第二十六話 遂に――見つけた
「はっ!」
俺は部屋を跳びだすと、他の部屋へも行き、そこに居た幹部らしき人たちの首を落とした。
《幻術》で俺の姿は一切見えておらず、また気配隠蔽の《付与》によって気配も薄くなっている為、彼らは何が起きたのかすら分からぬまま、命を落としたことだろう。
「はっ」
俺は息を整えると、更に殲滅を続ける。
隠蔽をもっとも重視しているお陰で、これだけ殺しているのに今だ気づかれていない。
やはり、”幻術師”はアタリだったな。”暗殺者”の方が隠密性には優れているが、尋問のことまで考えると、結局”幻術師”の方に軍配が上がる。
「よし。後は入り口の奴らと地下か?」
一通り殲滅しつくしたと判断した俺は、即座に入り口の方へと向かう。
そして、飲んだっくれているそいつらを見ると、前方に手を掲げ、魔法名を紡ぐ。
流石にこの数を剣で処理するのは――中々残酷な言い方にはなるが、面倒だからな。
「《
直後、虚空に無数の黒剣が出現したかと思えば、勢いよく飛び出し、奴らを襲う。
「な!? ぐあああっ!」
「ぎゃああっ!」
魔法による急襲に、奴らは為すすべなく体を貫かれ、死んでいく。
やがて断末魔は消え、この場に静寂が訪れた。
「……はぁ。人殺しに慣れるって、こういうことを言うのかなぁ」
俺は前方に広がる死屍累々としか光景から目を背けると、そう呟いた。
人殺しなんて、平和な日本で生きてきた俺からしてみれば、忌避感しか感じないものだった。
だが、今や忌避感はほとんどない。
勿論、悪人以外を殺すことは断固として嫌だとは思っているが……
「まあ、この世界で生きていく以上、その辺の覚悟は持っといた方が良いからな。人を前に剣を振るのを躊躇って、隙をつかれて死んだりしたらマジでシャレにならない」
そう言って、左手で頭を掻くと、俺は地下に向かって歩き出した。
◇ ◇ ◇
「はっ はっ はっ」
例の如く《幻術》で姿を隠しながら、俺は地下の制圧を進めていた。
地下にも、上程ではないが、そこそこの人数はいた。それも、さっきの奴らより――強い。
だが、俺からしてみれば、それは誤差でしかない。
そんなことを思いながら、俺は黙々と片手剣を振るい、構成員を殺していった。
「……あ、宝物庫だ」
やがて、こいつらが集めたであろう貴金属類や金が乱雑に置かれた部屋に辿り着いた。
ちょうどいいし、持てるだけ貰って行こう。
俺はいい臨時収入になったと笑みを浮かべながら、一番使い道がある硬貨をリュックサックの中に放り込んでいく。何気にこのリュックサックも、村から持ってきたものではなく、新しく買い替えたものだ。
貴金属類は……俺みたいなやつが売りに行ったら、盗んだのではないかと疑われてしまいそうだから、やめておこう。
厄介事はごめんだ。
「よし。こんなもので良いだろう」
あんまり持ちすぎてもマズいかなと思った俺は、大体30万ほど掻っ攫うと、次の場所――俺がここに来た本当の目的の場所へと向かう。
「頼む。居てくれよ……」
俺はそう祈りながら、狭い通路を進んでいき、やがて1つの部屋に辿り着いた。
そこは、端的に言えば牢獄だった。
《暗視》が無ければ何も見えないぐらい真っ暗な部屋の中には牢屋がいくつもあり、異臭も漂っている。
俺は左の片手剣を鞘に納めると、鼻を押さえながら奥へと進む。
「……居ないな……」
牢屋を1つ1つ丁寧に確認していくが、そこには誰もいない。
「もうここで最後だぞ……」
そして、とうとう最後の牢屋に来てしまった。
俺は、「あれ? もしかしてゲームと違ってフェリス居ないの? それはショックなんだけど……」と冷や汗を掻きながら、そっと牢屋の中を覗いた。
すると、そこには奥に蹲る人の姿があった。
あの顔、あの髪色。
間違いない。
彼女は――フェリスだ。
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