第十一話 反転の迷宮の攻略報酬
『レベル28になりました』
「うん。やっぱ俺はこうでなくちゃな」
塵となって消えたナイトゴーレムが居た場所を眺めながら、俺は満足げに頷いた。
さっきのは反転の迷宮のボス、ナイトゴーレムにおける隠し要素だ。
あんな感じで倒すと、一撃撃破できる。
その分超上級者じゃないと狙って出来ないレベルで難しいので、ぶっ壊れ要素という訳ではない。
普通の人なら、あれを狙うよりも力押しで倒してしまった方が遥かに楽で速いだろう。
いやーゲームでは初回攻略時しか出来ないせいで、やれなかったんだよね。
2回目以降になると、また別の強い魔物が出てきちゃうからさ。
はー満足満足。
「お疲れ様です。レオスさん。ところで今のは……?」
戦闘が終わり、駆け寄ってきたフェリスの言葉に、俺は合点が行く。
確かにフェリスからしてみれば、急にナイトゴーレムの体力がゼロになったようなものだからな。
常時《鑑定》で体力の推移を見ていたのなら、その驚きようは相当なものだろう。
「ああ。実はあそこがナイトゴーレムの弱点なんだよ。ここで出てくるナイトゴーレムにしか効かないから、覚えておく必要は無い」
「そうなんですか……それにしても削れ過ぎているような……」
流石フェリス。結構鋭い。
でも、俺だって”知っている”だけで、それを論理的に説明するのは不可能だからなぁ……
「まあ、人で言うところの心臓を貫かれたって感じに思っていればいいよ」
「なるほど。そういう……」
俺が思いついた例えに、フェリスはなるほどと頷いた。
良かった。納得してくれたみたいだ。
「さて。攻略報酬は……お、あったあった」
フェリスとの雑談を終え、再び前方に目を向けてみると、ついさっきまでナイトゴーレムが居た場所に、1つの宝箱が置かれていた。
俺はてくてくと歩いて宝箱の前に立つと、膝をついた。
そして、地面に置かれている宝箱の蓋に手をかける。
「何が出るのかな……?」
フェリスも、俺の後ろから興味深げに覗き込んでくる。
うん。中身は分かっているが、もしかしたらということもあるし、一応期待してみるか。
「さあ、お~ぷ~ん」
そして、パカッと宝箱の蓋を開いた。
すると、見えて来たのは――
「指輪……?」
そう。指輪だ。
宝箱の中にちょこんと銀色の指輪が入っていたのだ。
宝石などが付いている訳でもない、非常にシンプルなもの。
一応《鑑定》で確認してみると、予想通り”反転の指輪”という名の指輪だった。
これをつけた時の効果。それは……体力の増加だ。レベルに関係なく、50上がる。
まあ、はっきり言って微妙だ。ゲームでも、序盤にちょっとつけていただけ程度の認識だし。
だが、この指輪には隠された能力がある。
それは、これを装着している状態で反転の迷宮に入ると、罠と構造変化が無効化されるということだ。つまり、魔物と宝箱があるだけの迷宮……ということになる。
それが何を意味するのかと言うと……はい。周回しなさいということだ。
周回しまくり、蒼宝珠を狙い続ける。一応蒼宝珠の取得という一点だけを見れば、この迷宮が一番効率が良い訳だし。
適当に時間を見つけて、周回しておくとしよう。
そんなことを思っていたら、同じく《鑑定》をしたであろうフェリスが口を開く。
「体力の増加ですか……特にデメリットも無いようですし、付け得ですね」
「まあ、そうだな」
確かに、付け得だ。
でも、指輪系のアイテムは右手に2つ、左手に2つの計4つまでしか装着できないというルールになっている。
前に街で情報収集した時もそんな情報が入手できたので、そのルールは現実世界になった今でも通じてしまっていることだろう。
だから、今後良いアイテムが手に入ったら、直ぐに使わなくなることだろう。
それでも、アイテムが不足している今は使うけどね。
「……よし。これはフェリスに上げるよ。俺には必要無いし」
宝箱の中から指輪を取り出した俺は、フェリスにそっと差し出す。
「あ、ありがとうございますっ!」
フェリスは嬉しそうに言うと、早速指輪を右中指にはめる。
成長の指輪と反転の指輪で右手が埋まったから、後は左手に2つずつ……か。
この調子なら、そう遠くない内に2つ集め終わるだろう。
そう思っていると、部屋の奥の床に魔法陣が出現した。
フェリスが身構えるが、俺はそれを手で制すると口を開く。
「あれは帰還用の魔法陣だよ。あれに乗れば、地上に帰れる」
「そうなんですか……なら、早速乗りましょう」
「いや、その前に魔法で姿気配を極限まで消してから行こう。1日で攻略したことがバレたらマジで怠い」
主人公たちでさえ、攻略には25日かかったらしいのだ。
それ以前の数少ない攻略者も、平均日数40日と、逆にどうしたらそんなに時間がかかるんだと思わせるような有様だった。
そんな中、1日で出たことが世間にバレれば……うん。考えただけで恐ろしい。
「よし。取りあえず俺は《幻術》を使う。ただ、今の《幻術》だとバレる可能性があるからな。フェリスは《
《
それを使えば、問題なく抜け出すことが出来るだろう。
「気配と姿を隠す感じで頼むよ。《幻術》」
「分かりました。全力で行きます。《
俺のスキルに合わせ、フェリスは魔法を使う。
そうして、俺とフェリスの姿気配は、ほぼ完全に消えたのであった。
「よし。行こう!」
「はい」
そして、魔法陣の上に立った。
直後、魔法陣は光り輝き、その光は俺たちを包み込んだ。
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