第二十八話 怪しい場所見っけ

 さっき潰したアジトの方に戻った俺は、良さげな金品を探しながら、アジトを漁りまくる。


「ん~……お、やっぱりあった」


 死屍累々とした現場で、俺は嫌そうに頬を引きつらせながらも、転がっている奴らの懐やポケットに手を伸ばした。

 すると、案の定ちゃんと金を持っててくれた。

 ここに居る10人から、合わせて26万セル。

 悪くない金額だ。装備を買う足しにでもしよう。

 いや、折角なら高級宿に泊まるのも悪くないかも。

 高級宿なら警備も厳重だろうから、荷物について一々心配する手間が省ける。


「こういう所に……うん。あるね、隠し部屋」


 壁中を絶妙にぶっ壊していった俺は、隠し金庫的なやつを見つけることに成功した。

 中には金銀財宝た~くさん……と言う程でも無いが、まあ目を見開く程度にはあった。


「……といっても、かさ張る物は持ってけないしなぁ」


 そう言って、俺は銅貨銀貨を次々と放り込んでいく。

 硬貨も数が増えればかさ張るし、どこかで金貨や小金貨に両替して貰えないかなぁ……

 もしくは、銀行的なやつ。

 そんなことを思いながら、その後も時間が許す限り探索を続け、最終的には68万セルが俺の懐に入った。


「や~満足満足。あ、これ処分しとくの忘れてたな」


 そう言って、俺は違法薬物の山に火をつけて、ファイアーした。

 基本的にアジトは石造りだし、酸素の供給もままならないから、変な所に燃え広がる前に、自然鎮火するだろう。

 そんなことを思いながら、俺は壊滅したアジトの外に出た。


「よし。それじゃ、本題に入るか~」


 ここのアジトのボスから聞いた、特大の爆弾案件をさっさと片付けるべく、俺は早急にスラム街北東へと向かうのであった。


「ん……と言っても、どこにあるんだろうね。アジト」


 範囲は大分絞れているが、それでもアジトを作れそうな場所がここには多すぎる。

 ここは、手っ取り早く有識者に話を聞くのが一番だろうか。

 そう思った俺は、スラム街に居る人の中から、比較的大丈夫そうな人に声を掛ける。


「おい。ここら辺に、ゼライゼ帝国の連中の隠れ家は無いか?」


 下手に出たら、足元を見られかねないと思った俺は、やや威圧感のある雰囲気を醸し出しながら問いかけてみた。

 右手で、銀貨を弄びながら。


「は、はい。少し前に、ゼライゼ帝国という言葉をここら辺で耳にしました。アジトがどこにあるかは分からんけど、あっちにある、3階建ての元商会跡地じゃないっすかねぇ。皆、不穏がって寄り付かないんですよ」


 おお、早速情報ゲット。

 真偽は不明だが、アテがあるのと無いのとじゃ、大違いだからな。

 俺は右手で弄んでいた1枚の銀貨を、そっと彼の掌に握らせてあげる。

 すると、彼は喜びを露わにしながら、颯爽と去って行った。


「さて、行ってみますか」


 そう言って、俺は《幻術》で再び姿音気配を消すと、教えてもらった場所に向かって走り出した。


「ん~……確かに、人は寄り付かないね」


 スラム街に住む人々は、無意識の内にその付近へ行くのを避けているような気がした。

 誰かが不穏がっているから、自分も行ーかないってのが、大きくなった感じがする。

 それとも、心霊スポットって感じだろうか……いや、あっちは好んで近づく変態が居るから、それとはまた違うか。

 そうして辿り着いた廃屋の中に入った俺は、《気配察知》で気配を探る。


「……ビンゴ、じゃないかな?」


 《気配察知》のレベルが低い故に、だいぶ朧気だが、少なくとも何かある。

 そんな確信が出来た俺は、一旦外へ出ると、その廃屋の屋根上に上る。

 そして、そこでフェリスが来るのを待つことにした。

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