第二十四話 やっべぇ計画
「おい。ブツはどうだ?」
「ああ、仕入れは完璧だ」
「にしても、あんなものを吸う奴の気が知れないぜ」
「言うな言うな。誰かに聞かれたら面倒な事になる」
「……マジか~い」
怪しそうな人を探し回っていた俺は、偶然そんな会話を耳にしてしまい、思わずそんなツッコミを入れる。
さっきは見事に勘違いしてしまったが、ここまでアウトな発言してたら、流石に犯罪組織の人間だ……よね?
さっきどんでん返しがあったせいで、イマイチ今度は確信が持てない。
「まあ、後をつけてば分かることだろ」
ちゃんと証拠を見て、潰す。
言ってしまえば凄くシンプルなやり方だ。
そうして、俺は歩き出した奴らの後をつけて行く。勿論《幻術》を使っている為、バレる心配は無い。
奴らはスラム街の、良く知っている人じゃないと知らなさそうな隠れた道を、事無げも無く進んでいく。
「……随分と入り組んでいるなぁ」
思わずそう呟きたくなる程進んだところで、奴らは一軒のボロ屋に入った。
……何か、それを見るとさっきのことを思いだしちゃうな。
だが、室内に人の気配は感じない。
もしや……スリエの奴らみたいに地下か?
俺はそんな予想を立てながら、奴らの後に続いて室内に入った。
「……生活感は微塵も感じないな」
雨風に長い事晒されたのか、室内の床は腐食し、ボロボロになっている。
天井を見てみると、そこにはいくつもの穴が開いていた。
窓は、窓枠そのものが腐食し、床に無惨に転がっている。
もう……マジで近づきたくないレベルだ。てか、よく崩落しないな。
そんなことを思っていると、1人が唐突に地面に手をついた。そして、ボロボロの床板を上に持ち上げる。
「……おお、隠し扉か」
何と、そのボロボロの床板は、周囲と同化させる為、意図的に作られた地下室への扉だったのだ。見てみると、1人分の横幅を持つ階段が、下へと続いている。
うん。こりゃ如何にもってところだ。
すると、奴らは周囲をキョロキョロと確認した後、その中へと入って行った。
「……よし。俺も行くか」
俺は《幻術》をより集中して使うと、隠し扉をそっと開けた。《幻術》を使った為、音はおろか、見た目すらも誤魔化せている。
俺はそっと階段に足をかけると、ゆっくりと扉を閉めた。
階段は真っ暗だが、《暗視》を持つ俺の障害にはならない。
俺は前を歩く奴らを追いかけ、先へと向かう。
するとやがて、奥に揺れる光が見えて来た。
「……ここは――」
下まで降り、その空間を見た俺は、軽く目を見開いた。
そこには、これでもかと言う程の薬草が、束となって積まれていたのだ。
《鑑定》で確認してみると、それはキルの葉という名前の薬草で――簡単に言えば依存性のある麻薬だった。
さっき奴らが言ってたのはこれの事か……
「真っ黒だ」
完全にアウトであると判断した俺は、このアジトをぶっ潰すことにした。
ただ、今即座に殲滅を始めたところで、隠し通路などから逃げられる可能性があるし、奴隷として囚われている人が居た場合、最後っ屁とばかりに殺されてしまうかもしれない。
それは、何としてでも避けたいところだ。
やるからには、ベストを尽くさないとな。
そう思った俺は、さっきの2人組の後をまだまだ尾行する。
「そこの部屋には居ない、そこ……には2人か」
尾行する傍ら、人の場所を《気配察知》で入念に調べ、後で迅速に制圧が出来るようにしておく。
やがて、スキルを使わずとも多くの人が居るように感じる部屋の前に辿り着いた。
2人はドアを4回ノックすると、ガチャリとドアを開け、中に入った。
勿論、俺もついて行く。
「おお……」
やや広めの部屋には、10人ぐらいの人が居て、酒を飲んだり、麻雀らしきものをして、遊んでいた。
すると、その中で一番偉そうなおっさんが口を開く。
「おう、帰って来たか。それで、成果は?」
「へい、頭。きっちり1000束、買い取って貰うことが決まりやした。それも、いい値段で。ただ、頭の予想通り、かの計画に全面的に協力するよう要請して来やした」
「ああ。あの、ゼライゼ帝国のイカレポンチ一派。まさか建国祭を狙って、王都中に多種類の毒薬を散布しようとするとか、普通じゃ考えねぇぜ。ま、あのクズ貴族共のせいで苦しみ、落ちぶれた俺たちからしてみれば絶好のチャンスだ。乗ってやるとするか」
そう言って、ニヤリと笑う男。
その言葉を聞き、俺は思わず言葉を失った。
王都中に毒薬を散布するだって!?
なんつーこと企んでんだよ。こいつらは!
……って思ったけど、口ぶり的に計画したのはこいつらじゃなくて、隣国ゼライゼ帝国の人間らしい。
なるほど。混乱させて、その隙に攻め入ってやろうとか、そういう魂胆か?
「流石に国の上層部がそんな事実行する訳が無いし、どの国にもいる過激派集団の仕業かな?」
思想強めな、我こそ絶対!って感じの考えを持つ奴は、どこにでも居る。
恐らくはそんな奴らが、暴走しようとしているのだろう。
「……まさか、そんなやっべぇ計画が練られてるとはな」
流石にそれは冗談じゃ済まない。もしそれが成功してしまったら、折角の建国祭は楽しめないし、王都は大混乱になるし、ついでにドラゴンが出現するしで大惨事になる。
ドラゴンは主人公たちが止めてくれるだろうし、こっちは俺たちが止めるとしよう。
「――が、その前にこいつらを片付けないとな」
そう呟くと、俺はアジトの構造を調べるべく、アジト内の探索を始めるのだった。
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