第九話 第三階層に到達!

 あの後も色々と楽しみながら進み続け、レベル22になったところで遂に第三階層へと続く階段を発見した。第二階層攻略にかかった時間は約3時間。

 その間に、宝箱は合計5つ発見した。

 1つ目は中級魔力回復薬とアタリだったんだけど、2つ目と3つ目はそれぞれ掌サイズの銀塊と黒曜石という名のハズレだったんだよね。

 どちらも大した使い道は無く、基本売却用なのだが、合わせて小銀貨1枚にも届かない。ハズレの方が多いと分かってはいたものの、内心は落ち込んだな。フェリスも最初アタリだったのが影響してか、ちょっと残念そうな顔をしていたし。

 4つ目は、中級体力回復薬1本という何とも言えないやつ。

 だが、5つ目が凄かった。


「まさか蒼宝珠が出るとはな……」


 第二階層と第三階層を繋ぐ階段で遅めの昼食を取りながら、俺はそう呟いた。

 蒼宝珠とは、掌サイズの青い球体のことで、ここに限らず全ての迷宮で、宝箱からの排出確率0.5パーセントとか言う相当レアな物だ。

 ゲームでは非売品で、更に売ることも出来ず、現実世界となった今では売れるだろうが、精々綺麗な石という見方しかされないだろう。

《鑑定》してみても、”迷宮の宝箱に稀に入っている綺麗な石。何かに使えるかもしれない”としか出ない為、尚更だ。

 そんな一見使い道のない蒼宝珠の使い道。

 それは――装備の強化だ。

 蒼宝珠を好きな装備に”使用”すると、単純にその装備が強化される。

 因みに、一度使用してしまった蒼宝珠は消えるから、使う装備は慎重に見極めないと。

 また、1つの装備につき蒼宝珠1つまでしか使えない。

 蒼宝珠”は”なので、今後の迷宮で出てくる紅宝珠と黄宝珠等は使えるんだけどね。

 まあ、そこら辺を考えるのは、もっと先のことになるだろう。


「……ふぅ。そろそろ行くか」


 昼食を食べ終え、更に少し休憩したところで俺はおもむろに立ち上がると、そう言った。


「分かりました。準備はもう済んでいます」


「おけ。んじゃ、行くか」


 フェリスの言葉に頷くと、階段を1歩2歩と下り始めた。

 そして、前回と同じぐらい下ったところで下に――第三階層に降り立った。


「よし。到着。それじゃ、少し待っててくれ。周期を確認するから」


 第三階層に入った俺は一旦立ち止まると、前方右にある分かれ道をじっと見つめ、構造変化が起こる時を待つ。

 そうして待つ事1分。パッと分かれ道が左側になったことを確認した俺は、フェリスを先頭に出した。


「《闇矢ダークアロー》!」


 変わらぬ動作で魔法名を紡ぎ、無数の闇の矢を飛ばすフェリス。

 ドドドド――と前方の地面に着弾していく。

 するとやがて、ぽっかりと穴が開いたか所が1つ。

 その穴はしばし開いた後、シュッと閉じる。


「はい。罠の確認が終わりました」


 目視で確認出来ない罠の対処を終えたフェリスが、視線をこちらに向けることなくそう告げる。

 そんなフェリスに、俺は「ありがと」と礼を言うと、再び先へと向かって歩き出した。


「……っと。もう現れたか」


 歩き始めてから1分もしていないのに、もう魔物に遭遇した。

 今回現れたのはオークの群れだ。だが、ただのオークの群れではない。

 よく見ると一番後ろに、大剣を持った少し大柄なオークが居た。

 あいつはハイオークって魔物で、レベルは26。まあ、オークの強化版とでも思えばいいだろう。対処法も変わらないので、さしたる問題は無い。

 8体いる配下のオークも、閉所である迷宮内では各個撃破しやすいし。


「おし。行くかっ!」


 奴らが戦闘モードに入るよりも前に、俺は両手に片手剣を持って、駆けだした。


「ブフォオオ!!!」


 30メートルまで接近したところで、一番後ろにいたハイオークが雄たけびを上げる。

 それに合わせ、配下のオークも雄たけびを上げると、突撃してくる。

 上司ハイオークが居るせいか、心なしかオークたちの突撃速度が第二階層に居た奴らと比べて早い気がする。


「はあっ!」


「ブフォオ!!」


 そんな奴らと、俺は真っ向から斬り合う。

 レベルでもプレイングでも勝っている状況で、負ける通りなんて無かった。


「ブフォ……ッ!」


 まず、半歩後ろに下がることで、先頭にいたオーク渾身の一撃を躱すと、右手を振るって首を撥ねる。


「《操糸》」


 その後すかさず糸を繰り出し、そのすぐ後ろにいた2体のオークの足を刻んだ。


「ブフォオ!!!」


 足を失い、倒れる2体のオーク。

 そんな2体を押しのけるような形で、残る5体のオークが迫ってくる。


「ブフォオ!!!」


「はあっ」


 カンッ!


 棍棒と左の片手剣が交差し、音を上げる。

 混戦時に武器を交わすのは、隙を生むことに繋がるからあまり好きでは無いのだが、やってみたくなったので、ついやってしまった。


「ブフォ!!!」


「《操糸》」


 右から来たオークが、棍棒を振り下ろす――が、糸を棍棒に絡まらせ、上手く引っ張ることで軌道を逸らした。


「はあっ!」


 そのオークが邪魔で、後ろにいるオークが来れない内に、ちょっと放置していたオークの首を巧みな剣さばきで斬り落とす。更に、それと同時に右の片手剣を振るって、棍棒の軌道を逸らしたオークの腕を切断する。


「よし。ここまで削ったし、後は普通にやるか」


 そう言って、俺は両腕を振り上げると、相手の攻撃を躱しながら、次々と始末していく。

 そうして僅か1分程で、8体のオークは全滅するのであった。


「ブフォオオ!!!」


 残り2体になった辺りから、こちらに向かって突撃し始めていたハイオークが、丁度目の前に現れた。そして、勢いよく大剣を横なぎに振るう。


「よっと」


 それを屈んで躱した俺は、大剣を振るったことによる反動で、一瞬動けなくなっているハイオークの手首を斬りつけた。


 ザン! ザン!


 2本の片手剣による連撃が無事決まり、ハイオークの両手首が大剣と共に地へ落ちる。


「ブフォオ!?」


 それにより1歩下がるハイオーク。

 だが、当然逃がすつもりのない俺は無慈悲に片手剣を振り上げ、首を斬り落とすのであった。

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