第二十四話 幻術って対策必須クラスなんよ

『レベルが24になりました』


 序盤で高レベルの魔物を撃破したお陰で、一瞬でレベルが24にまで上がった。

 うん。いいね。

 これからも、この方法で転職をしていくとしよう。

 さて、ステータスはどうなっているかな?


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【名前】レオス

【種族】人族

【職種】幻術師

【レベル】24

【状態】健康

【身体能力】

・体力308/308

・魔力340/340

・筋力250

・防護308

・俊敏308

【魔法】

・無し

【パッシブスキル】

・暗視レベル3

・恐怖耐性レベル2

【アクティブスキル】

・付与レベル3

・鑑定レベル3

・幻術レベル3

・実体化レベル1

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「お、レベル24でこのステータスか。やはり、着実に強くなってきている」


 転職するたびにステータスの上昇率が上がっているお陰で、今の俺はレベル24らしからぬステータスへとなっている。

 だが、まだまだこれは序盤だ。

 いずれはもっと凄いことになるはずだからな。

 うん。楽しみだ。


「さてと。じゃ、急いでここから離れるか。流石にここに長居してたら死にかねない。《幻術》《付与》」


 いくらステータスが上がったとは言え、流石にここ周辺に出現する魔物には、マジで手も足も出ない。

 てことで――さっさとずらかれ~!

 俺は《幻術》で自身の見かけ上の姿を5メートルほど右にずらすと、全速力で走り出した。

 更に、自分自身に身体強化を付与している為、速度も本来よりちょっと速い。

 だが、ここに出てくる魔物はそんな俺よりもずっと――速かった。


「キシャアアアアア!!!」


 木陰から跳びだす、アナコンダ以上に大きな漆黒の大蛇。

 大蛇は大きく口を開けると、俺――の幻影をパクリと飲み込む。

 ひ~怖っ

 怖すぎだろ……

 たった5メートル横で俺の幻影が飲み込まれる姿を見て、俺は背筋が凍るような思いに陥る。

 だが、呆けていては駄目だ。

 早く、次の行動に移さないと。

 そう思った俺は、即座に自身の幻影を消すと、再度自身の幻影を生み出す。

 レベル差関係なしに通用するのが《幻術》の凄い点なのだが、それでも今の《幻術》では、少し違和感を持たれただけで、直ぐに看破されてしまう――言わば諸刃の剣だ。

 何せ、これは姿をずらしているだけ。故に、足音や気配等の姿以外のどれかを感知されれば、一発アウトなのだ。

 だから、早々に撒いてしまわねば。


「魔力的に、あまり乱発は出来ないが……《幻術》」


 俺は再び《幻術》を行使する。

 すると、幻影の俺が、俺の進行方向とは正反対の方に向かって走り出した。

 そして、大蛇もそれに追従するように追いかける。

 今のレベルなら、あんな感じで幻影を自由に動かすことも一応出来る。

 ただ、操作範囲は限られてくるし、魔力もゴリゴリと削られる。


「頼むよ……」


 俺は走りながらそう、祈り続けた。

 やがて直ぐに操作範囲外に出てしまい、幻影が消える感覚を感じた。

 だが、ここまで来れば流石に大丈夫だ。

 俺は後ろから音が聞こえてこないことに安堵の息を吐きつつも、走り続ける。

 ……てか、こんなことになるんだったら、あの岩亀をもうちょっとこっちに持って来てから殺れば良かったな。

 そうすれば、こんな苦労すること無かったのに!

 だがまあ、ここは俺の職種が幻術師であったことに感謝するしかないな。

 もし他の職種だったら、最悪成すすべなく殺られてたかもしれないし。


「この失敗は、次にいかそう」


 その日の対戦を振り返って、改善すべきことを改善する。

 これは、俺が嘗て毎日のようにやっていたことだ。

 当時のことを思い出し、俺は思わず懐かしく感じながらも、走り続けた。

 そうして一度も戦闘することなく、無事に今の俺でも倒せる魔物が出る区域に入ることが出来た。


「よし。ここからは殺戮タイムじゃ!」


 逃げ回るのは、俺の性には合わない。

 その分の借りを返すことも兼ねて、本気で戦ってやる。

 幻術師自体はそこまで強くないが――《幻術》はレベルを上げれば相当強くなる。

 対戦環境では常に上位――対策必須クラスと言えば、その強さが分かるだろう。

 てか、ぶっちゃけこいつは対策してなかったらマジで死ぬ。

 普通に死ねる。

 僅かな差で勝敗が決まるような魔境で、本物と遜色ない幻を出されるとか、対策してなかったら発狂もんよ。

 俺は、かつて対策せずに対戦に潜り、フルボッコにされた苦い過去を思い出すと、魔物たちに襲い掛かる。


「ブフォオオ!!!」


 まず目の前に現れたのはオークの群れ。

 オークは俺を見るや否や、即座に臨戦態勢となると、俺めがけて棍棒を振るう――が、それは俺が先行させていた幻影であったが故に、ふっとすり抜けてしまった。


「はあっ!」


 棍棒を振り下ろすことで、隙が生まれたオークの腕に跳び乗ると、両手の片手剣を振るい、オークの首を落としていく。


『レベルが29になりました』


「いやー楽だ。対策してない同レベルの相手なら、これでも割と無双できる」


 俺はオークの討伐証明部位である右の牙を切り取りながら、満足げに言う。

 残念なことに、今のレベルでは、オークでも一応幻影を看破することは出来るだろう。

 だがさっきみたいに、ほんの少し前を先行させていれば、相手は足音や気配等は幻影から出ていると誤認してしまい、看破できなくなってしまうというわけだ。


「さーてと。この調子でやるか~」


 そう言って、俺は2本の片手剣を振り続け、レベルを上げ続けるのであった。

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