第15話 高鳴

翔也が庭でいすに座って紅茶を優雅に飲んでいる。

周りからクラシックの音楽が聞こえてきそう。

美しい顔にいいスタイル、そして華やかな庭。もう似合いすぎているよ。

見とれてしまう。見つめてしまっていると翔也と目があった。

「桃菜、どうしたの?ずっとこっち見ているけど。」

バレちゃった。どうしよう。なんて言おう。

「あー、ボーっとしちゃっていたよ。気にしないで。」

ふー。なんとか乗り切れたのかな。翔也のことを見ていたのはバレていないよね?バレてたなら一大事だよ。

翔也に手招きをされる。こっちに来てっていうことかな?

翔也のとなりに座る。

いつの間にか深山さんが側にいる。紅茶とお茶菓子を深山さんが差し出してくれる。紅茶からは桃やりんごのようなフルーティーな香りがしてくる。まだ残っていた眠気がどっかに吹き飛んでしまいそうだ。

わたしは雲の上にいるようなふわふわした気持ちになる。

翔也がこちらをじーっと見てくる。

「どうしたん?」

そう聞いてみる。

「今日はさーせん《すみません》。急に話しかけちゃって。ももなを驚かせちゃったみたいで。今度からは気をつけるから。

そう言ってくれた。翔也も気にしていたみたい。

「こっちこそごめんね。なんかよくわからなくなっちゃったみたいで。今度からは気をつけるね。」

なんとか言えた。

あとですみれさんに報告しよーっと。

「実は。」

翔也がどもる。

なんだろう。

わたしは首をかしげる。

「僕たちの見合いは父さんたちが勝手に決めたわけではないんだ。ほんとは僕から頼み込んだという部分もあって。僕たち幼いころ会ったことがあるんです。」

そう言われ、わたしは動揺する。

えっ!?どういうこと?わたしたち会ったことあるの?

いつ?

翔也は話を続ける。

「5歳ぐらいのころにパーティーがあったのを覚えているか?

そこで僕はももなに一目惚れしちゃったんだ。」

どーゆーこと?

理解に時間がかかる。

理解できたところで顔がポッと赤くなってしまった。

キャー、恥ずかしい。

翔也がこちらを見つめて、真剣な声で言ってきた。

「これからもよろしくお願いします。ももな。」

少しいたずらっぽい声で言ってきた。

そしてにこっと微笑んできた。

あれ?胸が、何かに打たれたような気がした。

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