第二十八話 フェリスが仲間になりました
「うぅ……」
どこか消え入りそうな声で、恥ずかしがるようにして俺の後ろを歩くのはフェリスだ。
そして、俺はどこか居心地の悪さを感じながらも、宿へと向かって歩いていた。
まあ……恥ずかしいよね。
周りのこと気にせず泣いたら、いざ落ち着きを取り戻した時、めちゃくちゃ恥ずかしくなるよね。
うんうん。分かるよ分かるよ。
そう、頭の中で思いながら、俺は黙々と歩き続ける。
そうして歩き続ける事約15分。
ようやく宿についた俺は、フェリスと共に部屋へと向かった。
当然今も、《幻術》と《付与》は発動したまま。
ただ、そろそろ魔力的にヤバいので、部屋に入ったら流石に解除しよう。
「よし。ようやく落ち着いて話せる場所についた……!」
ドアを開け、中に入った俺はそう言うと、《幻術》と《付与》を解除する。
いやー危なかった。
思ったよりもフェリスが泣いちゃってたせいで、ギリギリだったよ~。
「さて、一先ずそこに座って。今後の君について、話さないといけないから」
そう言って、俺はベッドの淵を指す。
だが、フェリスは「この服では汚れてしまいますよ」と言い、断った。
俺は、それもそうかと頷くと、ベッドの淵に座った。
「さて、その前に……君のステータスを鑑定してもいい?」
「あ、はい。構いません」
俺の問いに、フェリスはコクリと小首を下げて頷く。
そのことに俺は礼を言うと、フェリスに《鑑定》を使い、ステータスを見た。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
【名前】フェリス
【種族】人族
【職種】堕天使
【レベル】10
【状態】健康
【身体能力】
・体力130/130
・魔力140/140
・筋力140
・防護130
・俊敏130
【魔法】
・無し
【パッシブスキル】
・状態異常耐性レベル1
【アクティブスキル】
・堕天レベル2
・鑑定レベル2
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
うん。ゲームと同じように、フェリスの職種はストーリーキャラオリジナルの”堕天使”だった。
堕天使が職という括りに入るのかは、甚だ疑問に思うところだが……まあ、今考えても無駄だろう。
どうせ開発部に、嘗ての俺みたいな厨二全開の奴が居たに違いない。
「あ、あの……何かあったのですか?」
クククと笑みを浮かべる俺を見て、フェリスは訝しげにそう問いかけて来た。
ああ、完全に笑い方が不審者だったな。
失敬失敬。
さて、確認も終わったし、本題に入るとしよう。
「ああ。実は、君を冒険の仲間に加えたいと思ってな。君の――いや、フェリスの職種はかなり強いんだ」
名前を言うことへの気恥ずかしさから、ずっと”君”と言っていたが、流石にこれ以上他人行儀な言い方をするのはあれだろうと思い、呼び方を”フェリス”に変えた。
俺の言葉全てに驚いたようで、フェリスははっと目を見開くと、視線を横に逸らす。
「そ、そうなんですか? 皆、私の職種のこと、気味悪いって言ってましたよ?」
「そうなのか? ……いや、おかしくはないか」
そうだった。
ここは現実だ。
普通に考えて、見るからに悪に堕ちたような”堕天使”という職種を持っている人がいたら、気味悪がる人の1人や2人、居るはずだ。
俺が最初に持っていた”死霊術師”も一部界隈では気味悪がられてたらしいからな。
だが、俺からしてみればそんなの関係ない。
職種が気味悪いから、その職種を持っている人を邪険に扱うとか、全くもって意味わからん。
「そんなの関係ない。強いから、仲間にしたいと思っただけだ。それで……どうかな?」
頼む、頷いてくれ!と思いながらも、その思いは顔に出さずに問いかける。
仲間にしたいとは言ったが、だからと言って無理やり連れて行きたいとは思っていない。
フェリスが他にしたいことがあるのなら、そっちを優先させるつもりだ。
押し切る感じで連れてったところで、居心地悪いだけだしな。
「いえ、むしろ行かせてください。助けてもらった恩を返したいので」
消極的な態度を取っていたフェリスが、急にぐいっと顔を前に出すと、力のこもった声でそう言った。
「そうか。ありがとな。なら、まずは服をどうにかするか。あと、体も。流石にそれじゃ色々とマズいからな」
そう言って、俺はフェリスの体を指差す。
色々とあったせいでほとんど見ていなかったが、今のフェリスは割ときわどい恰好をしている。
ボロボロの布着を着て、その端々から見える素肌には、痣が無数にあった。
「は、はうぅ……エッチ」
自分の恰好が相当ヤバイ状態であることにようやく気が付いたのか、フェリスは体を腕で覆い隠すと、ベッドの陰にしゅっと身を潜める。
うん。やっぱり仕草が一々可愛い。
「だが、このままじゃマズいな。《
そう言って、俺はリュックサックから以前着ていた服を取り出すと、その場に置いた。
そして、そのまま窓枠に足をかけると、外へ飛び出して行った。
向かう先は、スリエの森。そこでレベルを100にして、光属性魔法が使える職種に転職するつもりだ。
光属性には超有用な回復魔法があるからな。
あれを持ち越せれば、めちゃくちゃ美味しい。
「よし。頑張るぞ!」
こうして《幻術》で姿を消した俺は、屋根を跳び越えながら、かなりの速度で森へ向かうのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます