第十六話 そろそろ本格的にやるか

 次の日の朝。

 目を覚ました俺は、宿の1階で朝食を済ませると、早速冒険者ギルドへと向かう。


「お、空いてるな」


 冒険者ギルドの中は、結構空いていた。

 それもそのはず、今の時刻は壁掛け時計によると7時少し前。

 こんな時間から活動している冒険者は、あまり多くないのだ。

 俺は早速掲示板へ向かうと、何かいい依頼が無いかを見る。

 予想通り、昨日の夕方見た時よりは、圧倒的に受けられる依頼は多かった。

 だが……


「……うん。やっぱゴブリン討伐が1番稼げるわ」


 何せ、Gランクが受けられる依頼の大半は、命の危険が無い街のお手伝い系だった。

 故に、報酬がショボい。それで生活出来なくは無いが……うん。ショボい。

 だから、討伐系の依頼が1番いいのだ。

 特に考える必要も無く、魔物倒せばいいだけなのだから。

 常設故に、わざわざ受付に持って行かなくていいのもポイント高い。


「じゃ、行くか」


 そう言って、俺は踵を返すと、冒険者ギルドの外に出た。

 そして、そのままスリエを出ると、西の森へ向かって歩き出した。


 ◇ ◇ ◇


 森に入った俺は、早速《死霊召喚》でデスナイト5体、リッチ5体を召喚すると、《死霊強化》でステータスを強化してから、散開させ、ゴブリンを討伐させていく。

 いやーこれラクだ。

 これくらいレベル差が離れていれば、何も考えずにただ命令するだけで、勝手に倒してくれるんだから。


「よっと。これで50体目かな?」


 ゴブリンの右耳を切り取った俺は、革袋に入れながらそう言った。

 50体倒せば、一先ずは大丈夫だろう。

 あんまり沢山倒しすぎると目立ってしまうリスクが出てくるが……流石にゴブリン程度であれば、これくらいでも、凄いね~くらいで済む。

 事実、30体の時は全然驚かれなかった。


「さてと。じゃ、一旦ゴブリン討伐は終わりにして、奥へレベル上げに行こっと」


 金を稼ぎたい気持ちは大きいが、俺にはこの世界で生きていく上での目標があるんだ。

 全ステータスカンストを目指して、まずは早速死霊術師のレベルを100のするぞ!

 そうと決めた俺はアンデッドたちを全て戻すと、代わりに《死霊召喚》でスケルトンホースを呼び出す。

 当然この子も《死霊強化》で強化済みだ。


「さあ、行くか」


 そう言って、俺はスケルトンホースの背に飛び乗ると、森の奥に向かって走らせる。

 風を切る音が気持ちいい……!

 だがその反面、空気抵抗をモロに顔面にくらうせいで、目が全然開けられない……

 まあ、魔物が襲ってきたら、音と感覚で分かるけどね。

 何度でも言うが、俺はリバースガチ勢。それくらいは朝飯前なのだ。


「……抜けたか」


 しばらく進み、森の雰囲気が変わって来たところで、俺はスケルトンホースを止まらせると、辺りを見回した。

 この森はストーリーの進行度に応じて入れる深さが決まっているのだが、現実世界になったお陰でその制限は無くなったようだ。

 まあ、もし例の謎の霧が現れて先に進めなくなったとしても、木を使ったバグで無理やり押し通るつもりだったけど。

 そんなことを思いながら、俺は虚空に手をかざすと、今の俺が呼び出せる限界――デスナイト15体とリッチ14体を召喚し、更に強化する。


「さて、随分卑怯な戦い方だが、悪く思うなよ。流石にこんな序盤で、レベル上げに時間をかけてはいられないのだ」


 そう言うと、俺はスケルトンホースを歩かせながら、他29体のアンデッドを自身を護衛するような位置につかせる。

 こうすることで、俺が死ぬ確率は格段に減少するのだ。

 さて、後は魔物を探すだけだが……


「お、早速いたか」


 ニヤリと不敵な笑みを浮かべた俺の前方から現れたのは、6体のオーガだ。

 筋骨隆々で赤い人型の魔物で、頭に2本の角が付いている。

 鑑定してみると、レベルは45と出た。

 うん。丁度いいな。


「ガアアアァ!!!」


 すると、俺たちを敵とみなしたのか、オーガたちは棍棒を構えると、咆哮を上げる。

 一方、俺はそれに合わせて準備を始める。

 何せ、個々のレベルはアンデッドたちよりも、オーガの方が上。故に、ちゃんと戦略は練らないと苦戦してしまうのだ。


「デスナイトは全て前へ行き、オーガを攻撃しろ。その間に、リッチは《炎槍フレアランス》を曲射撃ちして、オーガを攻撃しろ」


 直後、デスナイトたちは一斉に動き出し、漆黒の大剣を構えながら、オーガへと突撃する。

 オーガも当然迎え撃つ。

 その攻防は――2倍以上の数をもってしても、ようやく互角だった。

 いや、むしろ微妙にオーガの方が優勢まである。

 だが、それなら全然問題ない。

 直後、俺の傍にいるリッチたちが一斉に《炎槍フレアランス》を放ち――斜め上方向から降り注ぐようにしてオーガたちを襲った。


「グガアアアァ!!!」


 デスナイトにヘイトが向いている時であったが故に、オーガたちはモロに炎の槍を受け、そこそこのダメージを負うと同時に怯む。

 だが、その間にもデスナイトはオーガを攻撃し、今度は的確にダメージを与える。


「グガアアアァ!!!」


 オーガたちは即座にデスナイトたちへ反撃をし――なんと1体仕留めるが、その直後に再び炎の槍がオーガたちを襲った。


「ガアアァ……」


 その攻撃は、今度こそオーガたちの体力をゼロにし、死体を焼き尽くすのであった。


『レベルが68になりました』


 昨日と今日でアホみたいに倒したゴブリンのお陰もあってか、俺のレベルは68になった。


「うん。いい感じだ」


 俺は満足げに頷くと、《死霊召喚》で消費したデスナイトを1体補充する。

 1度に沢山呼び出した方が魔力効率はいいのだが、現状魔力の使い道がこれくらいしかないからね。

 闇属性魔法という使い道も一応あるが……レベル2では、このレベルの魔物たちには全然有効打にならない。


「さてと。引き続き奥に行きつつ、レベルを上げるとするか」


 そう言うと、俺は魔物を倒しつつ、森のより奥へと向かってスケルトンホースを歩かせるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る