第2話 突然

その時は突然やってきた。

日常が変わるのは誰も教えてくれない。神様も残酷だと思う。


午後4時、秋へと近づく空は茜色に染まっている。

家へと足を進める。今日は毎週楽しみにしているドラマの放送日だ。これからの展開にわくわくが止まらない。


家の前に黒塗りの高そうな車が止まっている。

あれ?お客さんかな?お父さんやお母さんは誰か来るって言ってたっけ?

わたしの頭の中ははてなマークでいっぱいだ。

だれが来ているんだろう。どんな人かな。お父さんのお友達?

そこでハッとした。この車高そうだなとは思っていたが、家1軒分もするやつじゃん!テレビでやってた。こんなに高い車を買える人って。社長さんかな?


家の前に到着した。もしかしたら中に社長さんがいるかもと思い、胸がドキっとした。息を深く吸い込む。意識を集中してドアを開ける。


ドアを開けると、年をとっているおじいさんがいた。そのおじいさんは黒いスーツをピシッと着こなして、ひげをたくわえている。

そのおじいさんが口を開いた。

「おかえりなさいませ。ももなお嬢様。こちらへお越しください。」

えっ!?わたしがお嬢様?んなわけないでしょ。とりあえずこの人に言われたようにしてみようかな。


おじいさんに着いていく。リビングのドアを開けると、ダイニングテーブルにはお父さんとお母さんと知らない男の人が座っている。高校生だろうか。制服を着ていて、シュンとした姿勢で座っている。顔が整っていて見とれてしまう。きれいな目に長いまつげ、鼻筋がとおった鼻、すべすべな肌に、さらさらな髪。テレビの中から飛び出してきたよう。だが、わたしには興味がないようでそっぽを向いている。


「桃菜。こっちに来なさい。」

お父さんに手招きされる。男の人の正面に座るように言われた。

「この方は如月翔也きさらぎしょうやさん。如月きさらぎグループのところの息子さんよ。」

そうお母さんは言う。わたしはとても驚いた。だってあの如月グループだよ。あの、家具メーカーだったんだけど1代でホテルやショッピングセンターまでも経営して、国内に名を轟かせている如月グループ。知らない人はいないんじゃないかな?そして如月グループの社長、如月誠也きさらぎせいやさんはイケオジなのだ。それも雑誌で特集がくまれるほど。息子さんもかっこいいと噂には聞いていたけどこんなにもかっこいいのか。


「なぜ如月さんがこの家にいるの?」

わたしはお父さんに聞く。

「実は翔也さんは桃菜の許嫁いいなずけなんだ。高校生になって少し学校に慣れてきたと思うから顔をあわせてみたらどうかと思ったんだ。2人には高校を卒業したら結婚してもらう。」

えっ!えっ、どういうこと?聞いてないんだけど。なんで?

「如月グループの御曹司がなぜわたしのような普通の家の娘の許嫁なの?」

「そういえば桃菜には言ったことがなかったな。如月グループの社長誠也と俺は幼馴染なんだ。それも大学まで一緒で。」

なにそれ?ほんと。もっと早く教えてほしかったんだけど・

「それでお互いの娘息子を結婚させようっていう話になって。桃菜も翔也さんと結婚するといいことがあるぞ。生活は必ず保障され、好きに暮らすことができる。好きな服も着られるし、毎日好きなものが食べられる。そしてお手伝いさんがいるから家事もしなくていい。どうだ?桃菜、いい話だろ。」

いやいやいや。今まであったことない人と結婚なんて。それに勝手に結婚を決めちゃうなんて。お父さんの勝手じゃん。でもお金持ちの生活ができるなんて悪くはないかも。

「桃菜どうする?」

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