第25話 帰路

海からあんな話をされたからか、また気まずい空気が流れてしまう。今度は誰も沈黙を破らなかった。

そりゃそうだ。告白の返事を延期したのだから気まずい空気が流れてしまうのも不思議ではない。

この状況を打破したいと思うがどうすればいいのかもわからない。

とりあえず静かにしておこう、そう思った。


駅へと歩いていく。

少しの間なのに1時間ぐらいのとても長い時間に感じられた。

空は雲で覆われていて、太陽は見えない。

駅までの一本道には生気が感じられない。


その後のことはぼ―っとしてしまってよく覚えていない。

いや忘れようとしたというのが正しいのかもしれない。

あんなどよんとした沈黙、覚えていたいことではないのは確か。忘れてしまった方が好都合だし。


いつの間にか家についていたということだけは覚えている。どのように帰ったのかも、どうやって海と別れたかも。おそらく電車に乗ったはずだ。海とも別れるときに手を振ったと思う。

思う。

思うしかいえない。

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