第22話 出掛

急いで海と出掛ける用意をする。

少しおめかししてみようかな。

昨日決めた服を着て、メイクをしてみる。

普段はしないけど今日はしよーっと。

いつもよりピンクにしてみよーっかな。

心が躍る。

目元にラメを塗ってー。

とってもわくわくしてくる。


時計を見る。

あ、そろそろ行かないと電車の時間に遅れちゃう!

カバンにスマホとリップを入れて、急いで出る。

この屋敷は広いから玄関まで遠いんだよね。急いで出ないとほんとに遅れちゃう!

急いで玄関まで駆ける。

全速力で走ってなんとか屋敷の門までたどり着いた。

でもここから駅まで行かないといけないんだよね。

この屋敷から駅まで大体5分ほどだから急いだら間に合う!

急がなくっちゃね。

速足で歩く。急ぎすぎちゃうとメイクが崩れちゃうから気をつけて。

改札が見えてきた。

電車に急いで飛び乗る。

飛び乗ったあとに車両の中の行き先を見る。

あれ?

わたし、中央行に乗るんじゃなかったけ?ここには北町行って書かれているんだけど。もしかしてわたし乗る電車間違えた?

どうしよどうしよ。間違えちゃったからもう海との約束の時間に間に合わなくなっちゃうよ。こういうことも考えてもう少し早めに屋敷を出たらよかった。

落ち込んでしまう。でもでもそういうわけにはいかないよね。

次の駅で降りないと。でもその前に海に連絡しないと。「電車乗り間違えちゃったから遅れる」って。

よし、海に連絡ができた。すぐに既読がついた。そして返信が来る。

「大丈夫だよ。今どこにいるかわかる?迎えに行こか?」

わたしのせいなのに海は優しく返信してくれる。

「わかると思う。でも心配だから山野麓駅まで来てもらっていい?また迷っちゃう気がする。」

「いいよ。」

こんなわたしなのに海は優しく返信してくれる。

海はなんて優しいんだ。

ほっこりしてしまう。

いやいやほっこりしている場合じゃないじゃん!

次の駅で降りないと。そうじゃないと迷っちゃう。


つぎはー川沿駅ー。川沿駅ー。


アナウンスが流れる!

降りないと。

急いで周りの人に「すみません」と言いながら車両から出る。

なんとか出れた。ほんとによかったよ。安堵する。

ここで安心している場合じゃない!山野麓駅まで戻る電車に乗らないとね。

乗れるかな。


電車の到着音が聞こえる。

電車に乗る。

今度こそは合っているはず。

行き先見る。合ってるー。よかった。


海に連絡する。

「今度こそはちゃんと合ってる電車乗れたよ!」

「よかったー。もう山野麓駅についてるから待ってるー。改札前にいるわ。」


やっぱり海は優しすぎる。

山野麓駅に着いた。

改札のほうを見る。海が手を振ってくれる。

海がいる。よかったー。海がいて。


海に駆け寄る。

「よかったーー。もうどうなるかと思ったよ。」

海にすがりつく。

「ほんとによかったよ。桃菜が無事で。一時はどうなるかと思っちゃったよ。」

海もこっちに駆け寄ってくる。

「それじゃあ、行こうか。」

海が手を差し出してくれる。


昔のことを思い出す。

海はこういう人間だったんだって。人への気遣いができて、優しさにあふれている。そんな人。


海の優しさで心がポッと温かくなった。

これってどういう気持ちなんだろう。

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