第十三話 王都ルクリアへ向けて、いざ出発!
次の日の朝。
日がそこそこ昇った頃、朝食を食べ終えた俺は一旦フェリスと別れ、冒険者ギルドに来ていた。
要件は勿論、昨日”反転の迷宮”で手に入れた魔石の売却だ。
ただ、あの量を出したら面倒なことになるのは目に見えているので、ここでは7分の1程売却して、残りは王都ルクリアへ行く道中にある街で少しずつ売りさばいて行くとしよう。
そんなことを思っていたら、ようやく俺の番が回って来た。
「すみません。魔石の売却に来ました」
そう言って、俺はドサッと魔石が入った革袋を受付の上に置く。
「分かりました。少々お待ちください」
受付嬢は特に驚くことなくそう言うと、中から1つずつ魔石を取り出して、数を数えながら、種類別に分けていく。
これ、地味に大変そうだよなぁ。
「……はい。ゴブリンの魔石20個。ファイアスライムの魔石10個。オークの魔石30個。ゴブリンソルジャーの魔石が5個ですね。よって、買取金額は銀貨1枚になります」
そう言って、受付嬢は革袋と一緒に銀貨1枚を俺に手渡す。
因みに、今回のは”依頼”ではない為、冒険者カードを提示する必要は無い。
そうして無事金を受け取った俺は、礼を言うと、受付を後にした。
「よし。次は保存食を買わないと」
何だかんだで枯渇してきた保存食を、ここで補充しとかないと、いざ必要になった時に困る。
そう思った俺は革袋を折り畳み、リュックサックの中にしまうと、冒険者ギルドの外に出た。
そして、直ぐ近くにある肉屋へと向かう。
「おじさん! 包んだ干し肉を……10個くれ」
「おう! お前さんか。じゃ、小銀貨5枚な」
「はい」
「まいど」
よく買いに来ているせいで、すっかり常連扱いとなってしまった肉屋で、俺はいつも頼んでいる干し肉を頼む。
ここは冒険者から直接仕入れたオークやミノタウロスなどの肉が主に売られており、結構美味いんだよね。その分、他の所で売っている干し肉よりも割高だが、それでも俺は値段よりも味を優先したのだ。
すると、魔物の皮で丁寧に包まれた干し肉を、次々と俺に渡していく。
そして、俺は渡された干し肉をすぐさまリュックサックの中に入れて行った。
「ありがと、おじさん。あ、これから俺、暫く王都の方に行ってくるから。最低でも2か月は帰ってこないかも」
「お、そうなのか。ま、気をつけろよ!」
暫く顔を見せなかったら心配するかもと思い、俺は一応王都へ行くと伝えておく。
すると、おじさんは元気よくそう言ってくれた。
うん。こういうのって、なんだか温かいよね。
「さて、保存食も買ったし、フェリスと合流するか」
フェリスは、迷宮の宝箱から出て来た金品等を売りに行き、更にその金で保存食となるパンを買ってくるよう頼んでいる。
売却は終わっただろうし、今はパン屋かな……?
そう思った俺は、フェリスが居るであろうパン屋に向かって、歩き出した。
「……お、見つけた」
パン屋へ向かう途中の所で、こっちへ向かって歩いて来るフェリスを見つけた。
どうやらフェリスもやることを終え、俺の下へ向かっていたようだ。
「レオスさん。こっちは終わりました。レオスさんの方も……?」
「ああ。こっちも終わったよ。それじゃ、早速王都に向うか」
「分かりました」
そうして、俺たちは王都へ向かうべく、北門へと向かって歩き出した。
ここスリエから王都ルクリアへは、いくつか小さな街を通って行くことができ、大体馬車で6日の距離だ。だが、今回俺たちは馬車ではなく徒歩で行くつもりだ。
理由は、ただ単にそれが一番楽だから。
大抵の人にとっては、馬車で6日かかる距離を徒歩で行くのは流石に嫌だと言うだろうが、俺たちのように高レベルの人なら話は別。
因みに俺は、この為にわざわざ今日の早朝に”成長の指輪”を装備して森へ向かい、レベルを70まで上げたんだよね。
フェリスの索敵サポートもあってか、直ぐに終わったよ。
そう思いながら歩くこと約20分。北門へと辿り着いた俺たちは、冒険者カードを見せ、スリエの外に出た。
「は~こういう徒歩旅も、悪くないものだなぁ~」
街の外に出た俺は、雄大な草原の間に伸びるあぜ道を、のんびりと歩く。
穏やかに吹く風が、結構心地よい。
偶にはこうやってのんびりするのも、いいものだよね~。
「ですね。ただ、このペースだと途中で夜営しないといけなくなりますよ?」
「ん~それは遠慮したいな。大した道具持ってないし」
俺と同じくのんびりしながらも、そう指摘してくるフェリスの言葉に、俺はそう答える。
でもまあ、言うて距離40キロだし、日が暮れてから走り出しても、全然間に合うだろう。道中の森林地帯で魔物に襲われることもあるだろうが、足止めされるような相手でも無いし。
「でもまあ、今はゆっくり行こうよ。こういういかにも旅って感じの状況、悪くないだろ?」
「……そうですね。レオスさんと2人きりでのんびり歩けて、とても嬉しいです」
のんびり旅って感じのシチュエーションを楽しむ俺の言葉に、フェリスはくすりと小さく笑みを浮かべると、優し気な声音でそう言うのであった。
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