第2話 宇宙人とはなんぞや?
宇宙人。
何を根拠にそんなことを言っているのかって?そんなものはない。ただ、彼女が宇宙人であることに違和感がなかったからだ。それほど僕にとって、彼女は不思議であった。
「やっぱり、まだ高校生には慣れないな」
「……そうですか」
「まぁ、あと半年の付き合いだし。せっかくの青春を楽しまないとね」
彼女いわく、元いた星に帰るらしく
「私はそろそろ帰るわ」
「では、また」
由奈さんはくるりと回って、ロングヘアをたなびかせて図書室を出た。
自身が宇宙人であることを告白した日。それは僕が初めてこの高校の図書室に来た日でもあった。その時も、由奈さんは突然現れた。
「久しぶり」
「…川田先輩ですか」
「覚えててくれたんだ」
「そりゃ、近所ですし」
時々見かけていたが、話すのは久しぶりである。雰囲気も少し大人びていて思わずドキッとした。
「先輩とこうやって話すのは久しぶりですね」
「君も高校生デビューおめでとう」
「あ、ありがとうございます」
透き通るような肌に、つぶらな瞳。彼女を見ているだけで、無意識に体の力が抜けてしまう。
「先輩はどうして図書室に?」
「んー。暇だから、かな?」
そんなことに答えがいるの?とでも言いたげな顔をしている。実際、物事に理由なんて探す必要はないさ。
「君は、私が宇宙人だと言ったら信じるかい?」
「……はい?」
「もし、川田由奈が宇宙人であることを告白したら君は信じるのかと聞いている」
「そ、そりゃ。信じ………ます」
「なるほど。君の中にある私の像がよく分かったよ」
「ちょっと、変なこと言わないでくださいよ」
僕はからかわれているのか?それとも本当に川田由奈は宇宙人なのか?現実的には前者だろう。しかし、川田先輩はからかうような性格でもないし、宇宙人と言われても妙に納得してしまう自分がいる。
「君にだけ、特別に教えてあげる。川田由奈は宇宙人よ。これを証明することもできないし、嘘だと言いきることも出来ない」
「宇宙人ならなにか超能力とか使えないんですか?」
僕ながら変な質問である。ただ、気になった。それだけだ。
「目、閉じてみて」
「………」
僕は黙って目を閉じる。
近づいているのか、前方に熱を感じる。自身の心臓の音がはやくなり、マズイと思い必死に目を開けようとするが……。
───体が、動かない。
金縛りにあったように、何も行動ができなかった。恐らくもう目と鼻の先には先輩の顔がある。次の瞬間、急激に金縛りからとけ、目を開けると同時に僕たちはキスをしていた。
頭の中で情報が処理できない。目の前の圧倒的美貌と、周りに漂うフローラルの匂い。どうにかしようと考えるが、それすらもバカバカしく思えてくる。ずっとこのままでいたい。まるで無重力状態にいるかのような、安心感をもたらしている。何秒くらいこのままでいたのか、永遠にも思えるような時間は、すぐに終わってしまう。
「私のこと、好きになっちゃったでしょ」
何も声がでない。
でも、これだけは分かる。僕は川田由奈に恋をした。恐らく、前から好きだったのだけれど。そんなこと気にしてられないくらい、彼女の愛に溺れてしまった。
「これで、私が宇宙人だって証明できたかな?」
「……それは違いますよ。ただ、、宇宙人よりも変な人だとは分かりました」
彼女は嬉しいそうに笑っている。天使なのか、悪魔なのか。僕にはなんとも言えない。彼女が宇宙人と自称するなら、それもそれでいいのではないか。その時の僕にはそこまで考えるほど頭が働かなかった。
そして、現在に戻り。
僕と宇宙人との恋は急発進する。
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