第十九話 めっちゃ腹減った……ヤバい
遅いなぁって門番に言われながらも、スリエに帰還した俺は、ダッシュで冒険者ギルドへと向かう。
そして、冒険者ギルドの中に入ると、昨日よりもやや早歩きで受付へと向かった。
「う、腹減ったぁ……」
列に並んだ俺は、腹を擦りながらそう言う。
何しろ、俺は本日昼食を取っていないのだ。
保存食の燻製は、昨日で尽きちゃったからね。
だったら昼に一旦帰ってこれば良かったじゃないかって話になるのだが……ちょっと辞め時が無くてね。
次で一旦帰ろう。次で一旦帰ろうと思いながら戦い続け、気が付けばもう夕方だ。
それで、もう夕方だったら仕方ない。レベル100になりまで突っ走るか!となり、結果極度の空腹状態となっていると言う訳だ。
「やべぇ。今にも倒れそうだ……」
そんなことを言いながらも、俺は列に並ぶ。
いやー気持ちとしては、飯を食ってから並びたいよ。
ただ、今は金が無くてね。ゴブリンの討伐依頼の達成報告をして金を貰わないと食事にありつけないのだ。
俺は何も考えないという無の極致(?)に立つことで空腹を感じないようにしながら待ち続け――ようやく順番が回って来た。
「どうぞ。ゴブリン討伐の依頼です」
俺は受付の上にゴブリンの右耳が入った革袋をドサッと置くと、急ぐよう受付嬢に目で訴える。
受付嬢は、俺のただならぬ気配を感じ取ったのか、急いでゴブリンの右耳の数を数える。
昨日の2倍ぐらいだろうか?
そう思わせるぐらい、受付嬢の手捌きは速かった。
俺の顔を見て、「ひぇ」と声を漏らしたような気がしたが……まあ、気のせいだろう。
やがて、56個の右耳を数え終えた受付嬢は、これまた手早く依頼達成を記録する。
「……あ、レオスさんのランクがFランクに上がりました。ランクの表記を変えますね」
そう言って、受付嬢は再び水晶に冒険者カードをかざす。
一方、俺はランクが上がったことに対する喜びよりも、空腹の方が勝り、ただ「そうですか~」と適当に相槌を打つだけにとどまった。
「はい。ランクアップの手続きが終わりました。あと、こちら報酬金になります」
そう言って、受付嬢は冒険者カードと共に、小銀貨11枚と銅貨2枚を俺に手渡す。
よし! 飯代ゲットだ!
俺は感極まった様子で報酬金を受け取ると、ゴブリンの右耳を入れておいた革袋の中に放り込んだ。
そして、ダッシュで酒場へと向かうと、昨日と同様にカウンター席にシュバッと着席した。
「おじさん! 串焼き8本酒1杯するめ1皿」
そして、矢継ぎ早にカウンターにいる店主さんに注文を言った。
「お、おう。お前さんか。相当腹減ってるようだな。分かった。1200セルだ」
店主さんは俺の様子に若干戸惑いつつも、ちゃんと注文は聞いててくれたようで、お代を言ってくれる。
俺は革袋から小銀貨1枚、銅貨2枚を取り出すと、店主さんに手渡した。
「まいど。んじゃ、待っててくれ」
そう言うと、店主さんは手早く準備をする。
そして、僅か1分足らずで、俺の目の前に注文の品が並んだ。
や、やっと食べられる……!
俺はごくりと涎を飲み込むと、パクリパクリと串焼きを頬張る。
「ああ……うめぇ……」
俺は天を仰ぐと、串焼きを食べる喜びを噛み締めながら、更に更に食べ続ける。
「もぐもぐ……はぁ。やっと落ち着いてきた……」
あの飢餓感とも言うべき空腹感が無くなってきたことで、俺は心を落ち着かせると、深く息を吐く。
「どうしたんだ? もしかして、金が足りなくなって、昼飯食えなかったのか?」
「まあ、そんなところですね。思ったよりも金が足りなくて……ただ、今日は昨日の倍以上稼げたし、ランクもFに上がったので、このままいけば何とかなりそうです」
俺は後ろ髪を掻きながらそう言った。
「そうか。まあ、最初は仕方ねぇな。にしても、もう上がったのか。中々早いな。いやー才能がある奴は羨ましいぜ」
店主さんは豪快に笑いながらそう言う。
俺の場合は成長の指輪のお陰で、アホみたいな速度でレベルが上がっているのと、ゲーム知識とプレイングが関係しているので、才能と言うのは違う気がするが……まあ、訂正する必要はないか。
自分でいうのもあれだが、才能があるのは事実なわけだし。
俺は店主さんの言葉に苦笑いしながらも、楽しく食事を取り続けるのであった。
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