第6話 納得

部室に来てみる。まだ先客はいないようだ。誰かが来ると困るので入口の看板を使用中にしておいた。こうしておけば誰かが入ってくる心配もないはず。時間があったので部室の片付けをしていると、ドアをノックする音が聞こえた。あかりだ!ドアを開けるとやはりあかりがいた。

「中入って!」

そう言い、あかりを中に通す。あかりは急いで部室の中に入ってきた。

そしてあかりは口を開いた。

「ももな、朝はどういうこと?高そうな車で通学してたじゃん。それもさわやかイケメンと一緒に。」

あかりはそうまくし立てた。気持ちが高ぶってしまったようだ。驚くのも無理もない。わたしの家の車はあんなに豪華ではない。それに生まれてこの方男の子との関わりも特になかった。

「実は…」

そういうとあかりはこくりと頷いた。

「わたし、如月家の許嫁みたい。」

あかりの目が大きくなる。

わたしは続ける。

「そのことを昨日急に言われて、如月家の屋敷に住むことになったんだ。屋敷から学校までは遠いから深山さんという執事さんに送ってもらうことになったの。そして、今日一緒に来ていたのは如月家の跡取り翔也さん。つまりわたしの結婚相手ね。これからはこの高校に通うらしい。卒業後には結婚だってさ。」

そういうとあかりはとても驚いていた。

「えっ!?ももなが如月家の許嫁?屋敷?執事さん?よく分からないよ。」

「あかりがそう思うのも仕方がないよ。これから車で登校することになるけどよろしくね。」

あかりは納得してなさそうな顔をしたがとりあえず頷いた。あかりなりに理解しようとしてくれているのだろう。

あかりがハッとした。

「もうそろそろHRの時間だよ。教室に戻ろ!」

ほんとだ!せっかく深山さんに送ってもらったのに遅れちゃう。

私たち2人は教室へと足早に向かった。


教室に入ると

多くの目がこちらに向いた。

みんなこっち見てるじゃん。周りからの視線がいたい。

クラスのボスである箕輪綺女みのわあやめがこちらにドスドスと歩いてきた。箕輪さんはイケメンには目がないのだ。それに恋愛体質らしく、話を聞くたびに好きな人が変わっている。すぐに惚れてすぐに冷めるということはわたしには理解しがたい。

「ももなちゃん、今日朝一緒にいたのって如月翔也くんじゃないの?なんであんたが翔也君と一緒にいるのよ。」

箕輪さんはいつもどこかわたしを見下している気がする。やっぱり翔也さんのことは知ってるんだね。どう説明しようか。悩んでいるとあかりが助けの手を差し伸べてくれた。

「ももなは家の事情で引っ越すことになって、それで家から学校が遠くなっちゃったんだって。」

ありがとう、あかり〜。

そこで箕輪さんがまた突っかかってきた。

「じゃあ、なんで翔也くんと一緒に登校しているのよ。」

やっぱり。そう思うよね。どうやって答えよう。またアワアワしてると、

「実は、ももなのお父さんと翔也さんのお父さんが友達なの。だから近くに住むことになって、一緒に送り迎えしてもらってるんだって。」

箕輪さんは納得してくれたかはわからない。だが、あかりが助け舟を出してくれたおかげで助かった。

「でも、翔也さんはこの高校に通ってないじゃない。」

箕輪さんがそう言ったところでチャイムがなった。よかった。これ以上どう説明したらいいのかわからないし。


そして先生が入ってきた。後ろに誰かを連れて。よくよく見ると翔也さんだった。箕輪さんは大きく目を開き、口が開いたままになっている。

そこで先生が話した。

「突然ですが、今日からクラスメイトが1人増えます。如月翔也くんです。」

翔也さんはぺこりとお辞儀をした。

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