第二十九話 フェリスの想い

 フェリス視点


 私は――今思えばとても長閑な村で、幸せな生活を送っていた。

 ”堕天使”という、誰も聞いたことのない不吉な職種を持っていたせいで、一部の人たちからは嫌われていて、肩身の狭い思いをしていたけど、”普通”に過ごせていた。

 友達も、少ないけど数人居た。

 ラウラ、レイナ、ダーク・クリムゾン……

 でも、外聞に悪いとか言ってパーティーメンバーに入れてもらえなくて……申し訳なさそうに言ってたけど、それでも悲しくて。

 感情のままに逃げ出し、村の外を歩いていた所を連れ去られ――

 それからは酷かった。

 教育するとか言って、毎日のように鞭を打たれ続け、暗くて汚い牢屋に放り込まれた。

 回復不能な怪我や強姦などをされなかったのは、私が”商品”――つまりは奴隷という扱いだったから。

 それでも辛いことには変わりなく、いっそのこと死んだら楽になるのではないかと思ってしまうこともあった。

 そんなある日のこと。

 私は彼に――レオスさんに救われた。

 レオスさんは、とても強かった。

 たった1人でアジトに乗り込み、制圧したらしい。

 そこら中に転がっていた死体が、その事実を雄弁に告げていた。

 一方、レオスさんには傷1つついていない。

 こんな凄いことを事無げも無く成し遂げ、救ってくれたレオスさんに、恩返しをしたいと思った。

 そしたら、レオスさんが言ってくれた。

 仲間にしたいって。

 とても……嬉しかった。

 あの後服装に気が付いて隠れ、あんなこと言っちゃたけど……レオスさん。不快に思ってないかな?

 後で謝らないと。

 そして、レオスさんの為に頑張らないと。


「レオスさん……」


 レオスさんから貰った服に手を通した私は、その場で座り込みながら――頬を、赤く染めた。


 ◇ ◇ ◇


 日が僅かに昇って来た頃――

 俺は寝不足の中、何とか足を動かしていた。


「グルアアァ!!!」


 道中魔物が襲ってきたが、この辺に出てくる魔物は大した奴じゃない。

 不調な俺でも余裕で倒せる。


「はあっ……と」


 俺は気怠げに片手剣を振るうと、襲ってきた魔物を片付けた。

 そして、ようやく森を抜けた。


「ああ……流石に眠い……」


 俺は目を細めながら、のっそのっそと森を出るとそう言った。

 流石に一睡もせずに魔物を倒し続けるのは無茶過ぎたな。

 マジで……眠い。

 早く宿に帰りたい……


「あ、一応ステータス見とこ……」


 こんな極限の状態でも、ステータスを見たいという好奇心には勝てず、俺は歩きながら自身のステータスを見た。


▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

【名前】レオス

【種族】人族

【職種】聖騎士

【レベル】81

【状態】健康

【身体能力】

・体力1089/1089

・魔力1089/1089

・筋力1186

・防護1186+300

・俊敏992

【魔法】

・光属性レベル7

【パッシブスキル】

・暗視レベル9

・物理攻撃耐性レベル8

・光属性魔法耐性レベル6

・防護力上昇レベル3

【アクティブスキル】

・付与レベル9

・鑑定レベル9

・幻術レベル9

・大剣術レベル9

・身体強化レベル5

・即応レベル4

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


 うん。結構上がってるね。

 てか、今回持ち越せたのは《幻術》か……

 2回連続運がいいな。

 この調子で次は光属性魔法を持ち越せることを祈ろう……

 ……ああ、ねみぃ……

 ねみぃ……


「……おっと」


 余りの眠気に、思わず体勢を崩してしまった。

 これはマズいな。

 限界を迎える前に、早く帰らねば……


「ちょっと……走るか」


 怠いが、このまま歩いていたら、途中で倒れて眠ってしまうかもしれない。

 そしたら、この世界のことだし、身包み剥がされたり、誘拐されたりなんてことも……!

 流石にそれは避けたい。

 そう思った俺は、少し気合を入れると、足に力を入れ、走った。

 そうして門まで辿り着いた俺は、門番に心配されながらも冒険者カードを見せて、中に入る。


「よし。やるか。《幻術》」


 スリエに入った俺は《幻術》で姿を隠すと、猛スピードで屋根の上を駆け抜けた。

 そうすることで、あっという間に宿に到着した俺は、窓から部屋に侵入する。


「ふぅ……やっと、帰ってこれた……」


 部屋に入った俺は《幻術》を解除すると、その場に両手両膝をつく――が、直ぐに起き上がると、ベッドの横で幸せそうに眠るフェリスに駆け寄った。

 そして、即座に《回復ヒール》――ではなく、その上位にあたる《大回復グレートヒール》を使う。

 すると、フェリスの怪我はみるみる内に治り、更に汚れも消えていった。


「ああ、良かった」


 治ったことに、俺は安堵の息をつくと、自身にも《大回復グレートヒール》を使った。


「ふぅ……流石に今日は今までで、一番、疲れ……た、な――」


 バタリ


 とうとう限界を迎え、俺はその場に倒れると、意識を失ってしまった。

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