「ゾンビ倒せたね。」神楽さんがそう口にした。


「うん、なんか、部屋に誰か居るっぽいんだよね。確認しよう。」

居るのは、ロードしたので、分かりきっていた。


それにしても…セーブ機能が制限かかると、どこでセーブするか、かなり悩むな。

今しても良いが…神楽さんの親子の、感動の対面が終わってからにするか。


「誰か居ますか? 部屋の中のゾンビは、ぜんぶ私達で、退治しました。」神楽さんが告げた。


その時、タンスが開いた。


「望?」そう一言発して、神楽さんのお母さんが出てきた。


「お母さ…ん? お母さん! 無事だったんだ。」神楽さんが涙を流して、お母さんに抱きついた。


「うん、望…心配かけてごめん。お母さんね、一階まで様子見に行ったんだけど、一階ゾンビが沢山いて、引き返そうかと思ったら、悲鳴が聞こえて。」



「それで、その悲鳴が2階の奥の部屋から、聞こえて、それでノックしたら、ここの子供さんが、開けてくれたんだけど。」



「青ざめた顔してたから、行ってみたら、お父さんが、ゾンビになって、お母さんも噛まれて、ゾンビになりかけてて。」


「それで外に逃げようと思ったら、ゾンビに追いかけられて、結果、タンスに入って、救助を子供達と待っていたのだけれど。」



そう神楽さんのお母さんが丁寧に説明してくれた。と言うことは…俺たちが倒したゾンビは…子供達の親…か。


子供達の親を…ゾンビとは言え、倒した罪悪感が襲ってきて、俺は子供達を見た。


疲れ切った表情をしていた。


俺の親もゾンビになって…もし、2人を倒していたら、チュートリアルが終わりセーブ機能が制限されていた。



そう思うと、親をやらなくて良かったと思うと同時に、他の人を襲って、人を襲うと言う罪を、背負わせる事にならないかと、色々思案してしまう。


昨日までは、引き篭もりで、そんな事全く考えずに生きてきたのに…俺も変わったな。


いや…変わって当然だろ。だって俺は、ロード出来るが、他の人は、死が隣り合わせだ。


そんな状況で、変わらない訳がない。頭で考えながら、疲労感が突如として押し寄せる。



「お母さんが無事で良かった。本当に良かった。私…お母さんが、ゾンビになってたらどうしようって、怖くて怖くて。」



「でも、そんな時、都丸さんが助けてくれたの。」

神楽さんが、お母さんに俺を紹介した。



「それは…本当にありがとう。望も、彼氏さんが側にいてくれて、助かったと思います。」

神楽さんのお母さんが、勘違いして言った。



「お母さん! 彼氏じゃないよ、ついさっき会った人だけど、その… ねぇ、都丸さん。」神楽さんが俺に話を振った。


俺は晴香って言う好きな人がいる。

なので、さすがに誤解は、解いておいた方が良いだろう。


「ええ、彼氏ではなくて、友達と言うか、共にゾンビと戦った戦友ですかね。」

俺は神楽さんのお母さんに説明した。


そうだ。晴香を助けなければ。今日はもう、疲労感が凄いから、明日だな。


「そうだったの? 誤解しちゃてすみません。」お母さんが謝った。



「いえ、大丈夫です。それより、これからどうしますか? マンションに籠城した方が安全では、あるけど、ただ食料が枯渇したら、アウトですけど。」

俺は2人に質問した。


「そうね。とりあえず疲れ果てたから、今日は、ここで寝泊まりするわ。」

お母さんが、疲れた表情で言う。


「それは俺も賛成です。」


「私も今日は、ここでお母さんと休む。」神楽さんも、賛成の様だ。


12時半か、ここで一旦セーブだ。これで、24時間、セーブ出来なくなるが…またゾンビと戦うのは、嫌だった為そうした。


それから俺は、ゾンビのこと、自分のスキルのことを、ネットで調べてみた。

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