第三十話 膝枕……だと!?
「……ん……ん……ん?」
段々と意識が覚醒してきた俺は、ゆっくりと目を開いた。
あれ? 俺は確か――
……ああ、そうだ。
光属性魔法を習得する為に森へ行って、聖騎士に転職し、更に可能な限りレベル上げをしたんだった。
そして、そのあとは……宿に帰って……
「あ、大丈夫ですか? レオスさん」
そうだ。フェリスに《
心配そうに俺の顔を覗き込むフェリスの顔を見て、ようやく全てを思い出した俺は口を開く。
「あ、ああ。大丈夫だ。心配かけたな。それで、今の様子は……ああ」
妙に柔らかい頭下。フェリスが後ろから覗き込んでいる。
うん。確定だ。
どうやら俺は、フェリスに膝枕されているらしい。
すると、俺の表情をどう受け取ったのか、フェリスが慌てたように弁明する。心なしか、頬も赤い。
「あ、あの。本当はベッドに寝かせたかったのですが、私はあまり力がないので……い、嫌だったらすぐにどきます!」
「いや、気を使ってくれて、むしろ嬉しいよ。ありがとな」
可愛い女の子に膝枕されて、嫌がる訳がないだろ。
てか、今更ながらフェリスって随分と自虐思考だな。何と言うか、自分のことを卑下しているというか……
多分、村でも色々とあったんだと思う。
まあ、人の地雷原を踏みに行く趣味はないので、聞かないでおこう。
「よっこらせっと。んで、調子はどうだ?」
起き上がった俺は、フェリスの方を向くと、そう問いかける。
「はい。レオスさんが治してくれたので、大丈夫です」
「なら良かった。じゃ、またここで待っててくれ。次は服を買ってくる。流石にその恰好で歩いてたら、白い目で見られるからな。……主に俺が」
俺が着ていた時でも、一部の人から変な目で見られたのだ。フェリスの場合は、それがより一層激しくなり、面倒ごとに巻き込まれる可能性が非常に高い。
そして俺は俺で、自分はそこそこいい服を着ながら、辺境の村に住む人が着るような服を着たフェリスを連れていたら、何アイツみたいな目で見られること間違いなしだ。
流石にそんな目で見られまくったら、俺のメンタルが崩壊する。あの時でも結構辛かったのに、それ以上になったら――うん。マジで恐ろしい。
「分かりました。あの……色々とすみません!」
俺の必死さを感じたのか、フェリスは申し訳なさそうに頭を下げる。
「謝る必要はないって。それに、フェリスには後で存分に手助けをしてもらう予定だからな。その先行投資とでも思えば、安いものだ」
フェリスが持つ《堕天》はマジもんに凶悪なスキルだ。
相手へのデバフ。これだけでも戦闘においては普通にありがたいのに、そのデバフの分だけそっくりそのままこっちにバフがかかるとか、普通にチート。
ストーリーキャラであるフェリスだからこそ許されていたスキルの恩恵を受けられるとか、マジで最高だ。
あと、《堕天》だけに目を引っ張られがちだが、その他のスキルも普通に強力で、最終的には双大剣をぶん回しながら空中戦を仕掛けてくる化け物と化す。
転職して更なる力を授けたい気持ちはやまやまだが、ストーリーオリジナルの職種である都合上、転職したらもう一度”堕天使”になれるか分からないので、止めておくとしよう。
そんな一か八かの賭けは、流石にやりたくない。
「じゃ、行ってくる」
そう言って、俺はリュックサックを背負うと、普通にドアから外に出た。
今晩分の宿代はまだ払ってないから、一旦ここで金を払っとかないと、面倒なことになるからね。
「おや? 遅かったね」
階段を下りると、厨房にいた宿の女将さんからそう言われた。
「ああ。ちょっと寝不足だったせいで、長く寝てた。あ、これ今晩分の宿代」
あらかじめ考えておいた嘘で上手いこと誤魔化しつつ、俺は今晩分の宿代を女将さんに渡す。
「まいど。それじゃ、気を付けてね」
「ああ。行ってくる」
そう言って、俺は宿の外へ出て行った。
そして、そのまま前に行った冒険者御用達の装備品店へと向かう。
そうして歩くこと数分後、店に辿り着いた俺は中に入ると、フェリス用の服を探し始めた。
「ん~服か。まあ、無難に魔法師っぽい、ローブ系にしようかな? 杖も持たせれば、よりそれっぽい感じになる」
フェリスにはサポーターをやってもらおうと思ているので、サポーターっぽい服装を選ぶとしよう。
イメージとしては、”呪術師”や”付与術師”って感じかな?
役割も、大体その2つを合わせたような感じだし。
そんな感じで悩むこと約1時間。ようやく決めることが出来た。
服を決めるのにここまで悩むとは、流石に思わなかった。
俺って、服装には全然こだわらないタイプだかね。評判のよさげなやつを適当にネットでポチポチして買ってたんだよなぁ……
さて、そんな話は置いといて、俺が選んだのはこれ!
まずは普通に紺色のローブと中に着る動きやすさ重視の服。サイズも、ちゃんと公式設定資料集を参考に決めてあるため、バッチリだ。
そして、先端に小さな水晶体がある、1.2メートル程の木の枝が絡み合って出来たような杖。魔法及び一部スキルの効力を僅かに上げる効果を持っており、現状のフェリスにはピッタリの道具だ。
合わせて17万8000セルもしたが、後悔は無い。
装備に使う金をケチって、死んだら元も子もないからな。
「さて、帰るか」
そう言って、俺はリュックサックの中に買ったものを入れると、再び宿に戻るのであった。
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