第七話 心配させちゃった……

「……お、見えてきた!」


 再生の霊峰を出発した次の日の夕方。

 俺はようやくクゼ村に到着した。

 にしても、俺のステータスってどんな感じになったんだろ?

 詳細なところは確認してないから、確認してみよう。

 そう思った俺は、その場で立ち止まると、ステータスを開いた。


▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

【名前】レオス

【種族】人族

【職種】死霊術師

【レベル】58

【状態】健康

【身体能力】

・体力482/482

・魔力548/548

・筋力393

・防護454

・俊敏469

【魔法】

・闇属性レベル1

【パッシブスキル】

・恐怖耐性レベル5

・闇属性魔法耐性レベル3

・暗視レベル2

【アクティブスキル】

・死霊召喚レベル6

・鑑定レベル6

・死霊強化レベル4

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


「おお、だいぶ強くなってる」


 いいねいいね。

 流石は成長の指輪。あっという間にレベルが上がる。

 レベル上げは後半の方が、必要経験値が多い分時間がかかるが、それを考慮しても、この成長速度は予想以上だ。

 だが、この森で出てくる魔物ではそろそろ限界だな。

 この森に出る程度の奴らじゃ、もう弱すぎて効率が悪い。

 もっと強い魔物が出る場所……というよりかは、転職のことを考えて、幅広い強さの魔物が出る場所を一旦拠点にしたいな。

 となると、ここを出て暫くしたところにあるスリエって街がいいかもな。

 あの周辺にある森は奥に行くほど強い魔物が出てくるので、非常に効率よくレベル上げが出来るのだ。


「……よし。ああ、早く村に入らないと。多分皆心配してるよなぁ……」


 山菜を取りに行くと言って森に入った青年が、3日間も帰ってこないってなったら、誰だって心配する。

 俺はどうやって皆に言い訳しようかなぁと考えながら、再び歩き出した。


「つったく。まだ……あ! レオスが帰って来たぞ!」


 入り口付近で、心配そうにうろうろしていた男性が、俺を見るなり声を上げた。

 直後、近くの家から次々と人が出てくる。

 あーこりゃめちゃくちゃ心配されてたパターンだな。

 俺は内心気を重くしながらも、彼らのもとに駆け寄ると、口を開く。


「す、すみません! ちょっとトラブルがあって、遅くなりました」


 すると、村を出る時に俺を見送ってくれた、赤髪短髪の男性――ゼルスさんが口を開く。


「本当に心配したんだぞ。一体何があったんだ?」


 ゼルスさんは語気を強めながらも、心配するようにそう問いかける。


「はい。実は魔物に追われまして。無我夢中で走ってたら迷ってしまいまったんです。ですが、痕跡などを手掛かりにして、何とか帰ってこれた……という感じです」


「そうか。そりゃとんだ災難だったな。まあ、ともあれ無事で良かった。マジで心配したんだぞ~」


 そう言って、ゼルスさんは俺の肩をバシバシと叩いた。

 周りの人たちも、俺が無事であったことを知り、心から安堵してくれているようだ。

 うん。何か心苦しいな。

 嘘ついて、ここまで心配されると、ちょっと心にくる。


「と、取りあえず疲れたので、今日はもう帰って寝ます」


「おう。ゆっくり休めよ」


 そう言って、俺は若干逃げるようにして自宅に帰還すると、荷物を置き、ベッドに転がった。

 そして、3日間外で過ごしたことによる疲労と寝不足から、直ぐに意識を手放した。


 ◇ ◇ ◇


「ううん……」


 小鳥のさえずりと風の音。そして、窓から差し込む太陽の光で、俺は目を覚ました。

 ……ここまでぐっすりと寝たのは本当に久しぶりだ。

 毎日がゲーム三昧だった俺の毎日の睡眠時間はたったの4時間。

 朝起きて仕事をする時はいつももっと寝れば良かったと思うのだが、仕事を終え、ゲームを始めてしまうと、結局日付超えてまでやってしまうのだ。


「……もう今日中にこの村を出ようかなぁ……」


 上半身を起こした俺は、後ろ髪をぽりぽりと掻きながら、ぼやけた声でそう言う。

 いやー……だってこの村に居ても、ぶっちゃけやることが無い。

 スローライフを望むような人であれば、結構いい場所なのだろうが、生憎俺は冒険がしたい派だ。

 だったら、さっさと街に行くべきだろう。

 それに、そこに行けば今がどの時間軸なのかを知る手掛かりがある可能性が非常に高い。


「さて、そうと決まれば早速準備しよう」


 村の人たちにはなんて説明しようかなぁと思いながら、俺は出発の準備を始める。

 まず、昨日までの戦闘で、唯一の武器であった山刀がだいぶ傷んでしまった。

 俺はそれをレオスのやや朧げな記憶を頼りに手入れする。


「……こんなもんか」


 完璧……とまではいかないが、及第点と言えるまでは直った山刀を、やや満足気に見ると、俺は次の準備に移る。


「家には何かないかな~」


 もしかしたら、意外と役に立つ物があるかもしれないと若干期待しながら、俺は家中を漁りまくる。

 だが、期待に反して使えるものは無かった。

 いや、生活用品は割とあったから、ガラクタばっかりって訳じゃないのよ。

 ただ、今後暫くは定住するつもりはないんだよね。だから、生活用品は多分使わん。

 それに、インベントリって言う便利機能がこの世界には無い以上、念のためと言って持っていくことも出来ないのだ。


「ま、あれを使えば、昨日の移動速度と距離を考慮すると、スリエに到着するまで8時間と言ったところか」


 縮尺がちょっと……というかかなりゲームとは違ったことで、昨日は帰ってくるのに予想以上の時間がかかってしまったが、お陰でこの世界の距離感が何となく分かってきた。

 で、8時間なら、今から出れば夕方頃には到着すると思われる。

 なら、直ぐにでも出発して、街を――スリエを存分に探索するとしよう。


「金は冒険者で稼げるだろうし、物資はこれくらいでいいな」


 そう言って、俺は昨日も使ったリュックサックを背負うと、家を出た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る