第3話 旅立ち
買い物を無事に済ませた僕は次に村のみんなに挨拶回りへ向かった。
仲良くしてくれた友達やその親、困った時に助けてくれた人達とか挨拶しなければいけない人がいっぱいだ。
少しの人は僕が冒険に出るって決めて応援してくれたけど、大体の人は僕を止めようとしてきた。
当たり前だ。僕が危険なことをしようとしているのだから、自分の子供ではないとはいえ心配なのだろう。
勿論冒険には僕が想像も出来ないような危険な事がいっぱいでもしかしたらひょんな事で死んでしまうかもしれないしね。
さ、ここで最後だ。
ここは1番仲が良かったアレックスの親が住んでいる家。そこでよくおやつの干し肉やお茶を入れてくれた思い出なんかがある。そういえば食べられる草なんて変わった事も教わったなぁ。
「こんにちわ。おじさん、おばさん。いますか?」
「やあスミス。今日はどうしたんだい?取り敢えず中に入る?」
「いえ、今日はお別れの挨拶に来ました。実は今回の行商人さんから人工疑核3級を買ったんです!それで僕の夢でもあった冒険者になろうかなって思いました」
「あぁ...。君も行ってしまうのかい?思い直さないかい?実はアレックスも同じことを言っていてね。さっき同じように挨拶回りに行ったんだよ。そろそろ帰って来る頃じゃないかな」
やっぱりアレックスも冒険に出るんだ...。
バンッ!
そう思った時、勢いよく扉を開け中に入ってくる人物が。
「ただいま!...おっ、やっぱここにいたか!どうせ挨拶回りしたら最後はここに寄るんだろうなって思ってたぜ」
「アレックス!やっぱり君も旅に出るんだね!」
「おう、昔一緒に冒険するって約束したからな!」
そう言ったアレックスの方は大分急いで回ったようで息が切れていた。
倉庫に行って武器とお金を貰った僕より帰ってくるのが遅いってことは、少し僕より遅く挨拶回りに向かったようだ。
「アレックス、覚えていたんだ。嬉しいよ。それにしてもかっこいい革鎧つけてるね!君も防具とか貰ったの?」
「ん?おう、いいだろ?俺が前に狩ったリザードの皮を舐めして作ってくれてたんだよ!かっこいいだろ?」
リザードというのは緑色の大きいトカゲで大きいもので全長大体1m半程にもなる怖い魔獣だ。
ちょっと前にアレックスの家に遊びに行った時家の倉庫に連れていかれてでっかいフックで吊るされているのを自慢されたことがあったんだ。
あの時のアレックスの顔ときたら。めちゃくちゃ得意げで鼻の下が伸びていたから凄くイラッとしたよ。
きっとその時の鎧で作ったんだろう、急所や関節を守るような簡易的な鎧になっており、その下には普段と変わらない白い上着に茶色のズボンを履いていた。
「うん、凄くかっこいいね!君の真っ赤な髪に緑の鎧、すっごい似合ってるよ!」
「そうだろ?へへ...。そんな褒められると照れるぜ...。あ、て言うかもう挨拶回りお前も終わったんだろ?早く旅に出ようぜ?もう待てねぇよ!」
「そうだね、そうしようか。じゃあおじさん、おばさん!行ってきます!」
「行ってらっしゃい。いつでも帰ってくるんだよ?死んだら許さないからね?」
「有名になって帰っきな、未来の英雄共!ハッハッハ!」
そうして色んな人達の声援を貰いながら僕たち2人はリュックにパンパンに荷物と未来への希望を詰め込み、村の門から小さく手を振りながらそそくさとと出ていったのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
...退屈だ。非常に退屈だ。
村を出てもう1時間ほど経ったと思う。それまでの道中魔獣どころか凶暴な野生の獣すらいないじゃないか!
僕はもっとこう...、魔獣をバッタバッタとなぎ倒しながら進むことを想像していたんだけど。
「...ねえ、アレックス。今まで全然村の外に出なかったから分からなかったんだけど、案外魔獣には襲われないだね」
「まあな。もう通り過ぎちまったが、まだ村の連中と狩りをしていた範囲内だったからな。危険な魔獣とか野生動物は出てこないのさ。だけどスミス、ここからは気をつけておけよ?もうその狩りをしていた範囲内からは抜け出したんだ。いつ魔獣共が襲ってくるかわからんからな。獣の鳴き声、草のスれる動き、殺気を含んだような視線には注意しておけ」
「う、うん。分かった」
そう言ってすぐまたアレックスは黙り込んで周りをあちこち見渡したり、耳に手を当てて音を聞いたりと真剣な様子で警戒し始めた。
それに習って僕も同じようにしてみる。
ムムムッ。
...なぁんにも聞こえないや。せいぜいが無視のなく音くらい?
それにしてもさっきを含んだような視線ってなんだったんだろうね。あんまり想像つかないや。
...ガサガサッ
「う、うおぁぁぁ!出たァ!」
「落ち着けスミス、ありゃただの風だ。危険なものじゃねぇ」
「アレックスはよくそんなに落ち着いてられるね?僕もう怖くなっちゃったんだけど」
「まあ俺は昔から親父の狩り着いてって警戒の仕方とか学んできてるからな。慣れてるだけだ」
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