第二章

第一話 報酬を受け取り、いざ迷宮へ!

 次の日の朝。

 俺とフェリスは一昨日あったスタンピード迎撃の報酬を受け取る為に冒険者ギルドに向かって歩いていた。

 あれは強制召集の依頼だったから、普通の依頼よりも報酬はいいだろうな~

 そうして臨時収入が入ることに内心浮かれながら冒険者ギルドに辿り着いた俺は、扉を開け、中に入る。


「おお……めっちゃ混んでるな。これ、皆報酬を受け取る為か?」


 冒険者ギルドは、過去最高と言ってもいいほど、人でごった返していた。

 受付前には長蛇の列が出来ており、このまま行けばその内冒険者ギルドの外にまで列が伸びてもおかしくは無いだろう。


「本当ですね……どうしますか?」


 目を丸くしながら列を眺めるフェリスは、思わずといった様子でそんな問いを投げかけて来た。


「どうするって言っても……この後迷宮に行くし、報酬貰えるのは明日までだから、並ぶしかないな」


 フェリスの問いに、俺は頭を掻きながらそう返した。

 俺の言葉に、フェリスは「ですね」と同意する。

 そうして、俺は朝っぱらから面倒なことだと思いつつも、この長蛇の列に並ぶのであった。


 列に並び、待つこと実に30分。

 ようやく俺たちの番が回って来た。


「強制召集の依頼の報酬を受け取りに来た」


 そう言って、俺とフェリスはそれぞれ冒険者カードを取り出すと、受付嬢に提示する。

 一方、冒険者カードを受け取った受付嬢は、いつもの依頼と同様に水晶の上に冒険者カードを1枚ずつかざして記録していく。


「……はい。Dランク冒険者ですので、報酬金は銀貨1枚になります」


 受付嬢は銀貨を2枚取り出すと、冒険者カードと一緒に、俺たちに返してくれた。


「ありがとうございまーす」


「ありがとうございました」


 そう言って、俺とフェリスは受付から離れるのであった。

 受付から離れた俺は、銀貨1枚を見やると、口を開く。


「うん……何とも反応しづらい金額だ」


 銀貨1枚――即ち1万セル。

 普通の依頼よりは高いのだが、驚くほどのものではない……といった具合だ。


「仕方ありませんよ。これだけの人数に渡すとなると、これでも結構な額になっていると思いますし、ギルドだって私たちが本当に強制召集に応じたのかは知りませんから」


「まあ、そうなんだけどさ~」


 宥めるように言うフェリスの言葉に、俺は軽く息を吐く。

 この中には絶対、強制召集に応じてないのに金を受け取った奴がいる筈だ。

 ちゃんと行った身としては業腹だが、あれだけの人数がいると、案外バレないんだよね。

 まあ、案外ってだけで、別に絶対と言う訳ではない。

 現に――


「おい! お前居なかっただろ!」


「い、居たってば!」


「嘘つけ! 誰も見てねぇぞ!」


 冒険者たちによって吊るし上げられ、ガラックさんに首元掴まれて引きずられる哀れな冒険者の姿がそこにはあった。

 ああなったら最後、評判的な意味でこの街には居られなくなるだろう。

 あれにも冤罪の可能性はあるが……流石にそこまで追ってたらキリが無いし、自白剤とかで吐かせたら大体合ってるだろ。


「ま、ご愁傷様」


 心の中で、俺は哀れな冒険者に合掌した。

 さて、そんなことはさておき、これからは――


「早速迷宮に行くか」


「そうですね」


 頷き合うと、俺とフェリスは混沌とした冒険者ギルドの外に出た。

 そして、何気に利用したことのない南門の方へと向かう。


「……ああ、そう言えばまだ反転の迷宮について教えてなかったな。事前知識無しでも余裕だろうが、一応教えておくよ」


「ありがとうございます」


「うん。まず、反転の迷宮の1番の特徴は、一定時間ごとに迷宮の構造が左右反転するんだ」


「左右反転……?」


 俺の言葉にピンと来ていないようで、フェリスは不思議そうに首を傾げる。


「ああ。鏡映しとでも言えばいいだろうか。まあ、3分に1回のペースで構造が変わるんだよ。右にあった分かれ道が、突然左側になったりするから、気を付けた方が良い」


「なるほど……」


 顎に手を当て、コクコクとフェリスは頷く。


「逆に、それ以外は特筆するべきことは無いかな。出てくる魔物も大して強くないし、迷路もそこまで複雑ではない。罠は第一階層とボス部屋がある第四階層以外の第二、第三階層に点在しているが、ちゃんと見ていれば問題ないし、そもそもフェリスなら引っかかっても死なない」


 反転の迷宮に出てくる魔物は、1番強い奴でもレベル32。負ける道理は無い。

 罠も、落とし穴や特定の石畳を踏んだら横から矢が飛んでくるような単純なやつ。

 前にも言ったが、本当にあそこは息抜きに丁度いい迷宮だ。


「初挑戦にはピッタリの迷宮ですね」


「だな。俺も少し、楽しみだ」


 ニコリと笑いかけるフェリスに、俺も柔らかな笑みを浮かべるのであった。


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はい!と言う訳で始まりました第二章。

予定文字数は同じく10万文字だが、果たしてどうなることやら……

モチベとカクヨムコンの受賞に繋がりますので(←ここ大事)是非★★★のポチポチやフォローをしてください!

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