第十三話 制裁を下す!

「ひぃ……」


「なぁ……」


「は……」


 こいつらは突然背後から大剣を突き付けられたことで、恐怖に身をこわばらせる。

 俺は彼らの正面に立つ2体のデスナイトを戻すと、ゆっくりと彼らの近づき、口を開く。


「確か、適当な魔物に死体を喰わせておけば、死の真相に気付く奴はいない……だったか?」


 腕を組みながら言う俺の言葉の意図を理解したのか、3人は一気に顔を青ざめさせる。


「ま、待ってくれ! もう二度と手は出しません!」


「お願いします! 殺さないでください!」


「か、金なら出します! 出せるだけ出します!」


 3人は冷や汗を大量に流しながら、必死になって命乞いをする。

 一方、俺はこいつらをどうするか悩んでいた。

 殺しにきた連中を生かしておきたいとは思わないが――かと言って、殺したらどうなるか。

 少なくとも、そこら辺の法律について詳しく知るまでは、なるべく生かす方針でいった方が良いだろう。


「ま、今回ばかりは見逃してやるか」


 そう言って、俺はデスナイトを戻す。

 一方、死の恐怖から解放された3人は、脱力したのか、へなへなと地面に座り込んだ。


「ああ、でも次は流石にないからな。流石に来たら、死んだ方がマシだと思うぐらい痛めつけてから――殺す」


 俺は出来る限り威圧感が出るようにこいつらを見下ろすと、そう言った。

 喉元過ぎれば熱さを忘れるって言うから、ここは全力で釘を刺しておかないと。


「分かりました。絶対に逆らいません!」


「はい。絶対に逆らいません。逆らいません!」


「逆らいません。服従します。絶対服従です!」


 3人は壊れた人形のように頭を高速で上下に振りながら、必死の形相でそう言った。

 うん。この様子なら、流石に大丈夫かな……?

 まあ、次やろうものなら、冗談抜きに――殺すだろうけど。


「じゃ、先へ進むか。お前らは邪魔だし、とっとと失せろ。ああ、他の冒険者にも同様のことをするなよ。あと、俺の実力は誰にも言うな」


 そう言って、俺は念入りに釘を刺す。


「「「分かりましたー!」」」


 直後、3人組は脱兎のごとく逃げるようにして、スリエへと帰って行った。

 なんと言うか、小者だなぁ……


「……まあいいや。それよりも、さっさとゴブリン討伐しないと」


 あいつらのせいで脱線してしまったが、ここへはゴブリン討伐をする為に来たんだ。


「さてと……《死霊召喚》《死霊強化》」


 俺は取りあえずデスナイトを5体、リッチを5体召喚すると、《死霊強化》で全ステータス値を上昇させる。

《死霊強化》のレベルは5なので、上昇率は5パーセントといったところか。

 5パーセントを少ないと感じるか多いと感じるかは人それぞれだと思うが――俺は十分多いと思っている。

 なにせ、オンライン対戦では1パーセントだけ相手の身体能力が上がっただけで、一気にきつくなったことがあるのだ。

 そんな俺からしてみれば、5パーセントなんて決定的な差だ。


「さて、取りあえず、魔物が現れたら首を斬って倒してくれ」


 そう言って、俺はデスナイトを周囲に散開させ、リッチをその後方から、補佐するように指示する。

 アンデッドはこれ以上呼び出すことも出来るが、呼び出しすぎると、他の冒険者の迷惑になって、トラブルに巻き込まれるかもしれないからね。


「……お、早速か」


 前方右にいるデスナイトが戦闘を始めた。

 デスナイトは40レベル相当の魔物なので、平均レベル10程度のゴブリンに負ける道理は無い。

 案の定、ものの20秒足らずで、戦闘音が止んだ。


「さて……お、ちゃんと首を斬っている」


 そこには、胴と首が泣き別れとなって地面に転がる緑色の人型の魔物――ゴブリンの姿があった。

 数は……6体か。


「……じゃ、やるか」


 そう言って、俺は山刀を取り出すと、ゴブリンの右耳を斬り落としていく。

 ゴブリンの右耳は討伐証明部位というもので、これを受付で渡すことで、討伐したと認められるのだ。

 本当はこれもデスナイトに任せたかったのだが……デスナイトに限らず、アンデッドたちはそこまで繊細なことは出来ないからね。

 ここは仕方ないと思って割り切ることにしよう。

 そうして、ゴブリンの右耳を6つ回収した俺は、それらに付着した血を拭きとると、リュックサックから取り出した革袋の中に放り込んだ。


「これでよし。あと20体ほど倒したら、奥の方に行ってみよっと」


 ある程度倒したら、奥に行って、取りあえず死霊術師のレベルを100にしておきたい。

 そう思った俺は、引き続きアンデッドでゴブリンを見つけ、討伐するのであった。


 ◇ ◇ ◇


「……よし。一先ずこれくらいで良いかな?」


 30分程で、計30体のゴブリンを討伐した俺は、革袋の中に入ったゴブリンの右耳を、満足げに見る。

 予定よりもやや多めに倒したから、これで今晩路上暮らしになることは無いだろう。


「さて……ああ、だいぶ日が暮れて来たな」


 森の中はだいぶ暗くなっており、木々の隙間からは夕日が見える。


「んー出来れば今日、森の奥に行ってレベルを100にしたかったんだが……ま、仕方ないか。無理は禁物だし、今日はもう帰るとしよう」


 やりたかったことが出来なかったことを、若干不満げに思いつつも、無理して命を落としたらシャレにならないと自身に言い聞かせる。

 そして、召喚したアンデッドを戻すと、スリエに帰還するのであった。

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