第五話 第二階層に到達!

 その後も楽しく戦闘を続け、レベルは18になった。

 道中幾度となく分かれ道に遭遇したが、既に構造変化のタイミングを把握している俺の障害にはなりえなかった。

 迷うことなく、スムーズに進み、2時間程度で次の第二階層へと続く階段を見つけることが出来た。

 さっさと攻略したいのなら、道中にあった隠し通路でショートカットすれば良かったのだが、今回はあくまでも楽しむ為に来たのだ。

 そんなことをして、一気に第三階層の中間付近にまで行くとか、興ざめもいい所だからな。


「……それじゃ、行くか」


 魔物が出現しない階段でしばし休憩を取っていた俺は、よっこらせと立ち上がると、フェリスに向き直る。


「分かりました。第二階層へ行きましょう」


 フェリスもコクリと頷くと、立ち上がった。

 俺は視線を前方に戻すと、階段を下り始める。

 そうして階段を下り、俺たちは第二階層に足を踏み入れた。


「第二階層は第一階層とは違い、道中にランダムで宝箱がある。ただ、それに伴い罠もランダムで出現するようになる。落とし穴や、特定の石畳を踏んだら矢が飛んでくるとか、そんな感じの奴だ。まあ、フェリスからしてみれば脅威でも何でもないから、さしたる問題は無いな」


 迷宮に入る前にも話したが、取りあえず言っておこうって感じで、俺は忠告……と言うよりかは自分の好きなことを話すような感じで話す。


「ようやく宝箱が出るんですね。何が出るのか、楽しみです」


 フェリスは宝箱の中身が一番気になっているようで、わくわくといった様子でそう答えた。

 別に他の迷宮と比べたら、大したものは出ないんだけどな――と口に出かけ、ギリギリのところで押し留まる。

 あぶねー。流石にそれを言うのは無粋過ぎる。

 言っちゃったら、絶対何とも言えない顔されるだろうし。

 そのことを思い、内心ほっと息を吐くと、口を開いた。


「まあ、そうだな。いいのが出るといいな」


 宝箱に入っているアイテムが、ゲームの時とは違う可能性だって、無くはないんだ。

 どうせなら、そのことに賭けてみるのも悪くは無いだろう。

 希望を持ちながら探索した方が楽しいし、これくらいなら駄目でも全然割り切れる。

 そう思っていると、迷宮の両壁の傷等が変わった――いや、左右逆になった。

 どうやら丁度、左右反転の周期が来たようだ。

 休憩してたせいで曖昧になっていたが、これでまた正確になった。


「よし。行くか」


「分かりました」


 そうして、俺たちは第二階層の探索に乗り出すのであった。


「……来たか」


 少し歩いたところで、第二階層に入って初めて魔物と遭遇した。

 相手は棍棒――ではなく、切れ味の良さそうな剣を持ったゴブリン。

 こいつはゴブリンソルジャーというゴブリンの強化版みたいなやつで、レベルは18。数は5か。

 その数で、今の自分と同じレベルなら、これもまた苦戦はしないだろう。


「「「「「ギャギャギャ!!!」」」」」


 直後、俺の存在に気付いたゴブリンソルジャーたちが、群れをなして俺に突撃してきた。

 対する俺は、慌てることなく1歩後ろへ下がると、右手を前に掲げ――


「《操糸》」


 スキル名を唱えた。

 直後、俺の右手から細い糸が飛び出したかと思えば、一直線に前線にいた2匹のゴブリンの手足へと向かう。


「ギャァ!」


 だが、そう安易にやられてくれるほど甘い相手でも無く、手に向かっていた糸は斬られてしまった。

 今のレベルだと、出せる糸もそう多くないから仕方ないか……

 だが、そっちを斬ってしまうと、お前らのレベルじゃには届かないぞ?

 ニヤリと、俺は思わず悪い笑みを浮かべる。

 刹那、2体のゴブリンソルジャーの両足に糸が巻き付いた。

 そのことを感覚で察知した俺は、即座に糸を引く。


「グギャ!?」


「ギャギャ!?」


 足を引っ張られた2体のゴブリンソルジャーは、予想通り転倒し、後ろに倒れる。

 そして、背後にいたゴブリンソルジャーにぶつかり、そいつらもまた倒れる。

 言うなれば、これはドミノ倒しだ。

 そうして生まれた絶好の隙を、俺が見逃す訳が無い。


「はあああっ!」


 両手に片手剣を握り、地を蹴る。

 そして、倒れるゴブリンソルジャーたちに近づくと、正確無比な一撃をそれぞれの首に喰らわせた。


「グギャ……ァ……」


 そんな断末魔を残して、こいつらは鮮血を散らし――まもなくして魔石だけを残して塵と化した。


「ふぅ」


 戦いが終わった俺は、小さく息を吐く。

 そんな俺の横では、フェリスが神速の手捌きで魔石を回収していた。

 これも、最初と比べると随分と手際が良くなった。ただ拾うだけの動作だが、フェリス程のステータスを持っていると、魔石って結構簡単に砕けちゃうからね。あの速度で動きながら、壊さずに拾うっていうのは、実は意外と難しいのだ。

 こうしてみると、今更ながらフェリスって結構飲み込みが早いよな。レベル上げ兼技量上げの時だって、センスゼロと言いたくなるぐらい酷い戦い方だったフェリスが、たった1か月で大まかなところは問題なしと言えるまで改善したし。

 そうして弟子(?)の成長をしみじみと感じていると、魔石を回収し終えたフェリスがこちらに戻って来た。


「終わりました」


「ああ、ありがとな。それじゃ、先行くか」


「はい」


 そうして、第二階層における初戦闘も問題なく終わらせた俺は、フェリスと共に先へと向かうのであった。

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