第8話 亀裂

やったー!

4時間目が終わってお弁当の時間。わたしとあかりはいつもあかりの席で向かい合って食べる。今日は何だろうな。そう思いながらお弁当箱を探す。

あれ?いつもより大きいぞ。そう思いながらあかりを待つ。

あかりが席に戻ってきた。一緒にお弁当を開ける。開けて驚いた。

すごい豪華じゃん!

あかりにも見せてみる。

あかりが目を見開いた。

翔也さんはいつもこんなお弁当を食べているのか。

恐るべし如月グループ。

食べてみると思っていた通り美味しかった。もちろん如月グループ専属シェフが作ったのだから美味しいに決まっている。


お弁当を食べ終わった。


廊下を歩いてると翔也さんに声をかけられた。

「桃菜さん、桃菜さん、助けてください。箕輪さんたちがずっと周りにいて。話してくれないかな。どうか頼む。」

目のまで手を合わせられた。

だがわたしは心の中で何かがプチンと切れたような気がした。

「1回もこっちに来なかったのに、困ったら助けてくれって。意味わかんないよ。」

そうきつく言ってしまった。

言ってしまったと後悔したがもう遅い。翔也さんはガクッとした。そしてくるりと向きを変えて教室へと戻ってしまった。

どうしよう。ついついきついこと言っちゃった。これで嫌われちゃったりしないかな。そしたらお父さんたちに迷惑をかけちゃう。

そう考えていると不思議に思ったあかりが駆け寄ってきた。

「ももな、どうしたの?すごい深刻そうな顔してるけど。」

わたしは少し黙り込んでいたが、意を決してあかりにさっきのことを話してみた。

「実はね。」

そう言い、さっき起きたことを話してみた。

翔也さんが箕輪さんたちに話しかけられて困っているということ。そしてわたしに助けを求めてきたこと。わたしがそれを拒否したこと。感情的にならないように極力冷静に話したつもりだ。

それをあかりは静かに聞いてくれた。

「ももな、帰ったあとメイドさんに相談してみたらどう?わたしたちよりメイドさんのほうが翔也さんのことよく知っているでしょ。そしたらいろいろ教えてもらえるかも。」

そっか、すみれさんに頼ればいいんだ。お父さん、お母さんがいないから自分で頑張らなくちゃって思ってたけどたよればいいんだ。

「あかり、ありがとう。すみれさんに頼ってみるよ。」

そういうとあかりはにこっと笑い返してくれた。そして右手でOKサインを作ってくれた。


「あっ!昼休み終わっちゃうよ。早く教室に帰ろう。」

そう、あかりに言われ教室に戻った。


翔也さんのことを考えていたらいつの間にかぼーっとしちゃっていつの間にか6時間目が終わっていた。国語でよくわからなかったのに。


今日は最後の部活に行かないといけないんだよね。まだ部活のみんなにやめることは言ってないんだけど今日言わないといけないんだよね。部活やめたくないな。4月からずっと頑張ってきたのに。


そう思ったけどちゃんと言わなくちゃいけないよね。如月家の妻になるんだから。


そうこう思いながらもちゃんと決心した。

部室棟へと向かう。いつもは体操服でだが、今日は制服で。

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