第5話 登校
鳥のさえずりで目が覚めた。あれ?いつもの部屋と違う。あ!そういえば昨日深山さんが家に迎えに来て如月家の屋敷に来たのだった!
でも今日学校があるよね。どうしよう。遠いから送迎してもらえるのがありがたいんだけど、あんな高そうな車で送迎してもらうと周りから注目されちゃうよな。これまで極力目立たないように生活してきたが、こんなことがあると今までの目立たないようにする努力が台無しだ。周りから注がれるであろう視線に耐えられるような気がしない。そうすると
コンコンコン。部屋をノックする音がした。
「桃菜お嬢様。おはようございます。朝食の準備ができました。」
もうそんな時間か。ベッドから起き上がり、部屋から出る。昨日の夕食があんなに豪華だったのだから朝食はどのようなものなのだろうか。
食堂の扉を開ける。鼻に心地よい香りがふわりと感じられた。そして机を見るとトーストとサラダ、スクランブルエッグ、スープ、ヨーグルト、フルーツが並んでいる。
すごい豪華だ!
トーストをパクっとくわえる。中はかりっと外はふわーなんともおいしい。こんなにおいしいトースト食べたことがない。サラダも新鮮でシャキシャキ、スクランブルエッグもふわふわで卵の甘さが口に広がる。朝食を食べ終わった。わたしは今幸せで満ち溢れている。
時計を見る。もう行かないと!急いで高校に行く準備をする。
外に出ると、深山さんが車を用意し、翔也さんはすでに準備を終えていた。
「翔也さん、深山さん、遅くなって申し訳ございません。」
「桃菜ちゃん、気にしなくていいよ。俺が少し早く着いちゃっただけだから。さあ行こう。」
翔也さんはそう言ってわたしをエスコートしてくれた。
車に乗り込む。昨日通った道を逆戻りしていく。わたしの胸はどきどきと高鳴る。如月家の屋敷で暮らし始めて初めての登校だからだ。
そうこう思っているうちに高校に到着した。
校門の前で車のドアが開く。翔也さんが先に降りて、わたしをエスコートしてくれる。周りから好奇の目で見られている。視線が痛い。まあ黒塗りの車で登校していて校門の前で降りていたらそりゃ気になるよね。でも如月家の妻になるにはこんな視線にも耐えられるようにならなくちゃいけないのか。これが今後の課題だな。車から降りると昇降口のほうに手を振っている姿が見えた。あかりだ!うれしくなりは知って駆け寄る。
「桃菜、どうしたの?車で登校して。もしかして体調悪い?それとも怪我?」
心配そうにあかりが見つめてくる。
「大丈夫だよ。いろいろ話したいんだけどここじゃ話しづらいからいつものところでいい?」
そう言うとあかりは親指を立てた。
いつものところというのは部活棟のバレーボール部の部室。部室は基本自由に使えて学年は関係なく、早い者勝ちというルールになっている。お弁当を食べるときや恋バナとか秘密ごとをするときにも使う。
1度教室に行こうと思ったが、今の登校の様子を見られたから質問攻めにあうだろう。そうしたらあかりに話すことができない。だから重いリュックを背負いながら部室へと向かった。
涼しいさわやかな風がそよそよと吹いていた。
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