第二十六話 フェリスの犯罪組織ぶっ潰し作戦
フェリス視点
レオスさんと別れ、1人になった私は、《漆黒翼》を展開して、遥か上空に陣取る。
そして、そこからレベル80の圧倒的なステータスを駆使して、怪しそうな人を見つけることにした。
本当の犯罪者を見つけるのは――誇ることでは無いかもしれないけど、結構得意。
だって……そんな奴らにずっと囚われていたんだから。
「私は――レオスさんに救われた。だから、レオスさんの為に、出来ることは全力でする。そして、レオスさんがしたように――今度は私が、皆を助ける」
上空で、私はレオスさんに尽くすことを想うと同時に、嘗ての私と同じ目に遭っている人を、助けようと決意した。
私の強みは、何と言ってもこの《漆黒翼》。あのレオスさんも、ここまで自在に空を飛ぶ術は、どうやっても手に入れられないと言っている程のもの。
何だけど……
「何でレオスさん。空飛べないのに飛べるの……」
私は、呆れたようにため息を吐く。
現状レオスさんは、自在云々関係なく、空を飛ぶ術をそもそも持っていない。
なのに模擬戦の時、届くはずの無い上空に居る私に、普通に追いついて来る。
ある時は自分が発射した《
またある時は、空中に一瞬出した糸を踏んで、また出して踏んでを超高速で繰り返して。
挙句の果てには、「魔力が勿体ない」と言って、私が放つ《
最後は控えめに言ってもおかしい。私の射撃精度が子供のお遊びのように思えてならなかった。
レオスさん曰く、「タイミングと場所が重要」とのことですが、私にはさっぱり分かりません。
「うう……ですか、何としても、レオスさんと肩を並べて戦えるようになります!」
私はぐっと拳を握りしめ、気合を入れると、入念に下に広がるスラム街の探索を始めた。
王都に居る、そこそこ力のある犯罪組織なら、国の手が伸びにくいということで、確実に拠点――あるいは本拠地を構えている筈。
そこを潰すのは、とても大きい事。
「……むむむ……む……む! 怪しい」
少し探索を続けてたら、怪しそうな人を見つけた。
人相とかではなく、雰囲気が何となく、あの時私を虐げた奴らに似ている。
「外道死すべし。慈悲は無い」
そう言って、私はその男の尾行を始めた。
やり方は単純に、姿音気配を全力で隠蔽した私が、《漆黒翼》で低空飛行をしながら追いかける。ただ、それだけ。
地面を歩くと、巻き上げる砂とかで気づかれる可能性も出てきちゃうし。
「……」
「……」
互いに無言。
そんな状態で、黙々と歩き続けること約10分。
「……あ」
そいつは一軒のボロい家の中に入った。
私も続けて中に入る。
「……怪しいなあ」
ボロボロすぎる室内を見回しなながら、私はそう呟いた。
あの時私が感じた不穏な雰囲気。
それとここは似通っていた。
私の本能が、ここは外道の巣だと告げている。
「居ないか……よし」
やがて、その男は唐突に立ち止まると、周囲を警戒するように見回した。
だけど残念。その程度で私を見つける事は不可能。
すると、見られていないと勘違いしている男は、地面に手を当て、床板――の形をした隠し扉を開いた。そして、素早く入り込むと、パタリと隠し扉を閉める。
「よし。行こう」
私はぎゅっと拳を握りしめると、隠し扉を開けた。
「な!?」
私の《
もっとも。もし私が《幻術》を使えたとしても、レオスさんと同じ事は出来ないだろうけど……
「はっ」
私は即座にその男の首裏に手刀を叩きこんで気絶させた。
ほぼ確定だけど、一応まだここが犯罪組織のアジトであると確定した訳じゃ無いからね。まだ殺さない。
「よっこらしょっと」
私は気絶したその男を肩に担ぐと、私はその階段を《漆黒翼》を駆使する事で、高速で下へと降りた。
「……確定」
下に降りて、少しした場所にあった牢屋。
その中に、薄着で転がされている数人の女性が居た。
「……殺す」
私は殺意に満ちた声で、怒りに任せてそう言った。
その後、奥にある部屋のドアに耳を済ませてみると、麻薬の取引とか人身売買とか、そんな感じのやり取りをしたとかいう声が聞こえてきた。
「……ふざけるな」
そう言って、私は肩に担いでいた男を地面に叩きつけ、破壊した。
そしてそれがそのまま、開戦のゴングとなる。
「壊せ。《
私は右手を掲げると――奴らを部屋諸共破壊した。
轟音がこの地下室内に共鳴し、鼓膜を揺さぶる。
だが、そんな事どうでもいい。
今は奴らを、根絶やしに……!
「はあああああ!!!」
私は双大剣を構えると、振るった。
強い力で振るわれた一撃。
それは、生き残っていた奴らを瓦礫諸共両断した。
「……終わったかな」
敵の気配が消えた事を確認した私は、《
「助けに来たよ。大丈夫?」
「は、ひぃ……ば、化け物」
安心させるように言った言葉に、返ってきたのはそんな言葉だった。
私は思わず自分の姿を見やった。
全身血に塗れ、殺意を残した、自分の姿を。
そして、後ろに広がる、残骸を。
「ちょ、馬鹿。助けに来てくれた人に!」
「あ、す、すみません! なんでもありません!」
「よ、良かった……」
「ふぅ……」
「…うん。それじゃあ、着いてきて」
そう言って、私は牢屋の檻を壊す。
すると、中から続々と出てきてくれた。
「……!」
彼女たちは皆、私が生み出した光景に息を飲みつつも、最終的には安堵の表情で私に着いてくる。
その間、私の中ではずっとさっき彼女に言われた言葉が響いていた。
化け物。
あの時の私は激情のままに、そう言われるのに相応しい戦い方をしてしまった。
「……苦しい」
心が苦しい。痛い。
ああ言われて、ここまで自分が傷つくなんて思いもしなかった。
自分は結構、臆病で繊細なんだなあ……
「お〜音がするなと思って来て見りゃ、やっぱりフェリスだったか。結構派手にやったんか?」
「レオスさん……!」
そんな私の前に現れたのは、自然と安堵してしまうような笑みを浮かべる、レオスさんだった。
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