第二十五話 尋問は何故か厨二病言語
ここのアジトが完全に黒&近くでもっとやっべぇことを企んでいる組織が居ると知った俺は、一先ずこのアジトをぶっ潰すべく、動き出した。
「ん~……隠し通路付近に人は居るが……まあ、ここら辺は先に対処しておこう」
《幻術》で姿音気配を隠している俺は、《気配感知》を使いながら、くまなくアジト内を散策し、制圧ルートを考える。
幸いなことに、囚われている一般人は居ないようで、居るのはこの組織の構成員計32人だけだった。
これなら出来る。
「さて、まずは――《操糸》」
俺は糸を繰り出すと、隠し通路周辺にいた構成員4人を音も無く惨殺した。
この時、《操糸》で生み出した糸を蜘蛛の巣のように張り巡らして、隠し通路を塞げればいいんだろうが……この糸が魔力で出来ている都合上、斬った瞬間に粒子となって消えちゃうんだよね。
だから、残念なことにそれは出来なかった。
「よし。次――」
その後、俺はすぐさまさっき入って来た入り口の方へ向かうと、その近くにいた構成員を同じ方法で殺す。
これで、逃げるには確実に全員が目の前に伸びる廊下を通らなくてはならない。
俺はその廊下に真っ直ぐ糸を伸ばして、出てきた瞬間即座に斬り刻めるようにすると、それを維持したまま一部屋ずつ訪問していった。
「それ――」
「な――」
死んだことすら気づかせない、神速の糸捌きで、俺は次々と殺めていく。
もう、殺すことに何の感慨も抱かない。
慣れって……本当に恐ろしいものだね。
そう思いながらも惨殺を続け、気が付けば後はさっきの部屋に居るボスらしき男含む12人しか居なくなった。
俺はその部屋のドアをガチャリと開けると、慣れた手つきでボス以外の11人を惨殺した。
「なっ……!?」
自分の周りに居た部下が、何の前触れも無く血を噴き出して倒れる光景を目にし、流石のこいつも絶句したようだ。まさしく、”言葉が出ない”を体現している。
そんなボスから話を聞くべく、俺はボスに《幻術》をかけ、周囲一帯が地獄の荒野に見えるようにしてやった。そして、俺自身の姿を《幻術》で死神っぽく見せると、口を開く。
「お前の仲間は全員、冥府へと送った。後はお前だけだ」
そう言って、俺は大鎌を構える仕草を取る。
ボスは、そんな光景に恐れおののきつつも、やがて状況を理解すると、やけになったように口を開いた。
「そうかい。へっ まさか冥府の神なんかに会う羽目になるとはな。ま、当然の帰結か」
「ああ、そうだ。して、貴様には問うことがある。貴様は忌々しき愚神の走狗たるゼライゼ帝国の人間の一部に手を貸そうとしたな? で、彼奴等は何を企んでいるのか、全て聞かせろ」
俺はこの場で適当にでっち上げた設定で、それっぽく問いかける。
「へへっ 奴らは王都中に毒薬を散布しようとしてんだよ。そして、混乱し、ボロボロとなった王国に攻め入ろうって魂胆さ。まあ、あんたが聞きたいのはこんなんじゃないんだろ?」
「当然だ。言っただろう。全て……と」
「へいへい。奴らのアジトはこのスラム街北東にある。で、地下にあるアジトの、更に地下に、毒薬が大量に保管されてる。持ち出されるのは建国祭当日の朝だ。これでどうだ?」
まあ、これだけ聞ければ十分対処は出来るだろう。
「ああ。あとは我が信者に伝え、彼奴等の計画を潰し、冥府への扉を開くだけだ。貴様の魂はその前座」
「ひひっ 恐ろし~……」
何かもう、こいつは恐怖が天元突破しているようで、笑い方が完全に壊れてる。
お前の方が俺よりよっぽど恐ろしいわ。
「さて、では貴様を冥府へ送るとしよう。罪科に焼かれ、永劫の苦しみの中で、懺悔せよ。それこそが、我が至高――」
そう言って、俺は大鎌を振る――動作を見せながら、こいつの首を糸で斬り飛ばした。その後、俺は《幻術》を以前の物に戻す。
「……うっ」
直後、俺は頭を押さえた。
ヤバい。これは――
「……流石にイタかったかなぁ……あれ」
くそっ考えれば考えるほど悶々としてくる……!
さっきの発言を覚えている奴は、誰も居ないと言うのに!
屍山血河の中心で、俺は自業自得の苦しみに遭い続ける。
「……あーもう! やめやめっ 忘れろ忘れろ! 今はこんなことしている場合じゃなーいっ!」
俺は叫び、ぶんぶんと頭を振った。
……ふぅ。スッキリした。
よし。ここでは情報を得て、ついでにアジトをぶっ潰しただけ。
いいね?
俺は自己暗示をしながら、これからの行動を思案する。
「取りあえず、さっき北東にあるって言ったな。直ぐにそこへ向かうとするか。後、これは結構ヤバ案件だから、フェリスと一緒に行くか」
潰し損ねたらオワオワリになり兼ねない為、万全を期すべく、俺はフェリスと一旦合流することを決めた。
「さて、そうと決まれば早速行くとするか」
そう言うと、俺は死体の山を上手いこと避けながら、さっきの階段の所へ向かった。
そして、一気に駆け上がる。
死体をそのままにしてきてしまったが……まあ、どうせ誰かが来て、気付くだろ。
俺は一応アジトの入り口を塞いでいた床板型の扉をあえて取っ払うと、ボロ屋の外に出る。
「……で、フェリスは今頃どんな感じなんだろうなあ」
思わずそう呟くと、俺は屋根の上に跳んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます