第七話 落とし穴を駆使した作戦
落とし穴に落ちたことで、完全に忘れてしまった周期のタイミングを、適当な分かれ道を使って無事把握した俺は、フェリスを1歩先行させる形で、先へと進んでいた。
「《
おもむろに立ち止まったフェリスが、右手を掲げ、唱える。
直後、多くの漆黒の矢が虚空に出現したかと思えば、勢いよく飛び出し、前方50メートルの地面に突き刺さっていく。
この時、罠であると一目で分かる石畳は、ちゃんと避けている。別に全部も石畳にガッとやってもいいんだけど、そっちの方が精密な魔法操作をする訓練になるし、罠って一度発動すると、少しの間周囲にある罠が一定時間発動しなくなるから、確認の意味が無くなってしまう可能性があるんだよね。
「……お、1個か」
前方をじっと見つめていた俺は、フェリスの《
そうそう。数回やって気づいたのだが、どうやら例の”目視で確認出来ない罠”がある頻度は、意外と高くなかった。むしろ、結構低い。
正確には、大体100メートル歩くごとに、1、2個あるかな~といった感じだ。
そう思うと、さっきの俺ってめちゃくちゃ運が悪かったんだなって思う。
まあ、豪運を発揮して命が助かったこともあるし、その反動だと思って受け入れるとしよう。
「あ、魔物だ」
罠を確認し終え、さあ進もうと思ったその時、前方に魔物が出現した。
オークって言う、俺がこの世界に来て初めて倒した奴で、数は6、レベルは19だ。
「ブフォオオ!!!」
「ブファアア!!!」
オークたちは俺たちを見るなり雄たけびを上げると、棍棒を振り上げ、迫ってくる。
道中罠を踏み踏みしているが、罠が作動することは無い。迷宮の不思議ってやつだね。
さて、ここはちょっと面白いことをしてみよう。
「はっ」
片手剣を両手に持った俺は、地を蹴り、駆けだす。
いい感じに罠を避けながら、彼我の距離が今の《操糸》の射程である5メートルになるまで走ると――立ち止まった。
「《操糸》!」
そして、《操糸》を使う。
俺の手から飛び出した糸は、勢いよくオークたちの足元に叩きつけられる。
すると――
カチッ
先程聞いた音が、耳に届く。
直後、オークの足元に落とし穴がポッカリと開いた。
「ブフォ!?」
そして、落とし穴は先頭の真ん中にいたオークを闇の中に飲み込んだ。
更に、後続のオークも1体飲み込む。
「ブフォ!?」
両脇に居たことで、落とし穴に落ちなかったオークも居たが、落ち行くオークが振るってしまった棍棒に当たって怯んだり、後は純粋に驚いて止まってたりした。
「よしよし」
いい感じに決まった作戦を見て、俺は満足げに笑うと、再び接近する。
「ブフォオ!!!」
接近に気付き、棍棒を振るうが、軌道を正確に読んでいた俺は半身になってその攻撃を躱すと、両手を振るって左右に居たオークの首を斬り落とした。
『レベル19になりました』
「《操糸》!」
レベルアップの声を聞き流しつつ、俺は落とし穴が道の中心に出来たことで、迂回せざるを得なくなっていた後続のオーク2体の足めがけて糸を放ち、足を縺れさせると、今度は首に糸を放った。
「ブフォ……」
首に糸を巻き付けられた2体のオークは、苦悶の声を上げる。
俺はそのまま即座に糸を引くと、2体の首を切断した。
「よし。後は……」
4体のオークを撃破した俺は、落とし穴に落ちた2体のオークを見やる。
「ブフォオ!!!」
2体のオークは、ここから5メートル程下の所で、暴れていた。
直径2メートルの穴は、オークが1体入る程度――故に、2体はほぼすし詰め状態になっていた。
うわ~やってみたけど、中々凄いコンボだな~これ。
やられる側はたまったもんじゃなさそうだが、やっている側としては、普通に楽しい。
ゲームでは、穴に落ちたらダメージを受けると同時に上に戻されるのだが、現実世界ではそうもいかない。そんな現実世界としての特徴を上手く活用した、俺の作戦……結構イケるな。
「よし。そんじゃ、《操糸》!」
十分堪能した俺は、穴の底めがけて糸を放ち、2体のオークを始末した。
すし詰め状態で、身動きが取れないということもあってか、特に抵抗されることは無かった。
直後、落とし穴がシュッと閉じる。
「……ああ、穴の底に落ちたオークの魔石、消えちゃったな」
落とし穴の中に落ちたオークの魔石はどうなるのだろうかな~と疑問に思っていたが、案の定と言うべきか、消えてしまった。
うーん。面白かったけど、収入を減らしてまでやるのは何か抵抗感が……いや、でもロマンは大事……!
「レオスさん。魔石の回収が終わりました」
ロマンと現実の板挟みに遭い、唸っていた俺は、フェリスの言葉で我に返る。
「ああ、分か……む?」
フェリスの言葉に頷き、前方に目を向けた俺は、そこで言葉を止める。
「どうしたのですか?」
「ああ。いや……そこちょっと道幅が広がってるだろ?」
そう言って俺は前方を指差す。
ここから前方に100メートル程進んだ先にある、道幅が広がっている場所――いや、あれは小部屋と言うべきだろう。
それを指差した俺は、更に言葉を続ける。
「ランダムで生成される
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