第4話 部屋

如月家の屋敷はとても大きかった。一面に草花が植えられていて、少し先には噴水も見える。あれはバラの葉が見える。初夏には色とりどりの花が見られるのだろうか。コスモスも咲いている。コスモスはわたしが1番好きな花だ。可憐かれんで、どこかに愛くるしさを感じる。この庭は四季折々の花が咲くのかな。そうボーッとしていると、「桃菜お嬢様、こちらへお越しください。今日からお嬢様のお手伝いをする黒見すみれさんです。」

深山さんはそう言った。お手伝いさん?お手伝いさん?えっ、どういうこと?そう焦っていると黒見さんはぺこりとお辞儀をした。

「桃菜お嬢様、黒見すみれです。よろしくお願いいたします。すみれとお呼びください。なにかお困りのことがあれば何なりと。」

そうすみれさんは言ってくれた。なんだか優しい人そう。よかった。

そうわたしはにこりと微笑むとすみれさんは微笑み返してくれ、手招きをした。

「桃菜お嬢様。こちらです。」

屋敷の中を案内してもらえるようだ。屋敷の中へ足を踏み入れる。屋敷の中は彫刻が施してあったり、芸術品が飾られていたりする。少し進むとすみれさんの足が止まった。

「こちらがお嬢様のお部屋です。お入りください。」

ドアを開けてみる。中には大きくてふかふかのベッド、きらびやかなカーテン、そしてわたしの好きな桃色であふれている。なんて素晴らしいの。私の顔から笑顔がほころびる。机を見てふと思った。学校はどうすればいいの?ここから結構遠いじゃない。気になったのですみれさんに聞いてみた。

「すみれさん、学校に行くにはどうすればいいですか。ここからは遠いですよね。」

すみれさんはにこりとこちらに顔を向けた。「ここから深山が送迎するので問題ありませんよ。翔也様も転校されることになります。ですからご心配しないでください。」

やった!あかりと離れ離れになると思っていたけど通い続けられるのだ。そしてすみれさんは続けた。

「ですが、部活動はやめていただくことになります。如月家の妻としてふさわしいように教育を受けてもらいます。」

えっ!部活をやめないといけないの?まだ入学したばかりだけどとても頑張って、先輩たちに認めてもらえるようになってきたのに。そう肩を下ろしていると、すみれさんに伝わってしまったようだ。

「桃菜お嬢様、残念だと思いますが少しの辛抱です。わたしと一緒に頑張ってみませんか。」

そうすみれさんに言われると断るわけにはいかない。


少しは頑張ってみようかな。


グゥゥー、お腹がなってしまった。顔が赤くなった。時計を見上げると針は18時半を指している。そろそろ夕食の時間だ。

「桃菜お嬢様、お食事ができたようです。食堂にお越しください。」

わたしはこくりとうなずいた。食堂へと足を進める。廊下には銅像が並んでいる。誰なのだろうか。食堂に着いた。すみれさんがドアを開けてくれる。中に入ると部屋の豪華絢爛ごうかけんらんさに圧巻された。わたしの部屋と同様キラキラ輝いているが、なんとも机がとても大きい。10人は座れるだろう。そんな机にわたしと翔也さん2人だけ。ほかの人は一緒に食べないのかな。すみれさんに聞いてみた。

「ほかの方は一緒に夕食を食べないのですか。」

そうするとすみれさんは

「旦那様と奥様は本日会食です。普段も一緒には食べられませんね。当面は桃菜お嬢様と翔也様の2人です。」

そうなの!?とても驚いた。今までは翔也さんは1人で食べていたのかな。


夕食が運ばれてきた。まずは前菜かららしい。こんな豪華なコース料理食べたことがないから戸惑ってしまう。

「桃菜お嬢様焦らないでください。本日は桃菜お嬢様を歓迎すべく如月家屈指の料理人が腕をふるってつくったものです。テーブルマナーは後日指導いたしますので本日はお味をお楽しみください。」

そうすみれさんが言ってくれたおかげで食事を楽しむことができた。


部屋に戻って今日1日を振り返った。24時間という短い時間だったはずなのにいろいろな出来事が起きたな。そう思っているうちにいつの間にか眠りについていた。

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