第二十三話 さて、次の職種は……
管理人……と言うよりかは冒険者ギルド所属の回復術師がやって来てくれたお陰で、部屋から出ることが出来た俺は、早速行動に移す。
どの職種に転職するにしても、必ず今の職種をレベル100にしないといけないからな。
幸い、既に今のレベルは89。レベル100になるのに、そう時間はかからないことだろう。
それに、死霊術師よりも、こっちの方が圧倒的に戦いやすいし。
そうして、俺は冒険者ギルドを出ると、一直線に森へと向かった。
「よし。ドラゴン……まあ、上位龍でも倒しとけばいいだろ」
森に辿り着いた俺は、一気に深い所まで《付与》で自身の体に付与した身体強化を生かして走っていく。
強化倍率は、純粋な戦士職のそれと比べるとやや劣るが、今ならそれでも十分だ。
そうしてちょくちょく魔物を薙ぎ払いながら、深い所まで来た俺は、前方に見えて来た体長15メートル程のドラゴンを見据える。
レベルは75といったところかな?
「ふぅ。やるか」
俺は《付与》で自分自身に気配隠蔽を施すと、右回りで一気に近き、腰に差していた2本の片手剣を抜く。
これが、かつてオンライン対戦で死闘を繰り広げて来た俺本来の武装だ。
「はあっ! はあっ!」
両手に構えた片手剣をそれぞれ振るい、ドラゴンの腹を斬り裂く。
「ギャア!? ガアアアァ!!!」
死角から――それも気配が隠蔽されていたこともあり、完全に不意を突かれることとなったドラゴンは、一瞬の困惑の後に苦悶と怒りの咆哮を上げる。
あの咆哮には《威圧》の効果がかかっており、このドラゴンよりもレベルが低ければ低いほど、受けた時の硬直時間が長い。
まあ、このドラゴンよりもレベルが高ければ、全く効かないけど。
「はっ はっ はっ」
空中に無属性魔法の《
2つの片手剣には攻撃力上昇と防護力上昇の効果がエンチャントされている為、素材以上の斬れ味と耐久性を兼ね備えている。
故に――
「ギャアアアア!!!」
ドラゴンは更なる苦痛で暴れる。
俺はその動きを持ち前のプレイングスキルで回避すると、とどめの一撃を首に放った。
「ギャアァ……」
2本の片手剣が、ほぼ同時に一か所を攻撃するという、純粋に難しくて強い技で、俺はドラゴンの首を断ち斬った。
ドラゴンは力なく地面に倒れ――息絶える。
『レベル90になりました』
「ふぅ。やっぱ能力強化系の職種は戦いやすくていいな」
地面に下り立った俺は、地面に力なく横たわるドラゴンを見ると、そう呟く。
付与術師はバランスよく様々な能力を強化できる、割と有能な能力だ。
ただ、《身体強化》や《金剛》等のある一点のみを強化するスキルや魔法と比べると、出力が落ちてしまうが故に、オンライン対戦ではほとんど使われていない。
それでも、《付与》によって強化しておいた武器防具を使うのはもはや必須事項であったが故に、この職種に感謝している人は俺含め、めちゃくちゃいると思う。
「特に、現実世界となった今では、必須と言っても過言ではないかな」
そう言って、俺は
服には防護力上昇を付与してあるが、その副効果なのか、血などの汚れが一切つかないのだ。
《付与》はその物質を薄い膜で包み込むように発動していることからもしやと思ったが、まさか本当になるとはね。
これは嬉しい誤算だった。
「さーてと。この調子で、魔物――特にドラゴンを積極的に狩ってくか」
そう言うと、周囲の音に耳を澄ませ、走り出した。
◇ ◇ ◇
『レベルが100になりました』
「ふぃー終わったぜ~」
魔物を倒し続け、そこまで時間をかけずにレベルを100にすることが出来た俺は、額に付いた汗を手で拭う。
さてと。今のステータスはどうなっているのだろうか……
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
【名前】レオス
【種族】人族
【職種】付与術師
【レベル】100
【状態】健康
【身体能力】
・体力1140/1120+20
・魔力1730/1230+520
・筋力1010+20
・防護1010+20
・俊敏1120+20
【魔法】
・無属性レベル6
【パッシブスキル】
・暗視レベルMAX
・麻痺耐性レベル10
・無属性魔法耐性レベル8
・魔力総量増加レベル5
・常時再生レベル2
・ステータス全強化レベル1
【アクティブスキル】
・付与レベルMAX
・鑑定レベルMAX
・合成付与レベル9
・体術レベル7
・回避レベル4
・予測レベル3
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「ま、順調に上がってるな」
ステータスの値の上昇率も、転職に伴い、ちゃんと上がっている。
この調子でどんどん転職しつつ、レベル上げをしていこう。
さて、次の転職先だが、それは既に決めてある。
が、その前に準備をしておかないと。
「今回はもうちょっと楽をしておかないとな。と、言う訳で……」
そう言って、俺は片手剣を構えると、地を蹴り、走り出した。
そして、前方に現れて来た魔物――大きな岩の甲羅で覆われた亀を見つけるや否や、一気に攻め立てる。
レベル差の暴力とプレイングスキルの暴力が相まってか、あっと言う間に体力が減っていき――残り僅か3になったところで手を止めた。
本当は1にしたかったのだが……そこまで上手く調整できる自信は流石に無い。
「よし。次に、《
直後、その魔物を半透明な魔力のロープで雁字搦めに拘束し、逃げられなくする。
よし! 後は体力が回復され、逃げられてしまう前に転職しなければ!
そう思った俺は、即座に転職の指輪を使って、自身の職種を付与術師から幻術師に転職する。
『転職の指輪により、付与術師から幻術師へと転職しました』
『レベルがリセットされます』
『暗視が持ち越されました』
『付与が持ち越されました』
よし。どうやら今回も無事転職できたようだ。
にしても、今回は《付与》を追加で持ち越せたか。
これは普通にアタリだな。
《身体強化》等の必須スキルや魔法が来るまでは、相当重宝することだろう。
「おっと。急がないと」
なにせ今の俺はレベル1。
この付近に居る魔物相手では、逆立ちしたって勝ち目がない。
だから、急いでレベルを上げなければ……!
「はあっ!」
俺は片手剣を1本構えると、勢いよく前方で拘束されている魔物――ロックタートルめがけて投げつける。
そうして勢いよく飛んだ片手剣は、ロックタートルの眉間に――刺さった。
「ギュアアアァ!!!」
ロックタートルは苦悶の声を上げ――そしてばったりと力尽きた。
その後、《
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